第84話  コスタリア領都の日常13

目が覚めたらもう朝になっていたゴブ・・・


恐る恐る朝食を食べに食堂へ降りていったけどみんなそんなに怒っていなかった。

わたし用の子どもイスが無くなっていて大人用のイスにクッションが3枚重ねに縛って高さ調整してくれている


「ゴブ~」(昨日は申し訳なかったゴブ~。イスをだめにしてしまったゴブ)


「フフフ、ミセッティちゃん気にすることは無いのよ。倒れる前に浄化魔法を掛けてくれたおかげでどこも汚れていないわ。あのイスはライアー子爵が引き取りたいとおっしゃったからお渡ししたけれど・・・」


「浄化作用が付いてしまっていたからミセッティはもう座れないでしょうしね」


アイラお嬢様も全然怒っていないみたいだ、よかったゴブ~。

しかしとっさに浄化魔法を掛けてしまったがイスに浄化作用を付与してしまっていたとは・・・失敗したゴブ、自分で自分が使えないようにしてしまったゴブ。


「ゴブ」(申し訳なかったゴブ。お酒は二十歳になってからゴブ)


「20年後なんてお酒どころか自分でご飯を食べられるかも分からないじゃない?」


あはは、お嬢様は今日もつっこみの切れ味が鋭いゴブ。


「なにはともあれ、ライアー子爵は目的の虫歯の治療も出来ましたし、色々とお土産も持って帰られて大変満足されていましたから良かったです。皆さんお疲れ様でした、アイラちゃん、ミセッティもありがとうね」


「ゴブ~」(わざわざ臣下にお礼をおっしゃるなんてさすが奥方様ゴブ~)


「う~ん、虫歯の無痛治療どころか美容整形に高濃度聖水や浄化の魔道具のお土産付きですからまさに王族クラスへの過剰接待でしたよね~ホント」


ぽんこつマリーがまた余計なことを言い出したぞ。


「希少な薬草類もけっこうお渡ししていますよ。まぁ、そこはコスタリア家ととの秘密保持協定を念押しする意味合いもありそうですが」


「秘密にするっていっても社交シーズンのパーティで確実にバレるのでは?」


「分かっていませんね、そこでまわりとの差が出て驚かせるのが大きいのですよ」


「はぁ~、上級貴族って面倒ですよね~」


「マリー・・・あなたはまだ余裕でしょうけど、あと15年もすれば目を血走らせて若さの秘密を追い求める気持ちが分かってくるわよ。人の命の方が軽いぐらいに」


「ひぃぃ、こわっ。ミセッティ様のことがバレると危なそうですね~」


「ゴブ」(わたしはどこにでもいる少しお行儀のいいゴブリンだから大丈夫ゴブ)


「そうですね、私たちはまだ社交界デビューもしていませんし、お行儀よくしてパーティではあまり目立たないようにしていましょうね」


さすがアイラお嬢様ゴブ。煌びやかな社交界に呼ばれても浮ついたりせずにあくまで国を支える一人の貴族として慎みをもって参加するつもりゴブな~


「いえいえ、それはもう無理でしょ」


ぽんこつマリーが何かつぶやいているが無視ゴブ。


さて今日は一週間に一度の休日だし、久しぶりに貧民街の教会孤児院にでも遊びに行くか。

ライアンの奴は毎週様子見に通っているらしいし。

上級貴族の出身にもよらず貧しい生活をしている孤児たちを気遣うとは・・・奴もなかなか男気があるじゃないか。


「ゴブ」(今日はライアンの奴と一緒に出掛けるゴブ)


「あら、少し前に一日中出かけてから随分仲良くなったのですね。気を付けてね。最近は下町が活気が出ているというし、貧民街も外から来たハグレ者たちがみんな出て行ったらしく治安が良くなっているらしいですわね」


「ゴブ~」(教会の孤児院に友達がいるゴブ~)


「野良ゴブリンと間違われて狩られないように注意するのですよ?」


「ゴブ~」(リボンを付けていくから大丈夫ゴブ~)


こんなにおしゃれなゴブリンは他にいないと思うゴブ、ほぼ貴族だしな。フフフ


「たぶん、いや貧民街こそ絶対大丈夫だと思うっス」


テトの奴は少しはテイマースキルを上達させれたかな~

言葉は半分くらい伝わっているっぽいけどなにせまだ5歳児くらいだからな。

大人であるわたしがきちんと社会というものを教えてあげないと。


「ゴブ」(お土産に庭に生えているお花でも持っていくゴブ)


最近朝のマラソンのスポットにきれいな花がいっぱい咲いているんだな

キラキラしてきれいなのもあるからいっぱい持っていこう。


「あら、そうなの?お庭のお花がきれいに咲いているからお土産にするんだ」


「!!・・・ミセッティ様、子供たち相手ならお花よりお菓子の方が喜ぶかもしれませんよ、少し時間をいただければ料理長に言って少しばかりのクッキーでも焼いてもらいましょう」


おおっ、さすが出来るメイド、カタリナさん。

たかが従魔のわたしの人間関係のためにお土産を作っていただけるとは・・・


「ゴブ~」(くぅ~、それは非常にありがたいゴブ~。感謝するゴブ~)


「良かったですわね、ミセッティ。向こうでもライアン様に迷惑をかけないように粗相せずにお利巧にするのですよ。私は勝手にお出掛けできませんから」


「ゴブ」(分かっているゴブ。いつもお利巧ゴブ~)


「迷惑どころの騒ぎじゃないっスけどね~。お嬢様まで行ったら大騒ぎになるっス」


「ん?何かおっしゃいましたか、ライアン様」


「なんでも無いっス。今日も一日お預かりするっス」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る