テレビ番組〇〇【視聴者からの情報提供欄】

テレビ番組〇〇の視聴者からの情報提供欄に投稿されたという話

―――


綾乃さんの祖母は、夢で未来の事が視えるんだ、と綾乃さんが幼い頃からずっと話をしてくれた。祖母は綾乃さんの産まれる時にも性別や時間を言い当てたり、祖父が病に倒れた時も亡くなる日を両親に伝えていたという。綾乃さんはそんな祖母を羨ましがっていたが、それを言う度に祖母は曇った笑顔を見せていた。


綾乃さんが高校生の頃。

祖母が、病にかかり入院する事になった。最初はすぐに治るという話だったが、病は悪化し、予断を許さない状況になるまでに時間はかからなかった。

お見舞いに行く度、悲しみで泣きじゃくる綾乃さんに祖母は、

「大丈夫よ。綾乃は心配しないで」

と話していた。

いつものように、綾乃さんは両親とお見舞いに来ていたのだが、

「綾乃と少し二人にして欲しい」

と祖母から両親へ頼みがあり、二人きりになる時があった。


祖母は今までに見せた事のない、哀しい表情で

「ごめんね、ごめんね」

と、ひたすら謝りながら綾乃さんへ話を始めた。


祖母が祖父と結婚したばかりの頃、二人で山に登り山菜を集めている時に、怪我をした白い野犬を発見した。

傷つき弱っている犬を見て、何だか可哀想で家に連れ帰り手当をすることにしたという。犬は回復してからも山に帰ろうとはせず、祖父母も犬が可愛くて、そのまま飼う事にしたそうだ。

実はこの犬、妊娠していたようでしばらくするとお腹が大きくなってきた。

そしてある夜、出産の兆候が見え始め、祖父母は犬に付き添っていたのだが、何だか犬の様子がおかしい。

興奮した様子で、山に向かって苦しそうな身体を引き摺りながら駆け出そうとしている。祖父母が落ち着かせようとするが、犬はまるで人間が土下座をするように、何度も何度も頭を下げてきた。

それでも必死になだめようとする祖父母に向かって犬が


「あげる」


と、ハッキリとした言葉で言い放ち、そのまま身体を引き摺りながら山に去っていったという。

それからしばらくして、祖母は時折予知夢を見るようになった。

予知夢をみている最中、夢の中で物凄い腹痛に襲われる。腹の中で腸が食い荒らされている様な我慢ならない痛みで、祖母は今も眠るのが怖いのだと話していた。



綾乃さんが

「なんでその事を今私に伝えたの?」

と祖母に聞くも、祖母は涙を流しながら

「ごめんね」

と繰り返すばかりだった。

その翌日から祖母は意識を失い、そのまま亡くなってしまった。


最近から、綾乃さんは夢で白い犬を見るようになり、眠るのが怖いのだという。


―――


この話をしてくれた方とコンタクトを取って、綾乃さんと連絡を取ることができた。取材を申し込むと

「すいません、無理なんです。私、あげないまま、終わらせます」

とだけメールが来て音信不通になってしまった。


後日、綾乃さんの知人から連絡が入った。


【綾乃は永眠しました】


詳しく聞けはしなかったのだが、死因は精神を病んでとの事。


その数日後、テレビ番組〇〇の視聴者からの情報提供欄に「わた」という名前である投稿がされていた。



あげずにいてくれて、ありがとうございます。返りました。わた




「わた」なる人物を探すも見つかっていない。番組〇〇は2000年代に終了してしまい、現在は何の手がかりも無い。


ちなみに、この山は現在私有地との事で立入禁止となっている。


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