マッチングアプリで出会った幽霊
俺の話は怖くないかもしれないけど、まあ聞いてくれよ。
マッチングアプリを知っているかな? お子様にはまだ早い話かな? おっと成人でも未熟者には早い代物だよ。人を見る目がなければ、君はだまされてしまうかもしれない。あの世界はいい人もいれば、悪い人だっているんだよ。君を利用しようとする者がさ。それと相手が人間だとも限らないよ。幽霊かもしれないんだ。霊感がある者だけが幽霊を見れると勘違いしていない?違うんだよ。相性があってね。君と波長の合うお化けなら姿が見えるのさ。幽霊側も姿を見れる人間をさがしているよ。そう、このマッチングアプリを使ってね。普通は見れないプロフィールが特定の人だけに見えるのさ。
俺が体験した話をしようか。俺は今まで彼女が出来たことがなくてさ。周りの友達は彼女と仲良くやっているのがうらやましくて、マッチングアプリに手を出したのさ。まあ、登録している女の子は俺にはいまいちだったよ。気になる子が全然見つからないなと思いながら、いろんな子のプロフィールを閲覧していたよ。その中の一人だけ、俺の目の釘付けになったよ。俺と同年代の女の子さ。見た目は冴えない普通の子だったけど、なにか他とは違う雰囲気が合ったんだ。俺はその子にアピールしたね。するとすぐに返事があって、仲良くなったんだ。お金が必要とか、契約しないかとか怪しいことも無く、半年が過ぎたよ。俺を意を決して、会いたいと言ったんだ。彼女は快く受け入れてくれたよ。彼女の希望に合わせようと、場所と日時を決めてもらったんだ。そしたら彼女、なんて返してきたと思う? 夜中の二時の墓場で会いたいというんだよ。驚いたね。女の子がそんな場所と時間を選ぶなんてさ。なにかやばい奴が裏にいるのか思ったよ。まあ、俺は了解して会ったけどね。
約束の日に俺は墓場に行ったよ。明かりも無くて不気味だったね。一応注意して周りを見たけど、怪しい車や黒服の男はいなかったよ。俺はその場で彼女を待ったんだ。夜中の二時になったとき、急に背中が寒くなったんだ。そして、俺の名前を呼ぶ女の子の声がしたよ。俺は声の方を振り向いたよ。そこにはプロフィールの写真と同じ女の子が立っていたんだ。いや、少し違ったかな。彼女の体は透けていたよ。彼女は幽霊だったんだ。でも俺は恐怖を感じなかった。気になる女の子だったし、彼女は申し訳なさそうにこちらを見ていて、襲ってくるような素振りはなかったからね。彼女は訳を話してくれたよ。どうやらこの世に未練があって、成仏できないでいるみたいだ。その未練が大好きな漫画を完結まで見届けたいという理由だったよ。それと作者にファンレターを送りたいんだって。変わった幽霊だよね。
俺は彼女に協力することにしたよ。漫画雑誌を買って、彼女の読むスピードに合わせてページをめくるのさ。そうしているうちに俺も漫画にはまってしまってね。彼女と感想を言い合うのが楽しかったよ。それとファンレターね。彼女の言葉を代筆するのさ。彼女の止まらない感想と感謝の言葉が出てきたよ。そうとうその漫画が好きだったみたい。次の漫画が出るまでの間、俺は彼女を連れて出かけるようになったよ。水族館、映画館、遊園地、山。お決まりの場所かな。一人分の料金で二倍の楽しみがあったよ。
そうしているうちに、漫画の最終回が来たんだ。彼女は読み終えると、満足したよな顔をしていたよ。俺は彼女と別れるが嫌だったよ。俺は彼女に思いを告げようと動いたとき、彼女は俺の口に指を当てると、「あなたがよぼよぼのおじいさんになるまでは聞かないわ」そう言って彼女は笑って消えたんだ。これがマッチングアプリで出会った幽霊の話さ。
彼女は俺に呪いをかけていったよ。もう、他の女の子に目が向かなくなってしまったんだ。彼女を好きになってしまったのさ。やれやれ、とんでもない呪いだよ。俺はこの先、独り身で楽しく過ごす道しか残されていないのさ。
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