第22話 Swan Lake

 地平の淵が昇りくる太陽によって照らされる頃、セーフハウスの一室で激しい殴打の音と男の呻き声が木霊する。歯が欠けて口腔から血と共に吐き出され、コンクリートの床に散らばっていく。


 椅子に縛り付けられ、拳による原始の暴力の応酬を受けるのはロシアの特殊部隊長、ダニール・カザコフ。拳を血糊に染め上げ汗を散らしながら剥き出しの暴力性を振るうのはヨハンナ・クリーブランド。この一室で行われているのは捕えられた者と、捕らえた者のお決まりのワンシーンである。


 しかし、ヨハンナの場合少しだけ「順序」が違っていた。


「ぶほっ…、アメリカ人め、お前らは直ぐに暴力で解決しようとする。野蛮人め」


 僅かな隙を見つけて悪態をつくカザコフの腫れ上がった顔面に、すかさずヨハンナの強烈な右の拳が叩き込まれる。ヨハンナの右は一撃で鼻をへし折り、顎を砕く程の威力だが、カザコフが悪態をつけている辺り手加減をしている様子であった。


「げほっ! おい、アメリカ人…! せめて、せめて何を聞きたいのか質問してから殴ったらどうだ!?」


「あ? あぁ、そうだな、すっかり忘れてた。ちょっと楽しくなっちゃって」


 言われて初めてヨハンナは尋問目的でカザコフを縛り付けていたのを思い出し、バケツに溜めた水でタオルを濡らして顔や腕に付着した血を拭き取る。


「ってもな、どうせお前、私が何聞いたって喋らんだろう。だから尋問その物が無駄だと思ってな、ならせめて少しぐらいストレス発散に付き合ってほしくてな」


「質の悪い女だな貴様、行き遅れて後で焦る姿が目に浮かぶぞ」


「残念、間に合ってるんだ」


 ヨハンナは簡素な止血だけを済ませたカザコフの撃ち抜かれた膝を踏みつけ体重を掛ける。乾いて赤黒くなった血がべったりと張り付く包帯にじわりと鮮血が滲み出し、カザコフは痛みに顔を歪ませた。


 特殊部隊経験者であっても、人間という物は度を越した痛みに耐えられるようには出来ていない。苦痛に顔を歪めるのは本能で、反射的な反応であり、痛みを感じるのは弱さの証明などではない。顔色一つ変えない者は人体が自身に与える防衛機能を無くしている者に他ならず、痛みと言う危険からの逃避のための重要なセンサーを喪失した者は強さを手にしたのではなく、唯々死に近づいているだけである。


 痛みを用いた拷問や尋問は、その痛みをどのようにして最大限、効率的に与えるかがキモであり、過小であれば意味がなく、過剰であれば気絶か、最悪ショックで殺してしまう。だが、当然だがヨハンナにそんな事を気にしたり、加減をするような技量も考えも無かった。唯々無秩序に、自分の好き放題に苦痛を与えているだけの、いわばやり口としては外道である。


 しかし痛みを用いた拷問は、痛みへの逃避から正確性に乏しい情報を引き出してしまう恐れもあり、まして訓練を積んだ相手には効果は限定的な物となってくる。にも拘らずヨハンナが苦痛を与えるのは、ひとえに自身の憂さ晴らしに他ならなかった。


「まぁ、良い。じゃ聞くが、お前の所属部隊と、目的、仲間の数、拠点、装備、全部吐いてもらおうか」


 お決まりの内容、自身ですら幾度となく問われ、問うた文言を投げかければ、反応を見せないカザコフに対して幾度吐いたか分からぬ溜息を一つ漏らす。


「喋らんよな、普通は。だがなあ、こっちとしちゃグアンタナモにご招待してプロとお喋りさせたっていいんだぜ。奴らラテン野郎とアラブ野郎ばかりの相手で退屈してるだろうから、ロシア人相手にするったら飛んで喜ぶだろうぜ」


