第12話 始まりは穏やかに
「初めての人もそうでない人もこんにちは!今日は私の配信を視に来てくれてありがとうございます」
《レナちゃんきたあああ!!》
《待ってました!!》
《体はもう大丈夫ですか?》
《心配してんたんだけど、元気そうでよかった》
今日はとても特別な日。ワンダラーエンカウントがあったあの日から一カ月が経った。
「皆さん心配してくれてありがとうございます。でもこの通り元気になりました!」
《元気になったならそれでいいよ》
《謝罪配信以降全く音沙汰なかったから心配してた》
《やっぱりまたダンジョン配信するの?》
《あんな目に遭ってもまだ配信するとか良い根性してるわ》
《売名に成功した今配信しなくてどうするのって話。むしろ遅い》
《売名ってなんだよ。あんなの不可抗力だろ》
《むしろレナちゃんの名前が売れてくれて俺は嬉しいけどな》
ワンダラーエンカウントの後、無理を言って一度だけ謝罪配信のようなものをして、今後どうするかは体が癒えた時に報告しますと伝えた。そして今日この配信で、私が今後どうするかをみんなに伝える。
「謝罪配信の時に伝えた通り、この配信は、私が今後どうするかを皆さんにお伝えするための配信になります」
《探索者止めちゃうの?》
《謝罪配信の時は続けたい気持ちはあるって言ってたけど》
《あんな目に遭ったんだから探索者続けるなんて無理じゃね?》
《探索者は止めても配信自体は続けて欲しいな》
「まずこの場で改めて、私を救助してくださった探索者協会の方、探索者の方に深くお礼を申し上げます。ダンジョン内で起きた事は自己責任とはいえ、迅速な救助をしてくださったお陰で、後遺症もなく皆さんに無事元気な姿をお見せする事が叶いました。本当に有難うございました」
《たしかに救助早かった》
《ワンダラーが倒されてから5分掛からなかったよな》
《想像以上にワラワラ突入してきて笑ったわ》
《明らかに場違いな人もチラホラいたよね》
《あの大群はレナちゃん救助というよりは、ワンダラー倒した最強仮面を確保する為の人員を動員できるだけ動員したんだと思う》
《残ってたギガントゴーレムの破片をせっせと集めてる奴多くて笑えたわ》
《全世界生配信中に堂々と公式火事場泥棒する度胸は認めたい》
《あの場に最強仮面がいれば手を出さなかったろうけどな。とっくに消えてたし、ドロップ品は早い者勝ちよ》
《ワンダラー倒した後トンズラしてたし、わざわざ権利の主張はしないだろうな》
《最強仮面w安直すぎるネーミングセンスだけど実際最強仮面だから困る》
「そして見て下さっているかは分かりませんが…呼び方は最強仮面?さんで良いんでしょうか。私を助けて下さり本当にありがとうございました。あなたのお陰で私は生きています。本当は直接会ってお礼をしたいのですが、ひとまずこの場でお礼申し上げます」
《大勢決まってたけど、当事者がこう呼ぶならもう最強仮面で呼び名確定ですわ》
《道化の王とか†終焉を纏いし漆黒の死神†とか候補としてはあったけど、今ここからは最強仮面だぞ》
《最強仮面さんありがとうごいます!》
《最強仮面最強!最強仮面最強!!》
《最強仮面最強!最強仮面最強!!》
《最強仮面なのか仮面最強なのか分からなくなってくる》
《万魔狂信者に続く新たな凶信者が産まれた瞬間である。最強仮面の罪は重い》
《実際最強だし。他にワンダラー倒せるような奴って存在する?》
《S級なら倒せるんじゃないの?なお遭遇できるかは不明》
《結局最強仮面はS級じゃなかったしな》
「もし最強仮面さんを見かけた方がおられたら、是非私に連絡お願いします!直接お礼をしたいので!私に出来る事なら何でもしちゃいますから!!」
《直接お礼…ゴクリ》
《ん?今何でもするって言った?》
《こんな美少女の何でもする発言。切り抜き余裕でした!》
《最強仮面は今この配信を見てる男全員敵に回したからな》
《最低仮面最低!最低仮面最低!!》
《一瞬にして最強から最低へ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね》
《でも最強仮面って男か女か分からないんだろ?》
《え?つまりレナちゃんと最強仮面ちゃんが禁断の関係になる可能性があるって事?》
