情報


 大原は、特に何も考えず、ふくよかな女に腕を引っ張れるままに、部屋を出ると、そこはリビングで、真ん中には大きめのテーブルがあり、三人分の椅子がある。


その上には、三人分の料理が並べられており、見たことも無い料理だった。




ふくよかな女は手でほれほれっと、座れというジェスチャーをしながら、大原座らせた。




大原は座り、目の前の料理には目が行かず玄関ドアの近くにある、窓に目が行き外は真っ暗だった。


大原は少し考えようと思ったが、何処からか椅子を持って来て隣に座る若い女がいた。


ついでに、自分の料理もズラしているようだ。




 大原は少し不愉快な気持ちになったが、表には出さない。




対面にいるふくよかな女は喋る。


「〜〜〜〜〜」(ほら、食べるよ)


「〜〜〜!」(は〜い!)


若い女は手を上げ何か言っているようだ。




 みんな席に着き食べるのかと思いきや手を祈るように握り、何か言っている。




「〜〜〜〜〜〜」(勇者様に感謝を)


「〜〜〜〜〜〜」(勇者様に感謝を)




(おそらく同じ発音だから、同じ事を言っているんだろう)


 大原も祈る真似をした。


(今、相手を不機嫌にする行為は死と同じなので取り敢えずやる)




 少しして祈りは終わり、隣の若い女はスプーンを手に取り、ガツガツ食べている。


大原がそれを観ているとふくよかな女が口開け、何ものっていないスプーンを持ち食べろと、というジェスチャーを送ってきた。




「いただきます」


 俺はスプーンを手に取り、スープと草ぽい物を一緒にすくって食べた。


不味くはなかった、でも美味しいか美味しくなか聞かれたら、う〜ん、となるだろうが。


俺はとても美味しかったかの様に、笑顔で食べた。


ふくよかな女性は、とても良い顔をしていた。




 すると隣から肩をトントンっと叩かれて、若い女は何か腕でバッテンを作ったり、料理に指を差し、手で口を覆い、手を広げヴェ〜みたいな吐き出すジェスチャーをし、物欲しそうに見ていた。




 大原は女の皿を見たら、もう空っぽだった、大原は三品ある中から謎の肉料理と謎の果物を彼女に上げ、草スープは残して置いた。


料理を貰うと、彼女はすごく喜んでいた。




「〜〜! 〜〜〜〜〜!」(クエン!あんたがいっぱい食べてどうすんの!)


「〜〜〜〜」(ええ〜、私は嫌いなものを聞いただで、、、)


「〜〜〜〜」(返しなさい)


「〜〜〜」(は〜い)




 会話は終わった様で、若い女性が料理を返してくる。


俺は手の表スッと出し、大丈夫です。


というジェスチャーを送ると、若い女性は喜び、ふくよかな女性は申し訳無さそうにしていた。




 俺はふくよかな女性の瞳の中に安心、親しみ、という感情が見えた。


(ここは無理に食べず、ここが何なのか分かった後で安全確認をし、食べれるものを厳選して、食べて行こう。無理に食べて食中毒になったら、嫌だからね)


っと大原は思い草スープを完食した。




 大原はお腹を壊した。










(皆さん、どうもクエンです。朝ごはんを食べながらこんにちは! 昨日変わった男の人を拾って来ました。男の人は言葉が通じなくて大変でしたが! 昨日ご飯を分けてくれたので、とても良い人に違いありません。


見た感じは何処の国の人なのだろうっと考えましたが、ぜーんぜんわかりません!


黒髪に、スラっとした体型で、顔はイケメン? なのかな? 少なくともリュエンよりは、カッコいいです! 今日はお母さんに言われ、謎男を村長の所に案内しに行きます。


自分の朝ごはんを完食したし、謎男のご飯分も食べ終わったので行こうかな!)


っとクエンは思い立ち上がる。




 私は謎男の手を掴み、家のドアを開け外に出て元気に言う。


「行って来まーす!!」


「ちゃんと、連れて行くんだよ!」




 私は洗濯物を干しているお母さんを見て、手を振りながら謎男を引っ張り、村長の家に走って行く。








 大原疲れていた。


朝から何だか元気な女に絡まれて、朝ごはんを分けてやったりしていたらいつの間にか、外に連れ出され、今現在走ってる最中。


 俺は一体何処に向かっているのかも分からず、畑道をとりあえず走る。


手を掴まれているから離せないし、会話が出来ないから情報が入ってこないので俺は諦め、走りながら考える。




(分かるのはここは日本では無いと、でもまだ分からない、確証出来るものがない。何か、魔法的なものがあれば別世界と断定出来る。だが、俺自体小さい時にゲームで、魔王を倒せ! みたいな冒険RPGをちょっとしかやっていなかったから、あんまり詳しくは無い、なんせ現実の方楽しかっからな)


っと考えていると、若い女性は急に止まり。


俺は止まれなく、転びそうになると若い女性が俺のお腹に、腕をスッと支えるように入れ、顔を近づけてきた。




「〜〜〜?」(大丈夫?)




