王都へ向けて
だる。
と、思うのだが、行かないわけにはいかない。
朝食を摂ってからジェラール様と王都へ向けて出立。
授与式は明日の午前中なので、今日は王都のマティアス公爵家邸に泊まることになっている。
王都のマティアス公爵家邸にはジェラール様のご両親もいるので、お会いするのは一ヶ月ぶりぐらいだろうか。
「ジェラール様、体調は――」
大丈夫ですか、と聞こうとしたら、ジェラール様が私の肩にことん、と頭を乗せてきた?
は? 心臓が破裂する?
思わず無意識に心臓を強化してしまった。
だが、よく見ればスースーと愛らしい寝息。
は? 天使?
そんな天使の寝顔に鼻血を噴き出しそうになったので、鼻の身体強化を強めた。
ジェラール様との生活ですっかり慣れてしまった鼻の身体強化。
日頃の鍛練の成果だな。ふふ……。
「ふぅーーーーーー」
眼球強化。
脳内に完全記憶!
か! わ! い! い!
最近は一緒に寝てはいるのだが、馬車に揺られて寝てしまって私の肩に頭を乗せてスヤスヤ寝ちゃうなんて天使すぎる!
こんなに可愛い生き物が存在していいのか?
存在していてくださりありがとうございます!
「――グレトゥーロ王国……王城、三月、八日……午後、一時、八分……」
「え?」
と、思っていたら、ジェラール様がなんだか不思議な寝言を呟き始めた。
ちらりとその顔を見ると、ついに日時まで呟き始める。
なんだ?
「サタンクラス覚醒……瘴気が溢れて……大型ドラゴンが、城を、破壊。王と、王妃、第一王子妃、第二王子、第二王子妃が……瓦礫に潰され、多数の騎士を巻き込み……死亡……」
「……っ」
「大型ドラゴン……ダークストームドラゴン……、王城を破壊後……王都を破壊……大多数の国民が犠牲……。王都が破壊されたことで……二ヶ月後に帝国が辺境を、攻撃……占拠……」
待て、待て……待て!
これ、もしかしなくても『予言』ではないか!?
プロフェットクラスは『予言』と『予知夢』を語り、国を厄災から救う――と、言われている。
だが、ジェラール様は体調の影響で今まで一度も『予言』も『予知夢』もなかったと言っていた。
でも、違ったのだ。
ジェラール様はきっと誰も注意を払わなかった
「半年後……生き残った第一王子コーネリスが、王位に就き……帝国を押し返し……戦後処理に……入る。被害は、甚大で……王国は……ゆるやかな、終焉に向かうであろう……」
そんな……!
どうしたら……っていうか、三月八日って、明日じゃないか!?
つまり明日の午後一時にサタンクラスが覚醒し、振り撒いた瘴気でドラゴンが生まれる。
生まれたドラゴンにより王族と王城、騎士は壊滅し、ドラゴンは王都に放たれる、ということ?
いや、まずは公爵様たちにご相談して――!
「……いやだ……たくさん、ひとが、しぬ……いや……フォリシア……たす、けて……」
「……!」
そう言って、涙を流すジェラール様。
……そうだ、プロフェットクラスは『予言』や『予知夢』で国を救う存在。
ジェラール様が私の前でだけ予言をしてくださったのなら、それは私にその未来を回避する力があるということではないか?
「もちろんです。ジェラール様の代わりに私が厄災を討伐してご覧に入れましょう。大船に乗ったつもりで、どんと構えていてくださいね」
「…………」
涙を拭ってやると、さらに頭がずれて私の膝の上にこてん、と倒れ込んできた。
アリよりのアリ……多幸。
「――と、いうことがありました」
「なんということか……」
ジェラール様は公爵邸に着いたあたも目を覚ますことはなく、私がお姫様抱っこで二階の寝室に寝かせてきた。
その後食堂でジェラール様のご両親に、馬車での出来事を話す。
私の話にご両親は顔色を悪くして、顔を見合う。
「発端となるのは、覚醒したサタンクラスの者らしいのです。しかし、サタンクラスの者は正しく働いているはず。内に邪念を溜め込んだサタンクラスは、セイントクラスの者に定期的に浄化されているはずですよね」
「ええ……でも、実を言うと一人心当たりがあるの」
「え?」
城の中で働くサタンクラスで、雑念を邪念になるまで溜め込む者?
その者に公爵ご夫婦は心当たりがある、と?
どういうことですか、と聞くと、公爵様が渋々と話し始めた。
「ジェラールの元婚約者、マリーリリー様だ」
「え? マリーリリー様はウィザードクラスという話では……」
「それは噂よ。誰が流したのかはわからないけれど、少なくとも王族は公表もしておられないしウィザードとの噂も流していないの。公開しない理由はお兄様お二人がキングクラスだったから、比べられないためもお聞きしているわ」
「あ……」
確かにお兄様お二人は『王のカリスマ』とも言われるキングクラス。
それはもう、他国から羨まれるほど貴重なクラスだ。
それが王族から生まれた。
そんな兄たちのあとに、サタンクラスの妹……。
確かに知られれば色々言われる、だろうなぁ。
「陛下もお妃殿下も兄君たちも、マリーリリー様が心を病まぬように人道と法を重点的に教育なさり、兄君たちもご自身らと比べられぬようにと会うことを控え、課題を果たせたらご両親揃って褒めてたっぷり甘やかすようにしてきたと……。そして、彼女にジェラールの体質を支えてもらい、自己肯定感を高めてサタンクラスとして正しい生き方をしてもらいたいと……」
「それで、ジェラール様とマリーリリー様は婚約されていたのですね……」
「……それがあんなことになるなんて……」
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