第37話:引き籠り
「ケーン、あのオリーブの木を実らせられるか?」
「できますよ、どれくらい実らせます?」
「実らせられるだけ頼む、前の街で油が売れ過ぎた」
ジョセフ代表に頼まれたので、移動の途中に生えていたオリーブの木に魔術をかけて、枝が折れそうなくらいたくさん実らせた。
「うわ、やっぱりケーンは凄いな、物凄く大粒の実だぞ」
「こんな大きな実は見た事がないぞ」
「数も多いぞ、これからしばらくオリーブを仕入れなくても大丈夫だ」
「美味い、苦みが少ないぞ、生で食べてもあの嫌な苦みがほとんどないぞ」
「本当だ、美味い、これなら生でも食べられるぞ!」
「すまんな、ケーン、代金はちゃんと払うから、ウィロウから受け取ってくれ」
「ありがとうございます、代表。
あのオリーブ、もう1度実らせますか?
「いいのか、魔力は大丈夫なのか?」
「これくらいなら、100回でも200回でも大丈夫です」
「とんでもない神与のスキルだな、羨ましくて涙が出るよ」
「ありがとうございます、ですがその分狙われるのですよね?」
「そうだな、良い事ばかりではないな、もう1度実らせてくれればいい。
ケーンに頼り過ぎると、一族が堕落してしまうからな」
そう言い終わると、ジョセフ代表はオリーブを集める行商人たちの所に行った。
まだオリーブの実を集めている途中だったので、待つよりは新しいオリーブの木を成長させた方が早いので、少し離れた所で成長させて実らせた。
待つ時間があるのならウィロウの側にいたかった。
ウィロウを守るのが僕の役目だから、常に目に見える所にはいるけれど、少しでも近くにいたかった。
流石にトイレの時は少し離れるけど、叫べば声の届く所にいる。
僕だけではなく、最初に村に来た時にいた指導役もいる。
彼と親しそうにするウィロウを見るとイライラしてしまう。
僕と指導役以外にもウィロウを守るモノはいる。
常にウィロウと一緒にいる牛が最後の護りらしい。
大きくて鋭い角は、ウィロウを狙いモノを刺し貫いて放り投げるそうだ。
「うっげえええええ」
まだ血や死を思うと吐いてしまう。
できるだけ早く吐かないようにならないと、ウィロウを守れない。
少なくとも気を失わないようにならないといけない!
牛はその大きな体でウィロウの盾にもなるそうだ。
だったら僕も牛に負けないような大きな盾になる。
何かあれば直ぐに蔦壁を造る、僕の神与スキルがバレてもかまわない!
「何か来るぞ、魔獣だ、大きな魔獣が来るぞ!」
行商隊の誰かが大声で叫んでいる。
「ウィロウ、声のする反対側に行こう」
僕はウィロウに逃げるように言った。
「まだよ、誰かが魔獣を操っているかもしれない。
反対側に逃げたら待ち伏せがいるかもしれないから、今は動けないわ」
待ち伏せ、お父さんたちが狩りをする時にやっていた。
「分かった、僕から離れないで!」
ウィロウが僕にぴったりと身体をつけてきた。
心臓がドキドキして苦しい、このままずっとこうしていられたら良いのに!
「フェロウシャス・ボアだ、近づいてくるのはフェロウシャス・ボア!」
「ケーン行くわよ、フェロウシャス・ボアを捕らえるの!」
ウィロウが満面の笑みを浮かべて走り出した。
フェロウシャス・ボアはウィロウの大好物で、食事に出たら機嫌が良くなるほどだから、僕なら簡単に狩れると言ってしまった。
以前のように、木属性魔術の1つ風を使う「サファケイト!」で窒息させられたら簡単なのだけれど……
「うっげえええええ」
今の僕は殺す事を考えただけで吐いてしまう。
だけど、木属性魔術でフェロウシャス・ボアを動けなくする事はできる。
動けなくさえできれば、後は行商隊の人たちが何とかしてくれる。
「どいて、どいて、どいて、フェロウシャス・ボアはケーンが捕らえてくれるわ」
「本当なのか、魔獣でも殺せないのだろう?」
フェロウシャス・ボアに対処しようと、ジョセフ代表が1番危険な場所にいた。
こういう所が行商人たちに信頼されるのだな。
僕も同じようにできたらウィロウに信頼してもらえるのだが、今の僕では……
「殺せないですが、蔦壁で捕らえる事はできます。
ただ、その後は別の蔦壁の中にいますから、ウィロウを守れません」
「……そうか、隊商の中にいる間は大丈夫だからかまわない。
もう来るぞ、本当に捕らえられるのだな?」
「任せてください、プロテクト・ウィズ・ア・ウォール・オブ・アイビー」
フェロウシャス・ボアはとても大きいから、近づいて来たら森の中にいても分かるし、目の前に現れたら嫌でも分かる。
それに、フェロウシャス・ボアは、1度全力で走り出したら止まれないし曲がれないので、前もって蔦壁を成長させておくことができる。
それで近づいて来たフェロウシャス・ボアを包み込むのだ!
脚1本にわずかな蔦を絡ませても引き千切られるが、体全体を覆ってしまえば、突進したくても助走する距離がない。
蔦壁で包み込んで中に取り込んでしまえば、もう身動きができなくなる。
ウィロウのような大切な人を入れる蔦壁なら快適な広さにするが、ウィロウを傷つけような奴は、蔦壁を直接身体に巻き付けてしまう。
「もう身動きできないですから、後は任せます。
僕は何も見えない聞こえない蔦壁の中で休みますから、何かあったら叩いて知らせてください」
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