 何か聞かれ、少し心配そうに見ていたので。


俺は両手をグーにして、上に向かって腕を上げたり下げたりし、元気ですよ。っと、アピールしたら若い女性何故か拍手をしている。


俺また、どっと疲れた感じがした。




 着いたそこはこの村? で、そこそこ大きな家で若い女性は中へと案内してくれた。


俺は中に入るとそこには男性四人、女性二人、叔父一人がいた。皆、何か作業している様だった。




 若い女性は俺を置いて行き真っ先に叔父の所に向かい、大きな声で何か話しているが、聞いても分からないので聞かなかった。


 その間、俺は部屋全体を見渡し、何かいい情報がないか見渡したが、ただ単に立派な家しかわからなかった。


 すると、目の前に若い女性が走って来て、俺の腕を掴み叔父の所に連れて行かれた。


叔父のとこにつき、俺は何をすればいいのか分からず、ボーっとしていたら、若い女性がなんか叔父の手を広げて自分の頭にのっけている、ジェスチャーをして来た。




 俺は見た通りに身長差があるので、お辞儀するかの様に頭を差し出し、叔父が俺の頭に手をのっけた時、何か暖かいものが感じられた。


叔父が手を引き、俺は頭を上げ何か話している二人を聞く。




「〜〜? 〜〜〜?」(どう? 見れた?)


「〜〜〜〜〜〜」(なにも見えないわい)


「〜! 〜〜〜〜!」(え! そんな事あるの!)


「〜〜〜〜〜」(初めてじゃい)




 なんか驚いた様子だったので、俺は二人に何をしたのか教えてもらおうと、首を傾げたが、特に何も教えてくれなくて少しイラッと、したが表には出さない。


二人は何か話しているよなので、俺は勝手に動き部屋を探索した。








 ここはメムロ村の村長の家。


クエンは村長ウィッグに記憶を観てもらおうと思い、謎男連れて来たのだが。


まさかの記憶が見えないと言う、少しでも記憶がわかればどこの国の人だったのかとか、どこの言語なのかが、わかるかも知れないと思い連れて来たが失敗だった。




 謎男は何処かフラフラ〜っと、部屋を探索している様でクエンはそれを見守り、村長と話した。




「ねぇ村長、謎男どうする?」


「ふむ、しばらく村に居ても問題はなかろう」


「そっか! じゃあ、しばらく様子見だね!」


「ちなみに、あやつ謎男じゃあなくて村の皆んなから、姫男と呼ばれとるぞ」


「え! なんで!」


「昨日お前さんが、あやつをまるでお姫様の様に抱える所を村人がみつけてのぉー」




 クエンは、あちゃーっと思いながらオデコに、手を当てた。


でもまぁいっか! っと、吹っ切れクエンは家に帰ろと思い、姫男を探す事にした。










 俺は手当たり次第扉を開けており、ある扉を開けた。


そこは、本がズッシリ締まっており、俺は一冊手に取り読んで見たが、全然わからない。




(当たり前だ)




 持っていた本をしまい、次は適当に本を手に取り、本なら何か情報が得られるかもしれないっと思い探すが何にも無い、つい、はぁーっと深いため息が出てしまい、埃を被った本に息がかかり、埃が舞鼻の中に入って来て、俺は。




「ブェ、ブェ〜〜クション〜」


っと、くしゃみをしてしまった。




 あ〜帰ろっと思った時、上から本が落ちて来て、頭にぶつかった。


本の角に当たり、俺は痛すぎて床に倒れ、もがき苦しんでいたが、すぐに立ち直り。




 落ちて来た本を手に取り「クソ本メェー!」っと、言いながら投げようと思ったが、本の文字が読めた気がするので、じっくり本を見た。


 すると表紙に日本語とここの国、あるいはこの世界の文字が書かれていた。


俺は本を開き、ページをめくり眺めていった。




 左側に日本語が書かれており、真ん中にイコールの記号があって、右側にここの国もしくはこの世界の文字が書かれていた。


 俺はこれが翻訳辞典的なものだと理解し、少しずつこの世界が、別の世界である可能性が高くなり少し気分が上がった。


すると、若い女性の誰かを呼んでいるかのような、大きな声がしたので、俺は本を持ち女性の元へ向かう。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








