第6話 見える



女の体にくさりが巻き付き、女の動きを止めていた。


女は何が何だかわからないという顔をしている、状況を上手く飲み込めていないのは私も同じだ。


「こはくちゃんもう体調は大丈夫?」


『ぁ...湊くん』


『あの、そこの女の人って...見えてたりする?』


私に視えているものが他の人にも見えているのか疑問に思って聞いてみた。


「女の人?どこにいるの?」


(湊くんには見えてない...?)


見えてないんだとしたら、私がさっき言ったことって頭おかしい奴の発言じゃない?

どうしよう、湊くんにまで信用されなくなったら私......


誤魔化さないと、この部屋からも早く出なきゃあの女に殺される



『ごめん、寝ぼけてたみたい』


私は湊くんに微笑みかけたが、心の中では不安が渦巻いていた。



『吐いたせいでお腹空いちゃった』


「ご飯食べる?俺も今から食べようと思ってたんだけど」


『食べるー』


私と湊くんは部屋から出ようとする

すると、女が声を上げた。



「あ゙かり゙ぃ゙...っ!」


「い゙っ...」


女に絞められた首が痛み出した。息ができないほどの痛みだ。


『ゔ...ぁ...』


「こはくちゃんその首...」



湊くんの手が私の首に触れる、青白い光が私の首に広がっていった。


首の痛みが和らいでいく。


「ごめん、気づくの遅くて...痛かったよね」


「で、こはくちゃんの首にあとつけたのってアイツだよね?」


湊くんが女の人を見る。


『え、見えてるの?!』


「うん、見えてるよ」


『なんで、さっきは見えないふりしたの...?』


そう言うと、湊くんの目が泳ぎ始めた


「あーそれはまぁ、色々事情があって」


『事情って?』


「...後で話すよ」


「その前に、そこの妖怪ようかいを何とかしないと」


妖怪ようかい...?』



...ギチギチギチッ


女の体に巻きついていた鎖がどんどん女を締めつけていく


「あ゙あ゙...!」


女の顔が苦痛で歪む



「貴様...はらだな?」


「そうだけど、それが何?」


「それより、この子にかけた呪い解いてくれない?解かないならお前をはらう」


「黙れ、私はに用がある。邪魔をするな小僧!」


「あかり?」


(あかりって私のお母さんのこと...?)


「私の邪魔をしなければ、貴様には手を出さない」



「⋯もしかして、あかりさんに封印されてた妖怪?」


女はその言葉を聞いた瞬間、目に狂気の光を宿らせ、殺意がにじみ出るような表情を浮かべた。


「はぁ...あかりさんは11年前に亡くなってる、今お前が呪っている子はあかりさんじゃない」

「目の色と、霊力でわかるでしょ」


女が私の目をじっと見つめる




「あかりが死んだ···?」


「は、ははっ⋯」

女の口元から笑みがこぼれた。


「あっははははっ!」


その笑いには冷たさが混じっていた。彼女はあかりの死を喜んでいたのだ。


「そうか、あの女は死んだのか⋯。まあ、死んで当然だよな。ざまぁみろ!!」


『何が面白くて笑ってるの?死んで当然...?』


『なにそれ意味わかんないんだけど』


私の内に、深い憎悪の感情が湧き上がってきた。


「は?」



私にはお母さんとの、思い出や記憶が全くない。顔だって写真でしか見たことがないし、お母さんがどんな人だったのかとか、私は何も知らない。


でも、思い出や記憶がなくたって私にとってあかりお母さんは私の母親であり、大切な存在だ。


大切な人の‪”‬死‪”‬を喜ばれるのは胸糞悪い。


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