第5話 発端~セリカの計策~
「むぅっ!! 君がシンを守ってくれていたのか!! 一家の代表として深く礼をせねばなるまい!! 家から最上級のプロテインを大量に持ってこよう!!」
「プ……プロテ……?はぁ……どうも……」
僕達一家は無事に再会した後、セリカの家? にお邪魔させてもらっていた。
父、母、姉、妹は僕がセリカに助けてもらった事を聞いてからずっとセリカに感謝している。
セリカはどう対応したらいいかわからないらしく……ちょっと引き気味だった。
「大木はん、年頃の女の子にはプロテインよりお料理どすえ。うちがご馳走作ったるさかい。台所借ってもええかしら?」
「え? あ、はい。どうぞ……右手奥です」
京弁や関西弁が入り混じったような言葉を使う母さんにセリカは普通に対応した。
そういえば異世界なのに言語が通じてる、何でだろう?
「お前イカした家に住んでんじゃねぇか、ロックだぜ」
「ふふふ……我に潜在せし異能が告げている……封印されし歴史がここに眠っていると……」
「は、はぁ……」
ヤンキー言葉と中二言葉にはさすがに対応できないようだ。
「ち、ちょっとシン君お借りしますね~、この中は好きに見回って使ってください~」
戸惑いながらセリカは早足で自分の部屋へと僕を強引に連れ込んだ。
バタンッ
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セリカは部屋に入った後、僕を強引に椅子へ座らせる。
そして冷たい目をして見下すように睨んだ。
「あんたの話の信憑性が薄れたわ、何よあれ? あんたの家族……滅茶苦茶強いじゃない! あたしでも勝てるのか危ういくらいよ! 説明しなさい! 何であんただけそんな愚図なのか!」
「そんな事言われても……僕も混乱してるんだよ……説明できるとするなら……さっき話した通り、神様に貰った力がそのまま適応されたとしか思えないけど……」
「………早とちりで言葉を取り違えたってやつね……それでも普通じゃないわよ……実はさっきあんたのお父さんの『基礎能力値』を解析させてもらったんだけど………とんでもないわ」
いつの間にそんな事を……『基礎能力値』ってのはゲームとかで言うステータスみたいなものかな?
「口で説明するよりわかりやすくあんたにも見せてあげるわ………て………手……」
「?」
セリカは突然頬を紅く染めて手をこちらに差し出す。
「……っ! 手を握ってって言ってるの! そうしないとあたしの『基礎能力値』見せれないでしょ!?」
(そっか、手を握ると僕にもステータスが見れるようになるのか)
とりあえず僕は言われた通りセリカの手を握った。
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◇【セリカ・ルィンミァリル】(LEVEL255)
・種族 ハーフエルフ ・年齢 19歳
・クラス 『騎士』
HP 10038/10038 MP 870/870
攻撃A 防御A 敏捷A 魔力A 精神A
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すると僕の視覚にセリカのステータスみたいなものが表示される。
とりあえず色々突っ込みたいところだらけだけど、僕は一番気になる部分に突っ込んだ。
「レベル255!!? カンストしてない!?」
「とりあえず『能力値』についてある程度の認識はあるのね? だったら説明は省くわ。カンストってのが何かは知らないけど……驚くようなレベルじゃないわよ。騎士に就くなら最低でもレベル200、オールAくらいは当たり前なんだから」
「…………この世界どうなってるの……一般的な平均値はどれくらいなんだ……?」
「成人した男性なら平均50~80。これは戦闘専門職じゃない……農民や商人のレベルね。みんな子どもの頃から戦闘訓練を受けてるから。そうしないとこの世界では生き残れないもの」
(ただの村人でレベル50!?)