 月日が少し立ち、大原はこの世界の言語をマスターし、ここの歴史も本で何となく理解した。




 大原は、今リュエンさんと言う人の畑仕事を手伝わされており。先ほど畑仕事が終わり、家に帰る途中。


家に近づくと、料理の匂いが漂って来た。




 俺は家のドアに近づき、ドアハンドルに手を掛けドアを引き、家に入って行く。


「ただいま帰りました」


「あら、オオハラおかえり」




(リビングに居る彼女はシュルアさんと言うこの家主、見た目に反してとても優しく接してくれる、良い人だ)




「もう少ししたらご飯できるからね、ご飯できる前にちゃちゃっと、お風呂に入っちゃいな!」


「あ、お先に入らせて頂きます」




 大原は、自分の部屋に入る。


(この部屋はシュルアさんの旦那さんの部屋らしく、俺はそこで暮らしている。


シュルアさんの旦那さんは昔病気で亡くなったそうで、服とかのサイズが丁度俺に合っていて、お古を着させてもらている。こっちに来た時の服はまだ使えるので大切にしまっている)


 俺は着替えを持って、お風呂場に向かった。




 脱衣所的なとこに着き、服を脱いでお風呂場に行く。


(お風呂場はさほど広くはないがかなり綺麗で設備? も凄い、この浮いている小さい水玉は恐らく現世で言うとシャワーだろう)


 大原は水玉に触れると、水玉から丁度いいお湯が出てきた。


(この水玉の仕組みはよく分からない、何せ、魔法的な何かだから)


 水玉は自由自在に動き、大原は体の汚れを落とし浴槽に入る。


(この浴槽は足は伸ばせなくちょっと肩がはみ出るぐらいだ、浴槽も魔法的な何かで、水を入れるだけで丁度いいお湯になるんだと....)




俺はフゥ〜っと深い息を吐き、疲れを癒すと同時に古本で得た歴史を振り返る。








 遠い昔、この世界に一代目魔王が誕生し、世界を侵略しようとした時一代目勇者が誕生した。




 勇者の証拠として、左手の甲に鷹の様な紋章が出るらしい。


勇者になった者は、死者を生き返らせる事が、出来る。ただし、ちゃんとした死体で無ければ、蘇生はできないらしい。




 そして、一代目勇者と相棒の二人で魔王に挑みに行ったが、帰って来たのは勇者と相棒の首だけだったらしい、人々は焦り獣人族、エルフ族、ドワーフ族と、協力関係を築こうとしたが、その頃は異種族とは仲が悪く協力拒否をされていた。




 人間族が困っていると、一代目勇者に弟子がおりその弟子が二代目勇者に選ばれた。


追記、勇者に選ばれる法則は謎で、誰にも解明出来ないっと書かれていた。




 人間族は、二代目勇者を更に強くする為訓練をし、新たに精鋭の仲間2人を追加した。


亜人軍の侵攻が早くなり、パームエン平原で亜人軍と人間軍の決戦が行われた。


人間族はかなり不利な状況で、まともに戦ったら負ける戦さだった。人間の王は二代目勇者と仲間達を、魔王に接触させる為、作戦、死の特攻を提案した。




 遂に、戦いが始まり、作戦は決行された。


作戦は見事成功し、魔王と二代目パーティーはぶつかり。


魔王を倒す事は、出来なかったが、何とか勝利を収めた。




 一時的に亜人軍と魔王を退しりぞけたが、奴らが生きている限りまた攻めくる。


こちらの二代目達はかなり消耗していて、二代目の仲間一人は戦死してしまった。勇者達を早く休ませる為、街に素早く帰還した。




 人間族の王は街に戻り、次の侵略に備え準備をしようと街で働いていると、この世界では珍しい黒髪の男が目に映った。




 王がその男を珍しい人だから見ていたら、黒髪の左手の甲に鷹の様な紋章があった。


勇者は何と、二人存在した。


 王は三代目勇者? っと思わしき人物に話しかけたが、言葉が通じなかった。


王は取り敢えず偽物か、本物かを確認する為、手の甲を水で洗ったそうだ。




 歴とした本物だった。




 三代目勇者は元気に話しているが、何を言っているのか分からず。


王は、三代目勇者に膝をつき、泣きながら服にしがみ付き「どうか、我等をお助け下さい」っと、せがんだらしい。


 何で、三代目だけにせがんだかは分からないっだそうだ。






 三代目勇者は、王の肩にポンと優しく手を置いた。王は顔を上げた。


三代目勇者は空いた方の手でグーを握り、親指だけを立てていたらしい、その意味は王にはわかからず、王が呆然としていると三代目勇者は街の出口に向かって、歩いて行ったそうだ。


