1-4 リベンジ準備

 血まみれで倒れる少女とその前に一人の女性。


「酷くやられたね、生きてるか?」


 タバコの煙を吐きながら細身の女が言う。

 長い髪をポニーテールに纏め、白いシャツに黒いスラックス、高い身長もあってとてもスタイリッシュに見える。この人が私の恩人でもあり色んな事のセンセ。


「せ・・んせ・・・、残党・・しかも鎧殻持ちなんて・・聞いてないんですけど・・」


 全身の痛みの中、なんとか口を開いた。


「いや、すまなかった、あいつらは恐らくあの施設の責任者、蛇原と雇われの護衛、"豪腕のグレゴリオ"今日この国に戻ってきたらしい」


「へへっ・・ぐろ・・ごりら??アイツ、外国人なの?」


「知らん、国籍は不明だ、軽口を叩ける位なら大したことなさそうだな」


「まあ・・普通の人なら多分・・・半分ミンチだったんじゃないかな、私でも左腕は暫く使えなさそう・・。てか"アレ"早くくれないと死ぬかも」


「ああ、キメたら直ぐ動けるか?」


センセは私の口に棒付きの透明のキャンディを突っ込んだ。私専用の元気の源、ドーピング。


「うん、左腕はまだ使えないけど」


そう言って立ち上がる、全身血だらけだがキャンディのおかげでもう左腕以外は傷が塞がり始めている。


私は昔の実験の影響で普通の人より頑丈な体になっていた。そのお陰で只の女の子の私でもセンセのお仕事で一緒に戦えるし悪い奴らを殺せる。更に特定の成分と薬物を口にすると暫くの間、身体能力が著しく向上する。


 このキャンディは私専用にセンセが用意してくれたパワーアップアイテムなのだ。違法なお薬とかも結構入っているらしいけど。


「こっちの施設は壊滅させたが、まさかあの子1人の為に鎧殻持ちまで連れてくるなんてな、あの子は一体・・」


「でもみーちゃん、お風呂で全身見たし、暫く一緒にいたけど変わった所なかったよ?」


「ふむ、まあそんなことより」


「だね、さっさと救出作戦開始しよう! 可愛い女の子にミサイルみたいなパンチぶち込んだあのゴリラと、みーちゃん物扱いした糞モヤシ野郎をぶち殺せ!」


「今回の件は私も落ち度がある、好きなだけ装備も支給する、奴らの相手も引き受けてもいいが」


「ん、大丈夫! 丸腰じゃなかったらあんな奴らちょちょいのちょいよ! それに!私直々にぶっ殺さないと気がすまないよ!」


「分かった、だがサポートには入ろう、雑魚がいれば引き受ける」


「OK! あれ?でもみーちゃんの居場所分かるの?」


「お前があの子に渡した服に発振機が取り付けてある、流石に鎧殻の電波妨害も戦闘時に起動していないと機能しないようだな、ここから近い海沿いの倉庫地帯に向かっている」


「抜け目ないね、ん? なんで電波妨害の事知ってるの?」


「30分ほど前にその発振機の反応が消えたからな

直ぐに私はここに向かって、ハルに情報収集と追跡を任せた」


ハルさんはセンセの相棒みたいな人でお仕事でいろんな事をサポートしてくれてる、私もとってもお世話になってる頼れるお姉さん。早くみーちゃんにも紹介してあげなくっちゃね。


「さっすがセンセ!」


「鎧殻の一撃貰って30分で目が覚めるお前の方が流石だよ、装備はフルセット車にある、行くぞ」


「了解!」


もうキャンディも舐め終わる、左腕以外はもう出血も痛みもない。左腕は・・・まあ必要ないだろう。

 普段のお仕事の装備は必要最低限。この国で武器を入手するのはとても難しいので節約生活なのだ、キャンディも使い過ぎは体に悪い。

 なので普段の仕事は内容でセンセが最低限の装備を支給してくれる。(とってもケチ!武装したヤクザの事務所襲撃にナイフ1本ってコスパ求め過ぎでしょ!!)


だけど! 今夜の私はフルアーマーよ!


覚悟しなさい!ゴリラとモヤシ!


「真っ赤に染めてぶち殺す」


夜空に呟いてセンセの乗ってきた車に乗り込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る