第8話

 私とゴージャス社長は、一気に地下5階まで駆け降りてきた。配信もそこから始めることになった。コメントはいつも通り、片耳につけたイヤホンからAIによって自動選択されたものが聞こえてくる。


【ジョン】『やったーー! 地下ダンだ!』


【袋】『初めてみた』


【元冒険者】『懐かしい!!』


『始めますか......。みんな~! おはダンジョン! ビキニ姐さんこと、ダンジョンビキニアーマー配信無双です! 今日は、ようやくの地下ダンジョンの配信に来てまーす! みんな、見れてる!?』


私がドローンを通して、みんなに問いかけるとコメントは拾えないほどの量が来たのか、数秒の無音の後にやっと声が届き始める。


【ドエロ将軍】『映像きれいじゃない?』

【ジョン】『地下なのに映像が乱れてない......だと!?』

【酒バンバスピス】『もしかして、ドローン替えた?』


『酒バンさんそうなのよ! 今日はそれの案件でもあるんだけどね。今日は、ストーム株式会社の新規ドローン『ストーム365G』を頂いて撮影しておりまーす! というわけで、今回はストーム株式会社からの案件で地下5階を探索していきたいと思いまーす!』


【袋】『それでスパチャができないのか』

【ぐわんぐわん】『納得。というか、ストームからの案件ってすごくね? 技術力じゃトップでしょ?』


やっぱすごいんだ。と感心していると、裏で頷いていたストーム株式会社の社長で配信者のゴージャス・嵐さんが私を押しのけて前へ押しのけてきた。


『その通り。わが社のドローンは日本一。いや、世界一の水準の画質と耐久力にある。どんなモンスターの攻撃や魔法の流れ弾に当たっても問題ない! この配信さえ見れば、みながこのドローンでダンジョンを駆け巡りたくなるだろう!!』


『ライバルが増えるのはいい気はしないけど、思い出とかのために撮っておくってのもいいかもね』


私は、思ったことを口にした。社長は頷き、私に近づく。


『さあ、ビキニアーマー配信無双くん。 君の雄姿をドローンに焼き付ける時だ! あれを見ろ!!』


嵐さんは、そう言って指を差した。私は、それをなぞるように指さされた方を向いた。そこには、人骨がうごめいていた。多分、あれはスケルトンってやつね。


『あれ、スケルトンじゃない。うーん。でもあれは狙っても持久戦になるだけだし、ドロップアイテムも大したことないわよ?』


『だが、あいつら......。こちらを狙っているような眼差しだが?』


嵐さんの言う通り、スケルトンはその赤色にぼわっと光る瞳で私たちを見つめていた。一体、また一体とスケルトンが私たちを囲みだす。私と嵐さんは自然と背中合わせとなり、円となって剣を取りだすスケルトンと対峙することになった。


『なんの恨みがあってこっちに喧嘩ふっかけてんのよ......』


『少なくとも、仲間のモンスターへの恨みはあるだろうな! だが、そんなことどうでもいい! 倒すぞ! ビキニ!』


『ビキニって略し方どうなの!? ま、いいけど......』


私と嵐さんは、それぞれ拳と金メッキの剣を振りかざしてスケルトンに対抗する。だが、聞いていた通り物理攻撃ではスケルトンは完全に倒せずすぐに復活してしまった。私は魔法石による魔法攻撃に切り替え、爆炎をまき散らしていった。


『行けっ! チェーン・EXリアクプロ―ジョン!!』


爆発と共に、スケルトンは蒸発していきアイテムと化していった。

それを見て、嵐さんもいつの間にか魔法の杖に切り替えてスケルトンたちを薙ぎ払っていた。


『君の魔法、やはり派手で気持ちがいいねえ!!』


『それも売りの一つにしてるからね! やっぱ、配信の見栄え的に派手じゃなきゃね!!』


【ジョン】『まあ、その分体力消費が激しいので、姐さんの身体に障るという』

【ドエロ将軍】『ん? 体の消費が激しい(意味深)?』

【袋】『お年だから身体には気を付けてね』


『は? そんな年いってねえし! まだ30言ってないっての!』


【酒バンバスピス】『はいはい、「まだ」ね』

【元冒険者】『歳近!! おれ、32べ......。応援したくなってきた』


ありがたいけど、なんか複雑だわ!!

