バグだらけのネトゲの世界に開発関係者の俺が転生したけど、既知のバグの中でプレイヤーの有利になる物だけは当然最優先でフィックスしてたので、この世界はクソゲーかもしれない

 神様の不注意で命を落として異世界転生した青年、久曽鯨 創。

 転生前の説明によれば、転生先は彼の「最も強く印象に残っているゲーム」を元にした異世界だという。

 そんな彼が転生したのは、自身が開発チームの一員として日夜バグ対応に追われていたMMORPGの世界だった。


 アカウント作成のテストで作った初期キャラとして《始まりの町》に降り立った彼は、手始めに複数施設を利用した所持金増殖の裏技を使……おうとするが、既にそのバグは修正済み。

 気を取り直し、本来は特殊な鍵か、高レベルの〘盗賊〙系ジョブが覚えるスキルがないと入れない隠しエリアに入る裏技を使……おうとするが、やはり修正済み。

 プレイヤーに有利になるバグは全て修正され、逆にそうでないバグ──設定ミスによる強敵や無意味なアイテム、サブイベントが進行不可になる選択肢などは、(対応優先度を最下位にしていたため)全て放置されている。


 システム面は知り尽くしていても、プレイヤーとしての経験はない中、バグ利用すらできない状況。

 現地の住民すら理不尽に感じ、「悪魔の仕業」と恐れるバグの数々。

 それでも、グラフィックと声優にだけは金をかけたこの世界は、魅力的であったのだ。


 テキスト通りの効果が反映されない地雷スキルを避け、名前と性能が一致しない装備を有効活用して。

 転生して半年が経ち、相応の実力と人脈を得た頃、創は新大陸発見の噂を耳にする。


 自分の知らない新エリア。

 その先に未知のバグの数々が待ち受けていることを予感しつつも、創は未知の冒険へと足を踏み出してゆく。

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