王は三代目を止める事はなく、そのまま見送った。




 月日が立ち、王はあの時三代目を止めれば良かったっと後悔していたが、今は次の亜人軍との戦闘作戦で頭がいっぱいで手一杯だった。


 その時兵士が来て、王は敵襲かと焦ったが訪問者が訪ねてきた様で安堵し、王は兵士に王の間連れて来いと命じた。




 王は訪問者を見て、驚きを隠せなかった。


四人の訪問者は獣人族の王、エルフ族の王、ドワーフ族の王、そして最後に三代目勇者だった。




 王は頭から大量の汗をかいていた。




 一番最初に口を開けたのは三代目だった。


「我等、魔王討伐の為、集いました」


三代目はキメ顔をしていたらしい。


 王は色々聞きたい事があるが、それより嬉しさのあまり泣いてしまった。


王の間にいた者たちは皆、唖然としていたが三代目がこちらに寄って来た。




 そしてあの時と同じ、一番最初に出会った頃と同じポーズをしていた。


王は意味はわからないが、笑みが溢れた。




 そこから形勢は逆転し、遂に魔王のいる最後の砦まで来た。


三代目はとても強力で、次々と敵を瞬殺していったらしい。


しかし、二代目は生き残った仲間の看病の為、あれ以来戦いには来なかった。




 魔王との決戦の時に三代目は、自分だけでいいっと言い、我等と魔王の間に結界を貼り、一人で進んで行った。我等は結界を破ろうとしたが破れ無く、時間だけが過ぎて行った。




 時間が立ち、我等は勝利を祈って居ると結界が解け、我等は武器を構え警戒した。


魔王か勇者かどっちだっと思いながら、光が照らす中出て来たのは勇者だった。


 三代目は手を前に出しグーから、ブイ字の様に指を広げ、ニッコリ笑った。


その瞬間、歓声が上がった。泣く者、喜ぶ者とそう世界は平和に近づいたのだ。




 我等は、終戦の後始末をしていると、三代目が謎の人物を連れて来た。


我等その人物を見た時、武器を構えた。


何と亜人族の者だった、三代目はびっくりした様子で辺りに落ち付くよう説得し、三代目は言った。




「この人、二代目魔王ね」




 皆、驚愕きょうがくし、襲い掛かろうとする者が居たが、三代目が「亜人族だけ不幸になるのは違くない?」っと言い、皆の動きは止まった。


 我等は、二代目魔王と対話し、未来永劫みらいえいごう戦争は起こさない事を誓い、この世界に真の平和が近づいた。





 俺は浴槽から出て、脱衣所に向かう。

「あ〜、長風呂しすぎた」


 俺は脱衣所でタオルを手に取り、頭や体を拭きながら考える。

(この世界の物語は大体こんな感じだったな。まぁ、俺の目的に余り関係無いから、豆知識程度で覚えておこっと)

 服を手に取り着替える。そして洗面所? 的な場所に近づき、コンセントに繋がって無い、ドライヤーのような物を持ち、ボタンを押し、風が吹かせ髪を乾かす。


「よし」


っと言い、脱衣所から出てリビングに向かうと既にテーブルの上にご飯が並べられていた。



「オオハラ丁度いいね。先に座ってて、クエン呼んでくるから」


「わかりました」



 俺は椅子に座り、少ししたらクエンとシュルアさんが来て、クエンは昼寝でもしていたのだろうか、寝起きみたいな声で「オオハラおかえり〜」っと言う。




「ただいまです。クエンさん」


「ほら、早く座って、座って」




 先に座ったシュルアが言う、クエンも椅子に座りそして食卓を囲むと、皆手を合わせて祈る様にして、こう言う。




「勇者様に感謝を」


「勇者様に感謝を」




 俺は二人に聞こえないぐらいの声で

「この世界に、連れて来てくれて、ありがとう」

っと日本語で呟き、直ぐに「勇者様に感謝を」っと言い直した。

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