第28話:夢

 僕はおかしくなってしまった。

 毎日ウィロウの事ばかり考えてしまう。

 何所を旅しているのか、病気やケガをしていないか心配になる。


 男の子が女の子を好きになるのは分かる。


 生まれてからずっと病院のベッドだった前世では全く分からなかったけど、この世界で家族と一緒に暮らし、村の中で色々な事を見聞きして、恋や愛と言うモノがあるのだと分かった。


 いや、分かったと思っていただけで、全然分かっていなかった。

 こんなに胸が苦しくなって辛いモノだとは思っていなかった。


 前世の、痛くて苦しくて怖かった胸の痛みとは違う。

 この世界で初めて経験した、痛くて苦しいけれど幸せな胸の痛みとも全然違う。

 

 ウィロウの事を考えて痛くなり、会いたくなって痛くなり、心配になって痛くなる、どうしようもなく切ない痛みだ。


 ウィロウの事を考えないように色々やった。

 お父さんとお母さんのお手伝いをしたし、魔術にも集中した。


 最近では大鷲くらい大きくなった鶏たちにも魔術をかけた。

 空を飛ぶ鶏たちを追って思いっきり走った。


 走ると言えば馬たちとだ、1番大好きな馬たちと駆け回る事に集中した。

 心臓が痛く苦しく心地良くなるまで駆け回ったのに、ウィロウの事を考えるとまた嫌な痛みに変わってしまった。


 村の人たちに見られない内山にまで行って、身体強化の魔術を使って思いっきり駆け回ってみたが、それでもウィロウの事を考えると直ぐに嫌な痛みになる。


「お父さん、お母さん、行商人のウィロウの事を考えると胸が痛くなるんだ。

 色々試したんだけど、どうしても痛みが治まらないんだ。

 どうしたらこの嫌な痛みを無くせるの?

 もしかしたら、心臓の病気になってしまったのかな?!」


 思い切ってお父さんとお母さんに聞いてみた。

 物凄く恥ずかしかったけど、とても怖かったので聞いてみた。

 恋や愛だと思うけれど、もし違ったら大変だ。


 ジョイ神様とイワナガヒメ神様に愛されているから、前世のように心臓が悪くなったのではないと思うが、どうしても不安になってしまったのだ。


 お父さんとお母さんは顔を見合わせて……笑い出した!


「ケーン、それはね、恋なのよ、その年で恋なんて、ケーンはおませさんね」


「ワッハハハハ、そうでもないぞ。

 俺も8歳くらいで初めて女の子を好きになった。

 ケーンは俺と同じでモテる男になるぞ」


「あら、貴男は女の子を好きになっただけで、好かれたわけじゃないでしょ?

 私は8歳で何人もの男の子に好かれたわよ!」


「ワッハハハハ、両親ともに早熟ならどうしようもない、諦めろ」


「この胸の痛みは本当に恋だからだよね?

 心臓が悪くなって痛いんじゃないよね?!」


「……そうだな、胸の痛みを初恋だと決めつけてはいけないな」


「そうね、何かあってからでは遅いわね、今直ぐ教会に行きましょう」


「俺がケーンを教会に連れて行く、オリビアはエヴィーたちを見ていてくれ」


「分かったわ、ケーンの事は頼んだわよ」


 僕はお父さんに連れらえて教会に行った。

 とても恥ずかしかったが、心臓病の不安が恥ずかしさをはるかに上回っていた。


 フィンリー神官に全て正直に話した。

 ウィロウの事が頭から離れない事も、心臓病の不安も全部話した。


 フィンリー神官は恋だと決めつけなかった。

 真剣に話を聞いてくれて、胸に耳を当てて音を聞いてくれた。

 胸に手を当てて何かしていたが、機会や聴診器がなくても分かるのだろうか?


 フィンリー神官は自分だけでなく奥さんにまで調べさせてくれた。

 奥さんもフィンリー神官と同じように真剣に調べてくれた。

 その上に2人で真剣に話し合ってくれた。


 あまりの事に、調べてもらう前より不安になってしまった。

 後ろにいるお父さんを振り返ると、凄く心配そうな表情をしていた。


「ゴッド・テル・ミイ・アバウト・ディス・マンス・イルネス」


 フィンリー神官が、神様に僕の病を聞いてくれた。

 直ぐに病名を教えてくれると思ったのに、真剣な表情で奥さんと相談している!


「ゴッド・テル・ミイ・アバウト・ディス・マンス・イルネス」


 奥さんまで神様に僕の病名を聞いてくれた。

 またフィンリー神官と相談している!

 嘘だろ、心臓病ではないと思って聞いているのに、本当に心臓病なのか?!


「ケーン、君は村の宝だ、だから慎重に慎重を期して調べた。

 妻とも一緒に2度も神様に何の病なのか聞いた。

 答えは同じだった、心臓に悪い所はない、恋の病だ」


 最初からそうだと思っていたけれど、どうしても不安で心配だった。

 頭ではありえないと思っていても、恐怖で神様を信じられなくなる。

 

「ケーン、大丈夫か?!」


 いつの間にかお父さんが僕の正面にいる。

 膝をついて僕を抱きしめてくれている。

 はっ、はっ、はっ、はっ、知らないうちにお尻をついて座り込んでいた。


「ごめん、お父さん、病気でもないのに大げさに言って」


「なにを言っている、急に不安になって泣くのが子供だ。

 父さんも小さい頃は怖い夢を見てよく泣いたものだ。

 ケーンはあまりに泣かないので、心配していたくらいなんだぞ。

 今日はケーンが父さんと同じだと分かって安心した。

 フィンリー神官、奥さん、急に悪かったな」


「なあに、私たちもケーンが普通の子供だと分かって安心した。

 今日に男同士、一緒に寝てやったらどうだ?」


「ああ、そうさせてもらう。

 悪いが今日の礼は明日させてもらう」

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