ぐぬぬ......。ただ、そんなツッコミもやってられないほどにスケルトンの猛攻は続いていく。スケルトンは、またも私たちを囲んでいく。


『やっぱキリがない! 一旦引きましょ!』


『相性が悪かったか......。 もう少し面白みのあるモンスターにするか』


【ぐわんぐわん】『地下ってこんな倒しにくいモンスターばっかりなのか?』

【元冒険者】『そういえば、地下はゴースト系のモンスター多かったかも』

【袋】『ゴースト? それって倒せるのか?』


『だから地下は嫌なのよ』


『そう言ってくれるな。ゴースト系はあくまで雑魚モンスターだ。中ボスはたしか実体のあるモンスターのはず。そこへ向かおう。今回はそれの討伐が目的だ』


そういう嵐さんの誘導の元、向かってくるスケルトンを蹴散らしながらダンジョンの奥へと向かった。すると、ダンジョンの周りがだんだんとツタや草が覆うようになってきた。もしかして、植物系のモンスター?


『あれだ......』


見ると、そこには草木でできた椅子にちょこんと座った女の子がいた。女の子はどう見ても人間のようだけど、肌の色は植物と同じ緑色で、花や草のドレスか服のようなものがまとわりついていた。


『もしかして、アルラウネ......』


「......そう、だっていったら?」


『しゃ、しゃべったーーーー!?』


なんと、目の前に立ちはだかる多分アルラウネであろう女の子が話始めたのである。し、しかもめっちゃ可愛いボイス......。こんなこと、初めてなんだけど......。


『なんと、上級モンスターか......。だが、臆することなし! ビキニ、魔法を重ねるぞ!』


『重ねる? 何言ってんの?』


そういうのも束の間、強制的に嵐さんの杖の先に私の左手が重なり合った。

すると、魔法石が共鳴しているのか、強い光が放たれる。


『合わせろ! マグマストライク!』


『ま、マグマストライク!!』


【袋】『うおおおおおおお!!!』

【元冒険者】『久しぶりにみた! コンビネーション魔法!』

【ドエロ将軍】『マグマの熱でビキニアーマー溶けないかな......』

【酒バンバスピス】『溶けたらまあまあの粗悪品でしょ......』

【じょー】『今北産業』


コメントは今放たれたマグマの魔法に熱中していた。

私もこんな技見て、コメントたちと同じように震えるくらいに楽しんでる。

魔法が使えるダンジョンってやっぱ面白い!!

だが、その攻撃はアルラウネの本体には当たらず、彼女が出していた眷属のツタたちが彼女を守っていたのだった。


『ちょっとはダメージいってないと困るんだけど?』

『手を止めるな! もう一度マグマストライクだ!』


「させない......」


そういうと、アルラウネは両手を前に出してそのまま上へあげた。すると、床から竹のようなものが私たちに向かって生えてくる。やば、このままじゃ串刺しにされる!!


『チェーン・EXリアクプロ―ジョン!』


爆破の魔法で目の前までせまりくる竹を爆破した後、私はアルラウネの前まで迫りそのまま雷の魔法を浴びせることにした。


『ライトニング・ショック!!』


アルラウネは相当参っているようだけど、それに間髪入れずに嵐さんが杖から炎属性の魔法を打ち出した。


『フレア・インパクト!』


嵐さんは、アルラウネの顔面に炎属性の魔法を浴びせた。その甲斐あってか、アルラウネは消失しアイテムとなっていった。


【グレード】『おおおおおお!!』

【袋】『おおおおおおおおおおお!!!』

【酒バンバスピス】『8888888』

【ドエロ将軍】『888888』


『やっと......。倒したのね......』


『ああ、だがかなり映像映えするものだった。やはり君に頼んで正解だった。ぜひ、皆もストーム株式会社のドローンでよいダンジョンライフを送ってくれ』


『あ、概要欄に通信販売のリンク貼ってまーす! じゃ、今日はこのへんで! ばいばーい』


配信を切り終わったと同時に、私と嵐さんがへなへなになってその場で座り込んでしまった。


「お疲れ様です......」


「お疲れ様......。楽しかったよ。こんなわちゃわちゃとしたダンジョン探索は初めてだ。そのドローンは、約束通り謝礼だ。受け取り給え。まあ、その分案件の給料は安いけどな」


「ぜんぜん大丈夫です......。もらえるだけ十分にありがたいんで。......帰りますか」


「そうだな」


お互いに支えながら、私達は地下ダンジョンを後にしていった。

大変なモンスターが多いけど、未知の発見があってまた来ちゃうかもな......。地下ダンジョン。そう思いながら、エレベーターの上がるボタンを押したのだった。





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