3章 大手の邪神たち
新ジャンル
翌朝。京都市内のホテルで、にゅうめんマンは、嵯峨野舞の誘拐事件にどう取り組めばよいか分からず困り切っていた。まったく手がかりがない状態でどこから手をつけるべきかとベッドに腰かけて思案していると、万休電鉄から電話がかかって来た。
「もしもし。万休電鉄安全課の諸葛亮と申します。にゅうめんマンさんですか」
「はい」
「にゅうめんマンさんは昨日、京都メトロの嵯峨野玲子と決闘して勝ち、今後うちに迷惑をかけないことを約束させてくださったということでしたね」
「はい」
「それと関係があるのか分かりませんが、今しがた弊社に、京都メトロの
「お知らせありがとうございます。僕はその乱闘に関する心当たりはありませんが、立場上、市民の平和を乱す事件を放っておけないので、今から様子を見に行きます」
「承知しました。どうぞお気をつけて」
「はい。では失礼します」
にゅうめんマンは電話を切った。
《謎の怪物と女というのは何者だろう》
と考えながら、にゅうめんマンは現場に急行した。
* * *
にゅうめんマンが三条御京坂駅に到着すると、別の鉄道の乗換駅に通じる広い地下通路で、嵯峨野玲子と、もう1人の若い女と、ギリシャ神話のミノタウロスみたいな牛頭の怪人が乱闘していた。すでに避難したようで周囲に一般人の姿はない。
嵯峨野玲子 vs 女と牛怪人の1対2で戦っているようで、見た目に分かるほど嵯峨野玲子がぼろぼろにやられていた。詳しい状況は不明だが、にゅうめんマンが来るのがもう少し遅かったら、嵯峨野玲子はかなり危険な目にあっていたかもしれない。
にゅうめんマンは3人の間に強引に割り入って乱闘を止め、まず嵯峨野玲子に言った。
「昨日あれほど大暴れしておいて、まだ騒ぎ足らないのか。暴れん坊将軍だってここまで暴れないぞ」
「好きで暴れてるんじゃない!突然こいつらに襲撃されたから応戦していたんだ」
これを聞いたにゅうめんマンは
「そうなのか」
と残りの2人にたずねた。
「なんで私たちがお前の質問に答えなければいかんのだ。これ以上邪魔をすると、そこの女、嵯峨野玲子と一緒に始末してしまうぞ」
謎の女が答えた。
女は中背で、ダークグレーの半袖シャツの上に、薄緑色の短いカーディガンをはおり、白い木綿のズボンとぺたんこの靴という格好だった。あごの下まで長さがある黒髪で、顔つきは嵯峨野玲子と比べるとやや丸顔で似ていないが、こちらも美人だった。
「そいつは
嵯峨野玲子がにゅうめんマンに説明した。女とは顔見知りであるようだ。
「守護邪神なんてはじめて聞いた。そんなジャンルがあるんだな」
「ジャンル呼ばわりするな」
と丹波橋景子が文句を言ったが、にゅうめんマンは無視した。
「牛の方はタンババという名前で、近畿東海鉄道の守護邪神だ」
近畿東海鉄道は、近畿地方と東海地方に広大な路線網を有する大手私鉄だ。合計線路長は万休電鉄や御京阪電鉄よりはるかに長いが、京都市では、南の方しか走っていないのでそこまで存在感はないかもしれない。
「守護邪神か何か知らないが、駅で乱闘するなら止めないわけにはいかない。市民の生活に影響が出ているからな」
にゅうめんマンは丹波橋景子に言った。
「生意気なやつめ。何者だ」
「俺は正義の味方にゅうめんマンだ」
「にゅうめんマンだと。万休電鉄に現れた烏天狗をやっつけた男か」
にゅうめんマンが烏天狗を退治したことは知っているが、嵯峨野玲子をやっつけたことは知らないらしい。
「そうだ」
と、にゅうめんマンは答えた。
「くっくっく。おもしろい……」
丹波橋景子は邪悪な笑みを浮かべた。
「タンババ、やってしまえ!」
「お前が戦うんじゃないのかよ」
にゅうめんマンと牛怪人タンババが同時に言った。
「私よりお前の方が強いからな」
丹波橋景子はタンババに言った。
「そんな自信たっぷりに言わなくても。ともかく、にゅうめんマンは恐らく強敵だから2人がかりの方がいいんじゃないか」
「それもそうだな」
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