「ふん、お決まりだな。そうやって恐怖をちらつかせる。そんな物で屈するとでも? 浅はかな」


 口内に溜まった血を床に掃き捨て、ヨハンナ――もしくはアメリカ人全体――をあざ笑うカザコフに対し、ヨハンナは不敵な笑みを向ける。


「なあ、アメリカ国籍に興味はないかい?」


 ぐい と鼻と鼻が触れそうな程に顔を寄せたヨハンナは、口角を目いっぱい上げて下卑な笑みを浮かべたままそう告げた。




「済んだ?」


 尋問部屋から出てきたヨハンナに、コーヒーカップを差し出しながらサキが問う。


「まぁな」


「随分痛めつけたようだけど、そんなので『折れた』の?」


「いやいや、痛めつけたのはほんの挨拶代わりさ。一番効くのはな、『祖国のお友達』さ」


 サキは少し気になって、尋問部屋の中を覗いてみると、そこには心底後悔と自責の念に駆られながらも、それ以外に選択肢が無かったんだと自身に言い聞かせるように貧乏ゆすりをして、椅子を揺らすカザコフの姿があった。


 ヨハンナはカザコフにSビザをちらつかせ、グアンタナモに一時収監しお決まりの尋問ごっこを挟んだ後、承認保護プログラムでカザコフを保護させ、ニューヨークかDCの一等地にでも部屋を用意し、合衆国の人間として第二の人生を歩ませてやろうとしたのだ。勿論費用は全てオーランドの職場、中央情報局が負担する。しかし、得られる情報の価値からすれば何程の物でもない。ましてオーランドにしてみればただ書類仕事が少し増えるだけの事である。


 当然だがカザコフの新居は監視付き、行動は逐一報告され、トイレで用を足す姿すら見張られる。裏を返せばそれは常に身の安全を保障されている事に他ならないのであるが、それはあくまでもカザコフの情報に価値がある間の話、そしてその取引が真の物であった場合の話である。


 やろうと思いさえすれば、形式だけで承認保護プログラムに乗っ取って書類を作り、カザコフを米国住まいにする事は可能なのだ。だがそこからの保護は見せ掛けだけ、実質フリーパスで『お友達』の訪問を可能にする事もできる。カザコフにとってはそれが一番恐ろしいのだ。


 ロシアに限らず旧共産圏の裏切り者に対する報復は苛烈を極める。ひき逃げやヒットマンによる銃殺や、自殺に見せかけた処理方法はまだ穏便な方で、毒やガス銃を使った処理方法は死ぬまで酷く苦痛を伴い、死体の凄惨さからその道に触れる者にとっては恐怖の対象であった。


 少し頭を使えば、例え偽りの保護の下で監視の目が無いのを良い事に、祖国に連絡を取って自らの置かれた現状と、それを利用した新しい活動を始める事も出来ただろう。しかし、その考えを素直にカザコフの祖国が信じるかは別の話である。一度敵の手に落ち、ブラックサイトへ移送され、その後身分を変えて新しい人生を歩み始めた人間が、本当に祖国に対して一切の害を及ぼさず、背信のそぶりを見せなかったと言えるだろうか。


 この段階でライ―サ率いる別動班が突入してきて、カザコフを救い出して見せたならば話は変わるだろうが、その気配は一切なく、カザコフの部隊全員が装備していたGPSや、電波を発する機器は全て襲撃を掛けたあの場で無力化されている。つまり、部隊全員神隠しに遭い行方は掴めない状態である以上、救出は絶望的、捕まった段階でカザコフからの情報の漏洩と言うリスクは不可避の物となっていた。最早カザコフに選択肢はなく、黙して祖国に忠義を果たしながらも仲間に殺されるか、背信と言う枷を背負い、暗殺の恐怖に怯え、自責の念に駆られながら別人として生き続けるかの二択しかなかったのである。


 それ以外の選択肢と言えば、異常な暴力性を備えた女狐に面白半分に生きたままバラバラにされて殺されるかであった。ある意味ではそれが最もマシな選択肢ではあるが、それがカザコフを利するという事を重々承知しているヨハンナは、絶対にそれだけはしようとはしなかった。


「相変わらず趣味と性格が悪い」


「そんな私についてくるお前はもっと趣味が悪いって事になるぜ」


 ヨハンナは受け取ったコーヒーを啜りながらソファに寝転がり、肘掛けに足を乗せてひと眠りの姿勢を取る。これから眠ろうとするのにコーヒーを飲むというのは些か真逆の行動ともいえるが、ヨハンナはコーヒーに含有されるカフェインで眠気が飛ぶ体質ではなく、それでなくとも好きな時に眠る事が出来る為、一々その程度の事を気にする必要が無かった。


「報告しなくていいの」


「私がいちいち言わんでも、奴に聞きゃあ勝手にゲロるぜ。お高く留まったエリート様は、一度へし折ってやりゃあ脆いモンさ。じゃ、おやすみ」


 ヨハンナが目を閉じ、寝息を立て始めたとほぼ同時に外回りを終えたベルトットが入室し、寝息を立てるヨハンナとナイフの手入れをするサキとを見やる。


「一時休憩か?」


「済んだらしいよ」


「なぜ報告しない」


「直接聞いた方が早いって。お喋り人形にはしたらしいよ」


 いい加減な様子の二人に溜息をつき、ベルトットはいそいそとマヌエルを呼びに部屋を出て行った。






「この国は未だ混迷の中にある。我々を取り巻く周辺諸国との関係は未だ不安定で、かつ、国内には数々の不安の種を抱えている。これは否定しようのない事実だ。今回、命を落としたマタンサス州副知事、アウグスト・ハビエル・リベジェス氏がその尊い命を犠牲にした事で証明されている。故に我々は―――」


 日が高く昇ったマタンサスはサン・カルロス墓地。特設された演説台のスピーカーから大統領の声が大音響で響き渡る。皺の深さが目立つ顔に見合った年老いたその声は、しかし民主革命によって共産・社会主義を打倒し、新たな国を牽引するに足る力強さを秘めていた。


 数日前、反体制ゲリラによって暗殺されたマタンサス州副知事の葬儀は同じくマタンサス州の州都、マタンサス市内で大々的に執り行われていた。予定の合う国内の有力者が集い、大統領も参列する葬儀はテロを警戒し厳戒態勢が敷かれていたが、期せずして同州内のゲリラ勢力が駆逐された事によって葬儀はつつがなく進行していた。


 当然大統領が移動するならばその警護は親衛隊が務める。こうも大々的な行事ともなれば、組織の長たるドロテオが供をしない訳にはいかず、なるべく尻をハバナのオフィスの快適な椅子にくっつけて置きたい彼も、似合わぬ神妙な表情を張り付けて会場の警備を監督していた。


「異状ないか」


「は、現在のところ何も。大佐殿はステージの方に居なくてよろしいので」


「良いんだよ。いくら大統領の懐刀だと言っても、常に脇に控えているだけが仕事じゃないさ。私が傍にいた所で、事が起きた時に何が出来るかと言えば精々盾になるぐらいだ。それは別に他の者でもいい。私がやる事は他にあるのさ」


 ドロテオは軽く手を振ってその場を後にする。建前上は警備状況の確認だが、本当のところ、会場でただ生真面目な面を顔にへばりつけ、大統領の隣で直立不動を貫くだけの仕事というのが我慢ならなかっただけである。政府や憲兵隊などの高官が顔を揃えた壇上ではなく、人気のないステージ裏手側をぶらぶらと歩いているのはその為だ。


 国内メディアの目も届かない場であれば、たとえ制服のボタンを少し外していようが制帽を取っていようがお構いなしだ。しかし式典の為特別に下ろした新品の制服に皺を付けぬよう、ギクシャク歩くのは窮屈で仕方がない。たとえオフィス勤務の将校と言う立場になろうと、元々が情報組織の制服組であろうとも、ドロテオにとっては慣れない物だった。


 流石に皺だらけの制服を着用したり、だらしのない恰好こそしないが、それでも普段のドロテオは上着の裾を出したままにしていたり、腕まくりをするなど、将校にあるまじきラフな格好をしていた。


「大佐」


「ん、どうだ大尉。外周警備は新顔だろう。どんな具合だ」


 ドロテオの接近に気付いた大尉が敬礼し、ドロテオもそれに返す。楽な姿勢で懐から取り出した煙草をすすめ、二人は物陰で火をつけた。


「は、優秀であります。新たに配属された外国人の連中、隊長も部下達も、なんと言いますか、雰囲気が違います」


「雰囲気か」


「特殊部隊、とは違うのですが、部隊内の結束と言いますか。妙に距離が近いというか、自分達ですべて完結していると言いますか」


「精鋭と、いう事だろう。こんな片田舎の国で部隊に大打撃を被ったんだ。少しばかり、奴らのお偉方が本腰を上げたんだろう。なに、味方をしている内は好きにさせれば良いさ、無理に仲良くなる必要は無いがね」


『あら、私達は仲良くしたいわよ』


 唐突に投げ掛けられる言葉に、ドロテオと大尉はハッとする。聴き慣れないイタリア訛りのスペイン語、確実に外部の人間で、隠れて喫煙している所を見られ、告げ口でもされればそれはことだ。


「あーら、そんな硬くならなくてもいいわよ。別にタバコを吸うぐらい良いじゃないの」


「んん、大尉。仕事に戻れ」


 煙草の火を踏み消した大尉が一礼をして足早にその場を去り、新たに現れた二つの影にドロテオは向き合った。片方は黄色く染めた髪を手で整え、もう片方は顎を撫でながらじっくりとドロテオに近寄ってくる。SSG社の実戦部隊の隊長格を示す徽章を襟元に張り付け、怪しい笑みを崩さぬ二人を見て、大尉の言っていた「雰囲気」を感じ取る。


「タバコ、一本くださる?」


「ああ、構わないよ」


 黄色の髪の隊長に煙草を差し出し、もう片方にもと箱を向けるが、そちらは非喫煙者の様で、軽い身振りでそれを断った。その間にも二人はドロテオを値踏みするような視線を投げかけており、ドロテオはどうにも居心地が悪さを感じていた。


「急にごめんなさいね、私はルイーゼ・ピルエット。新しく配属されたSSG作戦部隊の指揮官。こちらがゾーイ・アラベスク。実戦部隊の前線指揮官。国立公園の方の事件で部隊がやられて、その代わりに派遣されたわけ。よろしくね、大佐さん」


 挨拶こそすれど握手は無し。左手は煙草で塞がり、右手は開いていたが利き手を預けるつもりがないその様子に、両名とも油断を見せるつもりはないスタンスをドロテオは読み取った。たとえ味方であろうとも、心の底から信頼して見せぬのは、戦場や、戦場の外であっても危険を潜って来た経験の表れか。


「お近づきになれて光栄だ、ピルエットさん。前の隊長とはうまくやっていたよ。少々不愛想だったが、仕事はできる方だった。貴方がた両名ともよろしくやっていきたいね」


 ルイーゼとゾーイはくすくすと笑い、「『さん』はよして」「よそよそしい名字でなく、名前で呼んで」と告げ、ドロテオの周囲をゆったりと歩きながら、更に距離を詰め、目を見据える。まるで蛇が獲物の周囲を長い身体で囲み、舌をちらつかせ睨みつけながら捕食のタイミングを窺うかの如く。


「よろしくやっていきたい、と言うのは…私達も同じよ」

「アナタ達親衛隊が、ハバナ近郊以外でも部隊を動かしている事は把握しているわ。本社から受けた私達の任務はゲリラ部隊の殲滅。首都の治安維持、そして行方不明の部隊員の捜索。その為にはアナタたち親衛隊の協力も不可欠なの」


