第9話 若牧師様の打ち明け話
「僕は早くに父をなくして、母と二人で生きてきた。成績は良い方だったけど大学は諦めて、高校出たら働いて母に楽をさせてやるんだと、それが僕の人生なんだと思ってた。
なのに高校の最終学年の年、母は突然再婚すると言い出した。
相手は勤め先の社長でお腹に相手との子供がいると言うのだ。
「もう決めたの」母は言った。
住み慣れたボロアパートのある街を出て、義父の住む、郊外の上流階級のプール付きの家に引っ越した。
義父はいい人だったが、急にできた大きな息子をどう扱っていいのかわからず、腫れ物に触るように扱われて気づまりだった。
僕は緊張すると吃るたちで、慣れない人とは、うまく喋れないんだ。
仲睦まじい両親。母の大きくなっていくお腹。
赤ん坊が生まれれば、母と義父と赤ん坊は血のつながった家族、
僕の居場所がなくなるのは目に見えていた。
良かったことといえば、ずっと欲しかった犬を飼えたことだけ。
真っ白の大きな犬で、毎日散歩するのが唯一の楽しみだった。
僕を一流大学に入れたいと望む母のために、高校も私立に変わった。
上流階級の生徒の通う有名校だった。
でも、僕が貧乏な育ちなのがばれるといじめが始まり、成績も落ちていった。
母のおなかの中の子供を恨み、学校と今の生活の全てを恨み、
ついに僕は期末テストのすべてを、白紙で出した。
それで、僕の推薦入学の希望は消えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます