赤いフラミンゴ
こんばんは。
では、私が知っている特別な話をしましょう。
あなたは動物園は好きですか?
あの空間はよいものです。本来はいくつもの大陸を横断し、危険な地区に行かなければ見ることのできない動物をあんなにまじかで見られるのですから。
私も初めて象を見た時は、この地球上にあんなに大きなものが存在していたことに度肝を抜かれましたよ。
しかし、今は動物好きじゃないと、暑いだの、臭いだので行かない人もいるみたいですね。
それで、あなたは動物園で好きな動物はいますか?
ライオン? ペンギン? 今は素敵なショーが開催されて、ゲストも参加できるのも魅力的ですよね。私はその中でもフラミンゴショーが好きなんです。
美しい色の鳥たちが、群れを成して颯爽と歩く姿に惚れ惚れしますね。私は全国のフラミンゴショーを見て回りましたが、忘れられないショーがあるんです。それはここの近所にある遊園地にあるんです。
そうだ、ちょうど行ってみましょうか。
え? こんな時間に動物園はやっていないって?
ふふふ、真夜中に開催される特別なショーです。
さあ、行きましょう。車に乗って。
動物園に着くまでに、ショーの事を少し話しましょうか?。
そのフラミンゴショーが特別なのは、この時間帯で行われているだけではありません。
ちょっとここでクイズです。
フラミンゴの色は何色でしょうか?
正解、ピンク色ですね。
でも、今から見に行くフラミンゴは特別なんです。 色が変化するフラミンゴなんです。 何色かは見てのお楽しみですよ。
ほら、動物園に着きました。照明はないので、足元に気を付けてくださいよ。
フラミンゴショーの入り口はこちらです。ほら、人がちらほらと向かっているでしょう? あの人たちも私たちと同じくフラミンゴショーを見に来た人たちですよ。 みんなグラスを手に持っているでしょう? ここでは飲み物が提供されるんです。ショーを見ながら飲むワインは最高ですよ。
あなたはお酒飲めましたっけ? 大丈夫、ソフトドリンクも用意されていますから。
さあ、席に座ってください。これからショーが始まりますよ。
◇ ◇ ◇
ショーが始まった。空には大きな満月と、満点の星空が輝いている。舞台から出てきたのは仮面をつけ、シンプルなドレスに身を包んだ女性たちだった。そしてその後ろに多くのフラミンゴを従えていた。
ゲストたちは、フラミンゴを見ながら嗜むようにグラスに口をつけている。あなたも真似をするように一口飲んだ。
フラミンゴたちは、統一のとれた歩きで、女性の後ろをついていく。後方のフラミンゴ数匹が列から離れて、うろうろしている姿も愛おしい。クライマックスと思われる、池の上を何匹ものフラミンゴが舞う姿は美しかった。
フラミンゴたちを驚かせないように控えめな拍手が起こる。
これで、終わりか。そう思った時だった。女性がステージの中央で深々とお辞儀をすると、顔をあげて言った。
「最後に、フラミンゴの餌やりを行います。今回参加できるのは2人です。選ばれた方はステージにお越しください」
これが、このショーの目玉なのだろうか。ゲストの皆が、期待したようにそわそわと騒ぎ出した。
餌やりか。確かに餌をショーにしている動物を見ることはあるが、フラミンゴの食事は、魚丸のみのペンギンや、スイカを粉々にするカバほど派手ではない。確か、プランクトンを食べていたし、動物園ならペレットだろう。しかし、なぜ皆こんなにうれしそうなのだろうか?
頭上の上をスポットライトが縦横無尽に移動する。ドラムロールが鳴った。
「最初の一人はあなたです!」
ステージ近くの男性が選ばれた。男性周りのゲストたちは拍手をする。だが、選ばれた男性は、妙に興奮した様子でその場から動かなかった。 その男性を職員二人が左右から担ぎ上げるように立たせた。
「ハハ、ハハハ、とうとう、とうとう俺が、俺が選ばれた」
男性の声は上ずっており、喜んでいるような、しかし、どこか恐怖を感じているような声だった。 男性がステージ中央に立つまで拍手はやまなかった。ステージの中央ではフラミンゴが集まっていた。選ばれた男性がステージに来ると、周囲を包囲するように群がっている。
「では、フラミンゴの餌やりです。どうぞご覧ください」
女性の合図とともにフラミンゴが男性に襲い掛かった。 ゲストたちは、にこやかな笑顔でお酒を楽しんでいる。
ピンク色だったフラミンゴたちは、次第に赤く染まっていった。 月明かりに照らされた鮮血はとても怪しく光って美しい。
「では、次の餌やりを行います。次の方はこちらです」
ドラムロールが鳴り終わると、スポットライトがあなたの頭を照らした。
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