勲章とか別にいらない人です


「それでですね……あの、来週なのですが……王都でフォリシアが討伐した盗賊について、懸賞がかけられていたそうです」

「ああ、アレらに、ですか?」

「はい。辺境の方で村が十以上潰されていて、騎士団の派遣が決まっていたとのことです。かなり大きな盗賊団で、フォリシアが倒したのは先行していた主戦力部隊だったようで……懸賞金と報償金、加えて勲章を与えるとの連絡が来ました」

「え? いらないですね……?」

「あの、でも、一応国からの評価なので戴かないと国の体面がちょっと、なので……もらってあげて欲しいです」

「そうなのですね……そういえばそんなようなことを色々言われてきましたね」


 騎士団にいた頃は、そういうものが家の地位向上やホワイトローズの立ち上げに役立ったけれど……今は別にいらないと思うのだが。

 と、思っていたらルビが「マティアス公爵家の功績になりますね」と呟いたのが聞こえた。

 ……なるほどな。


「ジェラール様の手柄となるのでしたら、我慢して戴くことにいたします」

「え? う、うーん?」

「フォリシア様、例の件も」

「そうだ!」


 席に座り、ジェラール様の話が終わるとすが朝食がテーブルに並べられ始めた。

 まずはスープとサラダを食べながら、ルビの呟きに顔を上げる。


「あの、体調は……?」

「はい、だいぶ。マルセルにはまだ様子を見た方がいいと言われているんですが……」

「来週王都に行くのであれば、もっと安定させておくべきです」

「確かにそうですね」

「!?」


 ルビ!? お前私の味方ではないのか!?

 は!? 『フォリシア様の侍女としてわたくしも今のフォリシア様をジェラール様と同じ部屋にするのは危険にしか感じないのですよね、と、申し上げました』……だと!?

 それでも私の侍女か!?


「あの、お部屋のことなのですが」


 クソ、ルビが裏切った。

 手のひら返しがハーピーのトルネードアタック並みだな!

 こうなったら自分でなんとかするしかない!


「お部屋に、なにか不備がありましたか?」

「いえ! そうではなく……その、夫婦になって二週は経つのに、いまだに部屋が違うというのは……その……」

「あ……」


 ほわ、とジェラール様の表情がゆるんだ。

 世界一可愛くないか?

 こんな可愛い成人男性がいていいのか?

 奇跡の存在すぎないか?

 尊……。


「そ、そうですよね。ふふ、ふ、ふ、ふうふ、ですものね」


 あわあわ、と可愛らしくて照れておられるジェラール様。

 こんな成人男性がこの世に存在する、のか。

 こんな、可愛い、成人男性が、存在していいのか。

 合法ショタが、この世に……本当に存在するという……。


「えっと、あの、フォリシア様が、よろしいのであれば……今夜からお部屋を同じにしても……僕は……」

「「いいのですか!?」」


 おい、なんで私たちの部屋の話をお前が嫌そうにする、マルセル!

 ジェラール様がいいというのなら!

 もはやそれは同意! 言質! 合意! 合法!

 はははは!

 聴こえる、聴こえるぞ!

 マルセルの『鬼の首取ったような顔で大喜びしやがって』という不満の声が!


「でも、あの、僕は本当に、その、自信はないんですけど」

「私がすべてこなしてご覧にいれますので! ジェラール様はなにもなさらなくて大丈夫です!」

「ジェラール様、やはりまだ早いと思います! 邪念が……じゃ、なくて……体調がよくなったばかりなのですよ!? ここでまた無理をして元通りになってしまっては、王都へ行くのに支障が出ます!」


 お、おのれマルセル……!

 ジェラール様がいいと言っているのにまだ反対するというのか!

 言ってることは至極がもっともな気がするけれど!


「マルセルがいてくれるから、体調が悪くなっても大丈夫」

「ぐっ」


 はい、天使〜!

 もうそんなこと言われたらぐうの音も出ないなぁー?

 ふはははははは!


「でも、あの、僕も男なので、頑張ります、ね」


 そう言って私に組み敷かれる運命なのがショタというもの。

 でもその心意気があるのとないのでは私の気合に大きく影響があるんです。

 そんなことも知らないあたりやはり天然物は違うな……。

 とりあえず潤滑油を多めに用意して持ち込んでおこう。

 痛みなど与えず、快楽だけをたっぷりと与えてゆっくりと休んでいただく。

 しょせん運動に過ぎないと思わせ、程よい汗をかいてもらい、安心感を与えて明日も明後日もとりあえず一週間くらい毎日できるようにはあはあはあはあはあ……!


「俺は反対です! ジェラール様! この女の雑念、もはや邪念ですよ!」


 バラすなーーーー!


「じゃねん……?」

「ジェラール様に不埒なことを考えているんです! 朝っぱらから!」


 ぐぅ!

 それは本当にその通り。

 言い逃れができない真実!


「ええと、でも今はそういう話をしてしまいましたし……」

「ジェラール様の体調を優先できない女など、本当に妻として役に立つとは思えません!」

「わ、私はジェラール様の妻として、妻の役割をまっとうするつもりだ!」

「上等だ! それなら今宵、立会人を置いても問題はないということだな!」

「立会人……!?」


 立会人:この場合、性交が間違いなく行われるかどうかを監視する役割の人のこと。

 基本的に閉経した身内女性が立ち会うのが一般的。

 必要ならば指南も行い、子作りで必ず相手の子であると証言できる証人でもある。


「……! のっ………………臨むところだ!」

「言ったな? 用意しておくから覚悟しろよ……?」


 ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る