第37話 リアル魔女
ん? 魔女のくせにソロなのか?
魔女って物理弱いし、詠唱に時間掛かるから思いっきり随伴キャラだろ、良くこのレベルまで育てたな……。
『こんにちは~』
ヘッドセットから聴こえる若そうな女の声に、一瞬怯んだ俺は「ど、ども……」と挨拶を交わす。
『取り敢えず私について来てもらっていい? 行きたい所あるんだけどさ』
「いーですけど、俺、レベル98なんでお手柔らかに」
『大丈夫大丈夫! そんなに高難易度な所は行かないから』
彼女はメニューを開いてアイテムを使う。
『飛ぶよ?』
転移したセーブポイントである焚き火の前には最果ての塔がそびえ立っていた。
「ここっ⁉ 俺、6層までしか登ったこと無いですよ?」
『大丈夫だって! 私が魔法掛けてあげるから』
何かすっげーフレンドリーっていうか軽いっていうか……多分年上だよな?
彼女の先導で最果ての塔内部に潜入すると早速戦闘が始まった。
◇ ◇ ◇
テンポ悪っ! 魔法攻撃は強力だけどタイミングが悪いっていうか時間が掛かり過ぎる。魔女との二人プレイはちょっと微妙、夏風もいれば別だが……。だけど翼も加えればバランスもいいし強敵にも対処しやすいだろうな。
戦闘が終わったタイミングで俺は『@ちさ』に話し掛けた。
「ちささん、今度俺がパーティーに招待するんでそん時はよろしく。剣士と弓使いが居るから魔女も加わってくれたらいい感じだと思うんで」
『オッケー! あ、ちょっと待って! いらっしゃいませ!』
電子音がピッ、ピッとヘッドセットから聞こえ、俺は眉間に皺を寄せた。
『一万……円……あ、はい。何回で……』
ん? この人、働いてんのにゲームしてんのか? 俺は塔の内部でコンボ技の練習をして暫し待つ。
『ごめんなさい、千咲ちゃんの性癖は完売しました』
あ⁉ 嘘……だろ? 聞き覚えのあるセリフに眩暈が起こる。
ヘッドセットからガサガサ音が聞こえて『ごめんね? 続けよっか?』と呑気な声が聞こえた。
「あんたさっきのエロゲ店員だろ!」
『あ、もうバレた?』
「何で俺のID知ってんだよ!」
『え~っ! だってリュックにアルドヘブンのタグ提げてたじゃない。あれってフレンド募集って事だよね?』
うっ! そりゃそうだけど……。
「いやいや、ちささんが勝手に盗撮したんじゃないですかっ!」
『だってタグ作る時、その可能性があるって同意書に書いてあったでしょ? 私もPSIゲームスのイベントでタグ作ったから知らなかったとは言わせないわよ?』
ぐっ……、納得いかねーっ!
『取り敢えず、もう私たちはお友達なんだから自己紹介するね? 私は
「う……、卯月光、高一です……」
『疼き? 何かいやらしいなぁ、さすがエロゲ好き!』
「勝手にエロゲ好きって決めつけないで下さいっ!」
『そうだ! 早速紹介してくんない? さっき言ってた剣士と弓使い!』
「嫌です!」
『え~っ⁉ 何でよ?』
「そのエロゲネタ封印してくれるって誓わないと絶対に紹介しませんから!」
『誓う』
俺はその後数時間、千沙希からの頼みを断り続けながらゲームを続けた。
しつこかったな千沙希……。
晩飯時になり、俺は取り敢えずゲームを止めて凝り固まった体をほぐして立ち上がるとインターホンが不意に鳴り響いた。
小さな液晶画面には金髪ショートヘアーの美少女が写り込んでいるのが確認できて、俺は直接玄関に向かい、ドアを開ける。
「お帰り翼!」
「光、メロンあげる。重いから早く受け取って!」
プルプルしながら見た事も無いスーパーのレジ袋を俺に差し出す翼。
「ありがとな? これって実家からか?」
「うん、そんなに要らないって言ったのに4玉も持たされて死ぬかと思ったよ」
「大変だったな? そうだ、晩飯食ったか? 翼」
「ううん、まだだけど……」
「俺もまだだから、どっか食いに行かないか?」
翼は玄関の前で首をひねって斜め上を見ている。
「………………いいよ」
って、長いから断られるかと思ったぞ。
「てか、ちょっと座らせて!」
翼は玄関に入って廊下に腰かけると大きなため息を付いた。
「上がれよ。まだ死神の涙あるから」
俺は冷蔵庫からコスプレの副賞で貰ったドリンクを2本取って部屋のちゃぶ台に乗せた。
「光は何してたの?」
部屋に入って来た翼は俺のベッドに腰かけると、腕を上に伸ばして柔軟体操を始めた。
首をコキコキ鳴らして肩関節を伸ばす翼のシャツがずり上がり、お腹がチラッと見えて俺は一瞬ドキッとしてしまった。彼女はデニムのホットバンツからいつものように細い脚をドバッと出していて、目の前の男子高校生に脚線美を意図せず見せつけて来る。
「俺はちょっと街いって、帰ってからゲームしてた」
「ふ~ん? 街ってどこらへん?」
「へっ? う~ん、まぁ……電気屋とか?」
エロゲ屋に紛れ込んだとは口が裂けても言えない。
俺はそれ以上追及されたくなくて翼に死神の涙の瓶を手渡した。
翼がドリンクの栓をパキッと捻ると同時にまたインターホンが鳴って、今度は黒髪ロングの美少女が写り込む。
夏風? 帰って来たんだ。
俺が玄関ドアを開けると夏風が開口一番「寂しかったでしょ?」と、ニヤケながら俺の顔を覗き込んだ。
「べ、別に。すっげー静かで過ごしやすかったし……」
「ふう~ん? 強がっちゃって! 可愛いなぁ~ヒカリは」
「つ、強がってねーし!」
「はいはい、分かりました! って⁉ 何よこの靴っ! 翼のでしょ!」
いっ⁉ そこ?
廊下に上がった夏風が俺を追い越して部屋へと向かう。
「つ、翼っ! ヒカリの部屋で何やってるのよ!」
「ん? お帰りミーア。いま休憩してたんだよ」
「休憩⁉」
部屋に戻った俺の胸ぐらを夏風がいきなり掴んで「休憩って何よっ!」と大きな声を出す。
「は? 休憩って休憩だろ、他に何があんだよ?」
「それはっ……」
夏風は俺から目を逸らして急に耳を赤くすると押し黙った。
「そうだ、ミーアにもメロンあげるよ。ミーアのメロンほど大きくないけどね」
翼の言葉に俺は夏風の胸を思いっ切り見てしまって、さっき貰ったメロンと見比べてしまった。
同じくらいか? いや、流石に夏風の方が小ぶりだろ?
「どこ見てるのよっ!」
俺の視線を感じ取った夏風が自分の胸を隠すように腕を組んで叫んだ!
「いや、見てないって……」
「見たじゃない!」
「見てないって!」
「いいえ、見てました!」
俺と夏風の押し問答は暫く続き、翼はクスクス笑いが止まらなくなったようだった。
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