「そしてこれがあんたの『基礎能力値』。驚かないでね?」
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◇【樹山 森】(LEVEL1)
・種族 ヒューマン ・年齢 15歳
・クラス『新生児』レベル
HP 4/7 MP1/1
攻撃E 防御E 敏捷E 魔力E 精神E
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とりあえず色々突っ込みたいけど、僕は一番突っ込まなければいけない部分に突っ込んだ。
「クラス『新生児』レベルってなに!?」
「文字通りよ、1歳未満の赤ちゃん。つまりあんたは1歳児以下ってこと」
(そんな馬鹿な……僕はこの世界では赤ちゃんにも勝てないってこと!?)
「あんたの世界って何なの? どれだけ平和ならこんな事になるの?さすがにこれはないわ」
セリカは冷めた眼で心底呆れ顔をした。
確かに僕は運動が得意ではないけど不得意でもない。身体測定では一般的な平均レベルだったのに…。
「そしてこれがあんたのお父さんの『能力値』よ……あんたとは逆の意味でビックリしたわ」
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◇【樹山 大木】(LEVEL 555)
・種族 ヒューマン ・年齢 40歳
・クラス『聖守護神』レベル
HP21000000/21000000 MP0/0
攻撃SS 防御SS 敏捷SS 魔力E 精神SS
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もう突っ込む気にもなれなかった。
「まぁこれは『基礎能力値』よ。勿論鍛えればレベルは上がるし能力値も上がる。それに戦闘では相性だったり能力だったりで……一概にこの『基礎能力値』だけで勝敗は決まらない……けどね、」
セリカは真剣な顔をして僕に言った。
「さっきの『究極刀雑草』なんてのはあたし達にとってはその辺の塵と変わらない、なんて事ない……危険とも認識されない雑草なの。『大陸を呑み込むほどの雷を降らす雲』とか『時を止める風』とかの自然災害がそこらへんにウヨウヨしているこの世界……あんたは間違いなく生き残れない。あんた……これからどうするの?」
セリカは僕に思い切り顔を近づけて言った。
その眼は真剣そのもの、怒ってるようにも見える。
何もかもが桁外れの異世界『インフィニティ・グランデ』。
何で僕はこんな異世界に来てしまったんだろう。
心のどこかで待ち望んでいた異世界転移と何もかもが違う。
逃げたしたい、帰りたい、今すぐ家に戻りたい。
(だけど……泣きごとなんか言ってる場合じゃない。戸惑ってるのは僕だけじゃないんだ……っ! きっと……父さん達は余計に混乱しているんだ……いくら強くたって……異世界についての知識が何もなければ……いつか…………)
僕の出す答えは一つ。
僕はセリカの眼をじっと見て言った。
「……強くなりたい、家族みんなを守れるくらい」
「………………………ふふっ、言ったわね。眼を見る限り、どうやら嘘や迷いはなさそうね。ここであんたが泣き言言ってたら……あたしはもうあんた達家族には関わらないでおこうと思ったけど……わかったわ。協力してあげるわよ。この世界の人間の協力は必要でしょ?」
「……セリカ……ありがとう。けど……どうしてそこまでしてくれるの?」
「べ、別にただの親切よ! 決して罪悪感からじゃないんだから!」
この異常な異世界はあれだけど……初めて異世界で出会ったセリカがいい人で良かった。
<シンはん、セリカはん、ご飯出来たで~>
扉の向こうから母さんの声が聞こえる。
(そうだよ、今、弱くても強くなればいいんだ)
「けど、そんな簡単な話じゃないわ。あんたの強さは赤子レベル。あんたがよっぽどの才能でも持ってない限り……まともになるまで最低5年以上はかかる。それまでこの世界で平和に過ごすなんて無理。魔物、怪獣怪人、盗賊海賊山賊空賊、獣化物……魑魅魍魎の悪鬼が蠢く『インフィニティ・グランデ』じゃあね」
「じゃあどうすれば……」
「……あんたは家族を守りたいんでしょ? そして……その家族は規格外の力を持っている……だったらそれを利用しない手はないわ」
そう言って、セリカはニヤリと笑った。
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