2-5 凛々奈のお仕事 "ミッションコンプリート"
事務所の中いた十数人の男達は紙袋、ではなく凛々奈に挑みかかる者と逃走する者に別れたが、凛々奈はそれらを全員死なない程度に痛めつけ意識を奪っていった。
そして五分と掛からず部屋を制圧した。
「こんなもんかしらね」
パンパンと手で体の埃をはらいながら言う。そして男達のポケットを漁りスマートフォンを取り出した。
依頼人の写真データを消去する為だったが殆どのスマートフォンにロックが掛かっており操作出来なかった。
「アウトロー気取ってる奴らも画面ロックってするものなのね」
そんなもんかと思いながら凛々奈は。
「えい!えい!」
バキッ バキッ
板チョコでも割るように1台1台スマートフォンをへし折った。
「さて、後はお山の大将だけね」
そして部屋の奥の扉を開けて階段を上がっていく。これだけ騒ぎを起こしても降りてこないと言う事は何かしらの待ち伏せか罠があるに違いないと警戒しつつ二階のドアを開けた。
しかしそこには部屋の中央のソファでいびきをかいて寝ている太った男が居るだけだった。
「ま〜じ?」
すっかり気が抜けてしまったがあとはこの男だけだと凛々奈はソファに近付く。顔を覗くと男はこれ以上ない程幸せそうな寝顔で寝ていた。
「いい夢見てるのか知らないけど、これ叩き起こしたらなんか私が悪い奴みたいじゃないの」
そう思うとなんだかイラッとしたので凛々奈は寝ている男の胸倉を掴み100kgを超えているであろう巨体を片手投げ飛ばした。
「がはぁ」
男は壁に叩きつけられ目が覚める。状況が分からずキョロキョロと周りを見渡している。
「いい夢見てたところごめんなさいね、あんたがここの大将で間違いないかしら?」
投げ飛ばした男に近付きながら尋ねる。
「なんだぁ! テメェは! ふざけた格好しやがって! 今日はハロウィンじゃねえぞ!」
「それもうさっきやったわよ」
そして凛々奈は男を回し蹴りで吹き飛ばす。
うぎゃあと男は部屋の奥へと転がった。
「なんなんだテメェはよぉ!! 他の奴らは何してやがる!」
「もう先におねんねしてるわ、ん? もっと先におねんねしてたのはアンタだったけど、ま、どっちでもいいわ」
横にあった机に手を付いて立ち上がろうとしている男に続ける。
「あんた達が追ってる女の子、別にあんた達の取引を見たわけでも写真を撮った訳でもないからさ、手を引いてくれる?」
「バッカ野郎!そんなんではいそうですかって済ませられる訳ねえだろが!!きっちり大人の怖さってやt」
ガィィン!
男の顔の横に何か突き刺さる。それは凛々奈が投げたナイフだった。下の奴らが落とした物を一本だけ持ってきていた。
「それももうやったって」
冷たい眼光で袋の穴から男を睨み付ける。ナイフを投げる動きが全く見えなかった男は体に鳥肌が立ち、目の前の存在への恐怖で動けなくなっていた。
「わ、分かった もうあのガキからは手を引く!もう勘弁してくれ」
両手を挙げて涙目になり答える。
「あら、下の奴らより聞き分けいいじゃない、あとあの子の写真、全部消去しなさいね」
「分かりましたぁ!」
ババッと男はポケットから素早くスマートフォンを出し、こちらに画面を向けながら操作して画像を消去した。
「いい子ね、物分りのいい子は好きよ」
凛々奈は袋の下でニコッと笑って男に近付いて行く。
「という訳でミッションコンプリートです。依頼料その他諸々合わせて百二十万円お支払願います!」
「えっ? は? ウチが払うの?」
男はぽかーんとして言った。
「当たり前でしょうが!! アンタらがカタギの人に迷惑かけなかったらこんな事にはなってないの!! ほら! そこの! 金庫でしょさっさっと開ける!!」
ドガァン! バリィン!
凛々奈は横にあったソファを蹴り飛ばす。ソファは窓ガラスをぶち破って外へ飛んでいった。
「はっはいぃ!」
男は部屋の角の金庫に飛びつき急いで解錠して札束を明け渡した。
「はーいまいどありー!」
凛々奈はもう一枚ポケットの中に持ってきていた紙袋に札束を入れて部屋の出口へ向かう。
「もう合うことはないといーねー!おじさん!」
上機嫌に歩いてく背中を見る男は音を出さない様に目の前の引き出しを開けた。そして中にあった拳銃を紙袋に向ける。
「馬鹿にしやがって・・・」
相手に聞こえない様小さく呟き引き金を引く指に力をかけた。
「それ、撃ったら殺し合いだからね」
出口を向いたままの紙袋が立ち止まり、今までと違う感情のない声が響いた。
「指一本で簡単に命を奪える素敵な道具よね」
「その人差し指には狙う相手と自分の命が掛かってるって理解して
「・・・・ッツ」
凛々奈の放つプレッシャーなのか目の前の敵に引き金を引く勇気が無かったのか、男は腕をおろした。
「賢い選択ね」
そのまま凛々奈はドアに手を掛けるが何かを思い出した様に振り返り男に声をかけた。
「あっそうだそうだ、もしここにユウキって奴いたらさ、もし足洗いたいって言ってきたらそのまま辞めさせてあげて!」
さっきの冷たい声から元の元気な声に戻っていた。
「これはただの個人的なお願いだからさ一応でいいから覚えといて〜」
「あ?ユウキ?なんで?」
またもや困惑している男を尻目に凛々奈はドアを開けて部屋から出ていく。
「じゃあね〜!」
バタン!と扉の閉まる音か鳴った
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