10月16日(朝)
幼馴染の亜紀はどさくさに紛れて一緒に寝てくる
いや、意味がわからないな…なんなんだこの状況……
今日から球技大会の朝練を一緒にやろうってB組の悠木涼に誘われてA組のバレーボールチームの時間のある人は参加することにしたんだけど…
あたしは朝は弱い。
朝練とか早起きしなきゃいけないから辛いとは思っていたけど…流石にこの状況に気付いた瞬間目が覚めた。
亜紀があたしの布団で寝ている。
なんならあたしを抱き枕にして寝ている!?
朝から叫び出さなかったあたしを褒めてほしい。いつの間に布団で寝ているんだろう…
とりあえず布団から出て時間を確かめたい。
亜紀に抱きしめられている腕を解こうとするけど、ガッチリホールドされていて更には足まで絡まっていて身動きが取れなかった。
力強すぎでは?寝ているんだよね?
とにかく亜紀を起こさないことには何もできないみたいだ。初日から朝練に遅れて行きたくもないし……朝練は強制ではないから参加しなくてもいいかもしれないけど、凪沙も多分待ってくれているはず……
後ろから抱きつかれた状態からなんとか首だけ振り返って亜紀を見る。
あたしの背中に顔を埋めた状態の亜紀に話しかける。
「亜紀起きて。腕どけて」
んぅ〜と背中で唸って腕がさらに強まった。なんで?
足の方はどけてくれたので少しは動けるようになったけど、腕をどけて腕を!
背中からお腹の方に回された腕はギュッとしまっていてまだ抜け出せそうにない。
足はどけてくれたので体を反転させて亜紀の方を向いた。
寝顔は幼い頃から変わらず可愛いくて、寝息を立てて気持ちよさそうに寝ているけどこんなに寝覚め悪かったかな?
「亜紀!そろそろ起きて!あと制服で寝てるとシワになっちゃうから!」
亜紀は多分朝が苦手なあたしの為に早めに家を出てここまで迎えに来てくれたんだと思う。制服姿であたしの布団で寝てるのは謎だけど…
ベッドサイドには亜紀の眼鏡が置かれていて、寝る気満々で布団に潜り込んだ疑いが浮上した。
「ねむい…」
「ちょっ!!」
ちょっとは覚醒してきたのか、一言呟いてTシャツにショートパンツ姿の薄着で寝ていたあたしの胸に顔を埋めてきた。
また寝息を立て始めたけど、流石に起きて欲しい…胸元に亜紀の寝息も当たって恥ずかしくなってきた。
「亜紀。起きてってば!朝練遅刻しちゃうって」
亜紀を揺さぶって起こそうとするけど、まだ起きなくて腕が締まって胸に顔をさらに埋めて唸っている。
「いい―――する…」
「え?」
何か呟いたけど顔を埋めた状態の亜紀の声はくぐもった状態でよく聞き取れなかった。
「亜紀?亜紀!もういい加減起きて!」
「やわ――…」
「え?何??」
亜紀がビクッと動いた。流石に起きたかな?と思い待っているけど…動かない…え?まだ寝てる?
「亜紀?起きた?」
「…………」
「亜紀?」
規則正しく聞こえていた寝息は聞こえなくて、静かになって胸に顔を埋めているけど……
「亜紀?起きてるよね?」
ピクッと亜紀の肩が震えた。
もう…最近の亜紀はスキンシップが激しすぎる。安心するからって抱きついてきたり、後ろから抱きついて匂い嗅いできたり、でも胸に顔を埋められるのは初めてで恥ずかしい…これは安心するからか、胸を堪能してるのか、もしくは両方か…
どちらにせよ、早く起きて時間確かめたいし亜紀が起きてるのに離してくれないなら強硬手段に出るしかない。
あたしは力づくで自分の腕を解放して亜紀の肩に手を置いて引き離そうと力を込めた。
「いい加減離せぇ!!」
「もうちょっと〜!」
「起きてるじゃん!!何時かわかんないけど早く起きて支度しないとぉぉ!!」
「朝練だからちょっとくらい遅れても大丈夫だよ〜」
力づくで離そうとしてるのに亜紀の抱きつく力が強すぎる!
朝練に行くのに朝からこんな攻防をしてたら学校行く前にクタクタだよ!
「こら!足も絡めてくるんじゃない!!」
「だってこんな至福の時間もうないかもしれない…」
「こんな疲れる時間もう無くていい“!!」
「なおさら離せないぃ!」
「ちさきー亜紀ちゃんもう出ないと朝れん―――ガチャ―――………遅れるんじゃない?早く支度しなさいよー」
パタン
あたしの母親がドアを開けベッドの上で抱きついた亜紀と抱きつかれているあたしを見て、スルーした!鬼スルー!既読無視!?黙認!?知らんぷりですか!?
亜紀は静かにあたしから離れてベッドサイドに置かれていた眼鏡をかける。
「ちさきちゃん、早くしないと朝練遅れちゃうよ?」
「亜紀も鬼スルーかよ!!」
あたしは近くに落ちていた携帯で時間を確かめる。
「全く今何時………って!もう出ないとやばいじゃん!!メイクする暇ないし!とりあえず顔洗ってくる!!」
あたしは急いで顔を洗いに一階の洗面所に行って支度をする。途中母親から「あんた達ホント昔っから仲良しね」なんて言われたけどひと睨みして鬼スルーした。
「メイクは朝学校でするしかないか…」
学校の制服に着替えているとめちゃくちゃ視線を感じて振り返る…
顔を赤くした亜紀と視線が合う。さっきまであたしの胸に顔を埋めてた人の反応じゃない。あたしの下着姿なんて見慣れてるだろうに赤くした顔が初心で可愛らしい。
ブレザーに腕を通して鞄を持つ
「じゃ、いこっか」
玄関で2人揃ってローファーを履く。
「次からはちゃんと起こしてよね」
「ごめん。気持ちよさそうに寝てたから」
「だからって一緒に寝たら、わざわざ来てくれた意味ないでしょ」
「…ボソッ……意味のある至福の時間でした―――是非また―――」
「ん?」
亜紀が何かボソボソと呟いていたけどよく聞き取れなかった。
ローファーのつま先を立ててコツっと音を立て玄関を出る。
いつもより早い時間、あたしの家から2人で駅に向かった。
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