《正体が分からない弊害だな。本人がコメントするわけもないし》
《レナちゃんはどっちだと思う?》
「私ですか?う~ん、男の人でも女の人でも感謝の気持ちは変わりませんけど…どちらかというと男の人、ですかね?すぐに気絶しちゃいましたけど、そんな感じはしました」
《はい終了、この配信終了だから。お疲れさまでした》
《レナちゃんには失望しました、ファン止めます》
《ちょっと助けられたくらいで好意持つとか、チョロインすぎない?失望したわ》
《レナちゃんは身近に異性がいないのかな?僕が相手してあげようか?》
《仮面で顔を隠してる卑怯者はレナちゃんに相応しくないかな》
《おら仮面野郎、ビビッてないなら出てこいや、誰がレナちゃんに相応しいか俺が直接教えてやんよ》
《ガチ恋勢が発狂しててワロタ》
《心配しなくても指を咥えて配信見てる事しかできなかったお前らじゃ相手になんねえよww》
《匿名コメントでイキってるガチ恋勢vsワンダラーを倒して死ぬ寸前だったレナちゃんを助けた最強仮面vsダーク〇イ、ファイッ!!》
《ダー〇ライを襲う謂われなき風評被害》
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「―――というわけでですね。別に最強仮面さんが好きとか恋愛感情を持っているわけではなくて、いや好きかどうかでいったら大好きなんですけど!純粋に死にそうだった私を助けてくれたことに感謝してるから、その気持ちは配信越しで伝えるだけじゃ伝えきれないので、一度会ってお話したいなって思ってるだけなんです!」
《ガチ恋勢息してるか?》
《ユニコーン厨のユニコーンがポッキリ折られてワロタ》
《推しからの直接死刑宣告受けた気分教えてくれないか?》
《それよりこのレナちゃんどうすんの?これから先大丈夫?最強仮面は責任取らなきゃ駄目なんじゃ?》
《ほんそれ。最強仮面は助けた責任取るべき。真面目な話、あんな助け方されたら惚れて当たり前だし、恋愛観とか色々拗れるわ》
《うーん、でもガチ恋勢も立派なリスナーだからなぁ。まとめて消えたら登録人数結構減るんじゃない?》
《いうて騒動の後に倍に増えてんだぞ?増えた奴らはレナちゃんの必死な姿に感銘受けて応援したくて登録した奴も多いと思うぞ》
《騒動を生配信で見てレナちゃん頑張れって登録した者です》
《最強仮面×レナちゃんとか、正に運命だろ。これに文句言ってる奴は何もわかってないわ》
《いずれにせよ最強仮面が公式見解出さない以上、ここで言い合っても意味がない》
「とりあえず、まだまだ話し足りないですけど時間がいくらあっても足りないので、最強仮面さんの話は一旦終わらせたいと思います」
《わろた》
《今度最強仮面の雑談枠取ろうぜ》
《死体に鞭打ってやるなよ》
「この配信の最大の目的は、私の今後について、皆さんにお話しする事です」
《ようやくか》
《待ってました!》
《ここにいる皆はそれが知りたくて集まってるわけだしね》
「…ワンダラーエンカウントの後、お父さんやお母さん、それに大好きな友達にも一杯泣かれて、怒られました」
「私もこれからどうするのか、沢山悩みました。探索者が自己責任とはいえ、奇跡的に命を拾ったのに、まだ探索者を続けるのか、みんなにもっと迷惑を掛けてまで続ける意味はあるんだろうかって」
《…》
《まぁ、そうなるよな》
《救われた命をまた投げ出すのは不義理だよなぁ》
「探索者を止めようかと思った時もありました…このまま探索者を止めて、ダンジョン配信を止めたら、私はどうなるんだろうなって、想像してみたんです。友達と学校に行って、一緒に勉強したり遊んだりして、穏やかだけど幸せな毎日を送るんだろうなって思いました」
《穏やかかはともかく、毎日飽きない日々にはなりそうだよね》
《ワンダラーからの生存者ってレッテルは一生ついて回るだろうな》
《わざわざダンジョン配信なんてしなくても、十分食っていけそうではある》
《レナちゃん美人だし、騒動での話題性込みで就職先とか困らなさそう》
《C級探索者だしな。探協とか好条件出して囲いにきそう》
「でも、そこには探索者をしていた時に感じてたドキドキやワクワクはなかったんです」
《お?》
《流れ変わったな》
