「やあ、くまちゃん、くまくんとはどうだい?」

「学校で堂々と話しかけてこないでくれませんか? 十八禁教師」

「ちょっと待って何その呼び方?」

 久しぶりに話しかけてきた名切先生、もとい変態教師はこの間、コンビニの十八禁コーナーでにやにやしていたからであります。

 個人の趣味嗜好に口を挟む謂れはないでしょうが、教師たるもの、そういうのは生徒の目が及ばない場所でやってほしいものです。

「いやいや、深夜に女子高生がコンビニにいる方がおかしいんだよ」

「それは言わないお約束です」

「堕ちたものだな、名切」

「久々の対面の一言目がそれ?」

 くまくんも私の後ろからひょっこり現れました。そして、当然のように変態を罵倒します。

「もう先生じゃなくて変態呼びになってるの!?」

「心象がそうそう変わることはありません」

「残酷なことを言わないで!」

「柄まで通すぜ」

「突然ゲーム化しないで!?」

 まあ、冗談はこの程度にして。

「学校でくまくんの話を出さないでくださいよ。学校でのくまくんはエアー友達じゃなくて、エアーなんですから」

「色々と失礼だなオイ」

 くまくんにはエアーでいてもらわないと、せっかく深まった冴木さんや貴船さんとの仲にひびが入ってしまうかもしれません。それに、クラスメイトからエアー友達病だと思われたくないです。

 そもそもいつまでいる気なんですか、このエアーは。

「悪魔だっつの」

「呼び出したのはくまちゃんなんだからくまちゃんの責任だよ?」

「珍しくまともなことを言わないでください」

「珍しくって何!?」

 正論を言われると返せなくなるではありませんか。ぐぬぬ。

 でも、ほら、本当に出るとは思わないじゃないですか。フィクションじゃないんだから。




※この物語は、フィクションです※




 ん? なんかテロップ出たけど気にしなーい。

 とにかく、怪しげな儀式をやって、それが本当に実現するなんて誰も思いやしませんよ。

「あの貴船とか言うやつは実現すると信じてたみたいだが」

「……貴船さんはオカルターです」

「ほら、そこに夢を与えてあげなきゃ! 友達にずっと隠し事もよくないよ?」

「誰が罷り間違って悪魔召喚できてしまいましたなんてイタイこと言うんですか!?」

「……くまちゃん?」

 私の名前を呼ぶ声に、ぎくりと反応します。ぎこちなく首をそちらに向けると、そこには黒髪長髪の大和撫子な女子高生、貴船美嘉さんがいました。噂をすれば何とやらです。

 って、冷静に解説している場合じゃない! 思わず叫んでしまったの聞かれたよね? 聞かれましたよね!?

 ぎゃーっ、よりによって貴船さんに聞かれてしまったぁ。いくら彼女がオカルターとはいえ、普通の価値観くらい持ち合わせているはずです。悪魔召喚のためのくまのぬいぐるみをリアルホラー調にしちゃうけれど、一般人のはずなのです。

 どうしよう中二病とか言われたらもう立ち直れない気がするよ。くまくん、今のなかったことにできませんか?

「現実を受け止めろ」

 言葉が重いですよ。私の体重より重いです。

「お前何き、ぶべっ」

 女の子の体重聞くような野暮ったい悪魔なんていませんね、うん、いません、よし。

「いや、くまちゃん、拳掲げてどうしたの?」

「季節外れの蚊がいたようです」

「もしかしてそこに召喚した悪魔でもいるの?」

「スルーですか……ってえっ!?」

 何故バレた!?

「語るに落ちているよ」


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