始めてのイベント!

第10話

 昨日の雑談枠で聞いたイベントについて、私は早速受付に問い合わせたところ配信OKとのことだった。イベントは登録制で、どうやら地下10階がイベント会場らしい。私はそのイベント用の登録を済ませて、地下10階まで降りて行った。


「確かに、ハロウィンの仮装コスの人たちや、イベントの飾り付けが多いわね」


よく見ると、ダンジョンには似つかわしくない舞台が新設されていた。多分、あれがイベント会場なのかな......。とにかく、今はドローンの起動と配信の準備をしないとな。


『ハロウィンイベントに参加される方は、こちらに集まってください! まもなくイベントが開催されます!』


舞台の上には、マイクを持った人が立っていた。その人は【ダンジョン受付】と書かれた腕章をつけていた。多分、ここのスタッフなんだろう。私は、その舞台の方に近づいた。


『全員揃われたでしょうか? それでは、イベントを開始します! 皆さま。今回は、ダンジョンが開かれて初の公式イベントに来ていただきありがとうございます。ご存じの通り、このダンジョンは突然ここに出現しました。そして、今多くの方の娯楽施設として活用されています。......』


スタッフの一人は、ダンジョンの成り立ちや施設としての地盤を築き上げた人たちへ感謝を述べていた。正直、そんなこと今はどうでもいい。参加者もあくびをして今か今かとイベントを待ち望んでいた。その雰囲気を感じ取ったのか、壇上に立ち話していたスタッフは話を切り上げてイベントについて話し始めた。


『......。話が長くなりましたが、イベントについて説明します。これから皆さんには、あるモンスターを討伐してもらいます。その名を【ジャック・オ・ランタン】と言います......。デュラハン型でかぼちゃの頭を持っています。ですが、彼はこの場所にはいません。彼の場所は、地下10階に散在する【ウィル・オ・ウィスプ】に案内してもらってください。ただし、本当のことを言っているのは1体だけです。最後に、ジャック・オ・ランタンを討伐した証としてかぼちゃの頭を持ってきてください。では、イベントスタートです!!』


そう言うと、スタッフは舞台から降りてそそくさとエレベーターを使って上へあがっていった。残されたのは、参加者とイベント用の舞台だけだった。どうやら、あの舞台に倒した証、かぼちゃの頭を捧げばクリアらしい。ただ......。


「スタッフが言ってたウィル・オ・ウィスプ? 多すぎじゃない?」


ダンジョンの中には、青い火の玉のようなものが数千ほど浮かんでいた。よく見ると、それは一つ一つ生き物のように動いていた。多分、あれがウィル・オ・ウィスプだろう......。あのうち、ジャック・オ・ランタンにたどり着けるのはたった一人ってわけね......。


『じゃあ、配信始めよっか......』


マイクを入れて、私はダンジョンを歩き始める。コメントしてくれてる人たちにイベント概要を説明しながら、私は一体のウィル・オ・ウィスプに触れた。


<コッチダヨ>


『しゃべった......。この子も上級モンスターってこと?』


ウィル・オ・ウィスプに引っ張られているかのような感覚の中、ついていくとそこには宝箱が数個並んだ小部屋に着いた。これは、イベント特典とかなのかな?


【袋】『嫌な予感がする』

【酒バンバスピス】『こんなところ宝箱が5個も? ......妙だな』

【ドエロ将軍】『罠でもいい! 開けろ!』


コメント欄がなんか不安そうにしているけど、まあそんな罠って言っても一つや二つでしょ......。私が呆れながら宝箱の一つに手を出そうとしたそのとき、バカッと宝箱が開きそれと同時に箱の淵から牙が生えてきた。


「うわっ!! いきなりミミック引いた!』


そう思ったのも束の間、ミミックが開いた瞬間に他の4つの宝箱も連動して、すべてがミミックに変貌した。まじか、全部ミミックだったの!? 今は、そんなの考えてる暇ない!!


『ファイア・ボール!』


火球を出す魔法を繰り出し、ミミックを撃退しようとしたけどミミックはその頑丈な身体でその炎攻撃から身を守った。外側を攻撃しても意味がない......。内側を攻撃しないと。私は腰につけていた短剣を取り出した。そしてそのまま、口を開くミミックに刃を突き刺す。


「ギャアア!!」


ミミックは聞いたことのない甲高い奇声を放ち、耳を塞いでいると他のミミックが弔い合戦のごとく私を囲みだして、その箱のような体からぬるぬるとした舌を触手のようにして私にからませてくる。


『ちょ、あんた! どこ触ってんのよ! いやっ! あん♥』


ミミックたちは舌を使って私をどんどん地上から遠ざけていく。

ドローンはなぜかその下のアングルから撮影していく。これじゃ、お尻が丸見えじゃない!!


¥5,000【ドエロ将軍】『いいぞ!』

¥3,000【酒バンバスピス】『大丈夫? バンされない?』


コメントは盛り上がってるみたいでありがたいけど、このままじゃこっちが討伐されちゃう! リスタートだけは勘弁して~!


『くそが!! これでもくらえ!! サンダー・クライシス!!』


魔石から自分の身体を通して電撃が散漫する。その攻撃は、ミミックの舌を確実に仕留めた。ミミックの締め付けが弱くなり、私は地上に降りることに成功した。


『風の力で、一気に片づける! ストーム・カッター!!』


私自身で回転を加えることで、風の魔法は切断攻撃となりミミックたちは箱の上下でパックリと切断されていく。そのグロテクスな中身が見える前に、ミミックたちはアイテムと化していった。たいていは金品財宝ね。さすがはミミックと言ったところかしら......。


『早速、ウソつきウィスプにそうぐうしちゃったわ......。早くしないとイベントモンスター倒されちゃう!!』


私は、引き続き地下10階を探索していくのだった。

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