《まさか!?》
「一杯悩みました。沢山考えました。ワンダラーエンカウントの時は本当に怖かったし、死の恐怖を味わいました…これは完全に私の我儘で、身勝手なエゴです。なんて勝手な奴なんだって嫌われても仕方ありません。でも」
「私は探索者を続けます!正直怖いです。お父さんやお母さんには猛反対されました。でもこれだけは譲れません。今の私のたった一つの願望、原動力。最強仮面さんに直接会って、お礼を言うまでは。あなたのお陰で生きてますって、ここまで来れましたって言うまでは。その為にも…私は探索者を、そしてダンジョン配信を続けたいと思います」
《まじかぁ…》
《探索者続けるの?本当に?》
《続けてくれるのは嬉しいけど…でも本当に大丈夫?》
《モンスターに殺されかけたら、トラウマで逆に殺せなくなるとか結構聞くけど》
《ダンジョン配信なんてしなくたって、雑談配信とかでも俺は喜んで視に行くよ!》
《この歳で覚悟ガン決まりすぎじゃね?》
《せめてPT組んでくれたら少しは安心出来るんだけどなぁ》
《おい最強仮面、早くレナちゃんに会いに来い!間に合わなくなってもしらんぞ!》
《一人の少女の運命を狂わせた男、最強仮面。いや、こいつがいなきゃ既に終わってたんだけどさ》
「皆さん心配してくださってとても嬉しいです。でももう決めた事ですので!」
《レナちゃんが決めた事なら仕方ない》
《色々考えて出した結果なら、受け入れるしかないな》
《無理はしてほしくないけど、応援するよ》
「それでですね…ここからが本題なんですが。私も色々反省しました。正直な話、私がソロダンジョン配信をしていたのは、面白そうだなってのもあったんですけど、えへへ…その…人気が出るかなぁ、とか…そういう欲があったりしてですね…」
《なんという俗物的な発想》
《唐突なぶっちゃけ話。でも嫌いじゃない》
《ダンジョン配信する目的なんてそんなもんだろ、卑屈になる必要はない》
《レナちゃんは可愛いけど、可愛いだけでダンジョン配信見るかって言ったらなぁ》
《可愛いだけじゃ登録数増えないからな》
「それでですね。その事を正直に私の友達に言ったら、命と人気、どっちが大事なの!!って凄く怒られちゃいまして」
《当たり前》
《そりゃそうよ》
《死んだらそこで終了だからな》
「そんなわけでですね!配信中にまた危ない目に遭った時、次も何も出来ずに指を咥えて見ているだけなんて、とてもじゃないけど私には出来ない!!って言いだしまして」
《良い友達じゃん》
《映画化決定》
《俺もそんな友達欲しかった》
「私としても、これ以上迷惑は掛けたくないですし、それ以上に嬉しかったので。お父さんとお母さんも説得できましたし。なので今後、レナちゃんねるでは、私と私の友達でのPTダンジョン配信をしていきたいと思います」
《まじで!?》
《きたぁぁぁぁあああ!!!》
《ソロ卒業かぁ》
《PT結成おめでとう!》
《PT組むなら安心して見れるわ》
「それでは早速ですけど、私とPTを組んでくれる友達を紹介したいと思います!」
「やっほー!この度レナちゃんとPTを組むことになりました、アリスって言います。これからよろしくね~!」
「…レナの友達のナツキ…よろしく」
《び…び…美少女きたぁっぁあああああああ!!!》
《うぉおおおおおおお!!!美少女がめっちゃ来たんだが!!!》
《ペアPTだと思ったらまさかの3人PT!しかも全員ヤバいくらい可愛いとか一体どうなってんだ!》
《おいおい俺は夢でも見てんのか!?ここがヴァルハラか!?》
《レナちゃんのファン止めた僕ですけどたった今アリスちゃんのファンになりました!!!》
《ナツキちゃん、ちっちゃくて小動物みたいで可愛い》
《アリスちゃんがドストライクすぎて心臓がバクバクいってる》
《清楚、活発、ロリ。死角が見当たらない全てを包括するパーフェクトPT》
《ここはアイドルグループ発表会場の間違いだよな?》
《捨てる神あれば拾う神あり。むしろ捨てられて良かったまである。時代はアリスちゃんとナツキちゃんなんだよなぁ》
《ユニコーン共が一斉に息吹き返しててワロタ》
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