 二人は左右から囁くような声で語り掛け、その怖気がするような声の質感に、汗が滲むような気温の中に在ってドロテオは身震いするような寒気を感じていた。


「協力、とは」


「貴方達親衛隊が国内に独自の情報ネットワークを築きつつあるのは私達も知っているわ」

「それを少しだけ、私達にも使わせてほしいの。他意は無いわ、あくまで仕事の為。内政に干渉しようなんて気は一切ないわ。言葉で言って信じろなんて難しいでしょうけど」


「…検討しよう。今すぐに、という訳にはね」


「えぇ勿論、良い返事を、期待しているわよ」

「それじゃあまた。あ、コレ私達の番号。大事にしてね。もしかしたら、貴方の探し物、協力できるかもしれないわ」


 制服の胸ポケットに名刺をヌルリと忍ばせ、ルイーゼとゾーイはランウェイを歩くような足取りでその場を去って行った。


「大佐、演説が終わりました。30分後に会食へ移動です。準備を。…アレが、新顔のトップで?」


 入れ替わるように現れた側近の少佐が次の予定を伝え、去って行く二つの背中を見てドロテオに問う。背筋を這う様な不快な寒気が抜けきらないドロテオは、顎を擦りながら渡された名刺に目を通し、丁寧な造りと印刷ながら、何処か奇妙な色気を醸し出すそれに顔を顰める。


「あぁそうだ少佐。どうにも、あの手の輩を相手するのは初めてだ。どう対応して良いか分からん」


「傭兵部隊の長でしょう、それなら何度も」


「そういう意味じゃない。まったく…アレで男なのか?」




「なかなか良い男だったじゃない? 彼、エリートって風貌が堪らないわ」


「あらそう? 私はもう少し熟成されていた方が好みだけれど。もう何年か、それか10年くらいかしらね、揉まれれば良い味出すわよ」


 歩きながら話すルイーゼとゾーイはドロテオの容姿を思い出しながら目を細め、舌で唇を潤わす。一先ずは協力すべき組織の長に顔合わせを済ませた「彼女」達は、次の目的地へ向かう為に駐車している車列へと足早に向かう。大統領の演説も、見知らぬ副知事の葬儀も興味は無く、まして参列する意味合いも持ちはしない。


不死隊アタナトイ!」


 ゾーイの呼びかけに応じて二十数名の部下達が整列する。一糸乱れぬ隊列と、黒色で揃えられた装備。顔はバラクラバで隠され、僅かに覗く瞳は皆一様に底無し沼の様な重い眼力を湛えていた。


「人生って上手く行かない物よね」

「そこが面白い所ではあるけれど」


「軟弱なゲリラ共や、やる気のない弱小軍隊の相手なんてもうウンザリ」

「ね?」


 列の前を練り歩く二人の部隊長を、不死隊のメンバーはピクリとも動かずに瞳で追う。


「貴方達、コートダジュールでの屈辱を忘れてはいないわよね」

「頭の固い上層部を騙してまでこんな場所に来た意味、分かっているわよね」


 語り掛ける声にも応えない。しかし沈黙するその瞳の奥にはどす黒い復讐心にも似た熱が籠っており、それが彼らの答えであった。


「この地域での部隊ネットワークに侵入の痕跡があったわ。上手く痕跡を消しているけど、侵入中の動向を運良くキャッチできたの。私達をフランス南部で出し抜いたあのシグネチャーよ」


「ゲリラの掃討も、この国で起こりつつある何かも、全て副次目標。標的は二つ、ただ二つ!」


「『狐』と『鬼』、この二匹!」


「死神野郎共、待ちに待った狩りの時間よ。搭乗!」


 黒衣の死神たちは、ブーツを鳴らして一斉に駆け出し停車してある装甲四駆に乗り込んでいく。ルイーゼはハンカチでスキンヘッドの頭頂から流れる汗を拭い、ゾーイは二日目の髭を ジョリ と一撫でしてから四駆に乗り込んだ。

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