Episode01-11 ステータスとクラスとスキル
満を持して「ステータス」アイコンをタップ。
操作感は軽い。サクッとアプリのページが切り替わり、表示されたのは――
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八神 迅 Lv7
筋力 22(+10)
体力 23(+10)
敏捷 21(+10)
知力 20(+10)
霊力 23
神威 01
装備:Tシャツ、ジーパン
身体障壁16(-42)
法力 0(-42)
スキル:未知の加護(封印中)
*
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「……まじ?」
予想外の数字が表示されて、一瞬硬直してしまった。
というのも、スクにゃんの「チュウとリアル」によると、一般成人男性(Lv1)のステータスのうち「腕力」「体力」「敏捷」「知力」の中央値は10だということだから。
対して、表示された俺のステータスはそれらが20を越していた。
(成人2人分の体力か……そりゃ、元気な訳だ)
普段なら爆睡中の時間にもかかわらず、こうやって旺盛な好奇心で活動していることに納得の状態だ。
ただこの数値、括弧の中の+10という数字を補正として加えたものらしい。それで補正というのは、下の方にあるスキルの欄の「未知の加護(封印中)」と関係がある模様。メッセージ欄(かな?)には「封印した代わりに仮の補正値を割り振った」というような意味の事が書かれている。
「未知の加護……しかも封印中……」
加護といえば神様が与えてくれる恩恵の事だろう。それなりに「信仰心」が必要なはずだ。これまで神社仏閣に近寄らない人生を送っていた俺に対して「そんな恩恵をくれる神様なんているのか?」と思うが……まぁいないだろう。
ちなみに「恩恵をくれる神様なんていない」というのは、単なる喩えではなくステータス上もきっちりと現れている。それが、異様に低い「神威」の数字だ。この「神威」は(スクにゃんの「チュウとリアル」によると)「神様からの寵愛」という意味合いの数値になる。神様に愛されていたり、気に掛けられていると、この数字は高くなるそうだ。
残念ながら、俺が神様と疎遠なことはステータスでも明らか。しかも
実は、
(たぶん、爺ちゃんがやってくれた事だろうな)
というもの。
昨夜の件で蘇った
ただ、肝心の「なんやかんや」をやっている時、俺は高熱で寝込んでいた。なので詳細はそもそも記憶すらない。
(爺ちゃんか……しばらく会ってないな……)
祖父母とは疎遠になりすぎてしまい、なんだか顔を出しづらい。なので「未知」の詳細を聴くことは出来ない。或いは失踪したクソ親父を探し出せば何かわかるかもしれない。又は母さんに訊けば……
「いや、母さんにはアイツ関連の話は出来ないな」
結局、「未知の加護」は未知のまま。ただ、「封印」する引き換えにステータスを補正してくれるようなのでありがたく補正を頂戴しておくことにする。
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まったくもって「軽いなぁ」と思うが、俺は「未知の加護」への疑問を一旦取り止めて次へと進む。
次とは即ち「スキル」の項目だ。
ちょっとワクワクする。
そんなワクワク感でタップしたスキルの項目はというと――
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八神 迅 Lv7
能力ポイント:70
取得可能クラス
・尖兵 20pt・従者 20pt
・盗賊 20pt・狩人 20pt
・魔術師見習い30pt・聖職者見習い30pt
・錬金術師見習い30pt
・小者 30pt ・小坊主30pt
・下忍 30pt
・陰陽学生 40pt
・修験者見習い40pt
・神職出仕 40pt
・退魔師見習い 50pt
*スクにゃんに訊いてみよう! →こちら
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まずクラスを選択する画面になった。画面上部にタブがあり「クラス」と「スキル」を切り替えられる構成のようだ。
各クラスを長押しすると説明文がポップする仕様(「チュウとリアル」で仕入れた知識)なので、それを確認してみると、
「尖兵は物理攻撃特化で上位クラスは戦士と狂戦士、従者は防御が得意な前衛で上位クラスは騎士、狩人は弓の扱いに補正が掛かって遠距離特化ねぇ。それで盗賊は俊敏さが高く上位クラスは義賊か兇賊……兇賊ってどうよ」
20ptのグループはそんな感じ。実はこの
そして次の30ptのグループはというと、
「魔術師は……そのまんまゲームの魔術師だな、上位クラスは魔導師と精霊術師か。それで聖職者見習いは後方支援……回復スキルが使えるのはイイな……でも上位は司祭ってベタだな。それで錬金術師は……ドロップアイテムからポーションを調合できるのか」
30ptのグループはそんな感じだ。「攻撃魔法」とか「治癒魔法」「補助魔法」というワードが出て来るから、これは思わず興味をそそられる。後は錬金術師のポーションだが、どうやら宝珠ショップで売却できる模様。これはちょっと興味深い。
ただ、ここまでのクラスを見る限り、どうも中世・西洋風のよくあるRPGをオマージュしたモノに見えて仕方ない。なんというか
しかし、同じ30ptグループながら、次の欄からガラリと毛色が変わった。
「いきなり和風になったな」
ワクワクのボルテージが上がった気がする。どうやら俺のツボはコッチ方面にあったようだ(?)
「小者……ああ武士の見習いか、なるほど。小坊主は僧侶の見習いなのね――」
そんな感じで説明文を読んでいく。そして程無く――
「う~ん……選べない」
情けない話だが、何を選んでいいのやらサッパリ分からなくなってしまった。
一応、自分のステータスを見るに、妙に霊力が高く、その一方で神威が異様に低い。それ以外は平均的。いや、補正の分だけステータスは優秀なのだろう。だから、
「小者から武士ルートか、下忍から忍者の物理ルートかな?」
とは思う。ちなみに小坊主(僧侶・僧兵の下級職)や
唯一「退魔師見習い」は説明を読む限り「霊力」重視の万能職のように見えて「お!」と思ったが……習得に必要な能力ポイントが高い。後は、冷静に考えると「万能タイプの下級職」は地雷のような気もする。
「どうしようか……」
選択に行き詰った俺が見詰めるのは
――*スクにゃんに訊いてみよう! →こちら――
という部分。おそらくQ&Aにジャンプするのだろう。ということで、リンクをタップする。
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『新人殿、こんにちはなのだ!』
――*スクにゃんに訊いてみよう! →こちら――
をタップすると、直ぐに画面上にダイアログボックスが現れた。ログボックスの中にはデフォルメされたネズミ(スクにゃん)のアイコン。そのスクにゃんの口から吹き出しが出て、その中にメッセージがある。
『新人殿の名前は八神迅、なのだ?』
まさか対話形式のQ&Aとは思わなかったので、ちょっとモタモタする俺。あと、返事や質問を書こうにもキーパッドが出てこない。
『音声入力で大丈夫なのだ! ほれ、何か喋るのだ』
「あ、音声入力なのか」
『そうなのだ』
「えっと、八神迅です」
『ふむふむ、それで迅殿は何が訊きたいのだ?』
「えっと……クラス? についてです」
『では、自分に向いたクラスを知りたい、ということなのだ?』
「はい……そうです」
『ステータスをチェックしてもいいのだ?』
「あ、はい。大丈夫です。お願いします」
『どれどれ……なのだ……』
この時、俺は特に意識していなかったが、後から思い返すと珍妙な光景だったと思う。スマホに喋り掛ける俺(まぁ独り言は普段通りだけど)と、それに答える「スクにゃん」だが、妙に自然な受け答えをしてくる。場合によっては質問の意味を先回りして先を促すような言動もあった。よっぽど高度な会話AIを積んでいるのだろう。
今更驚かないが、やっぱり不思議なアプリだと思う。
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