第10話 Baby love(10)

まだまだ寒いのに。



なんで赤ん坊をおぶっているとこんなにも体温が上がるんだっ!!



斯波はもう汗だくだった。



鏡に映して様子を見てみると、翔は爆睡していた。



よし・・このまま・・



寝室のベッドまで行って、おんぶヒモを解いてそーっと寝かせようとした。




む、むずかしい・・



起こさないように寝かせるのが非常に難しかった。



細心の注意を払っていたはずなのに、最後の最後でドサっと降ろしてしまい



翔は目を覚まし、また泣き出した。




「あ~~~~、もう!!」




いきなり頭をかきむしりたくなったが。



いや、まずこの状態で寝かせてから仕事をするべきなのだ。



斯波はそう考えて、さっそく翔にミルクを作ってきた。



萌香のメモにのっとって、慎重に作る。



もともと神経質でピシっとした性格なので、ミルクを作るときも目盛りを凝視しながらの制作だった。



おなかが空いていたようで、翔はゴクゴクミルクを飲んだ。



哺乳瓶が空になったので、



「よし。 これで寝るだろ。」



斯波はこの前学習したとおり、立て抱きにして背中をさすってやった。



ところが。



ゲップと同時に翔はミルクを思いっきり吐いてしまった。



「えっ!!!!」



突然のことにパニくった。



自分の服も翔の服もミルクでベトベトだった。



「だっ・・だいじょぶか!?」



思わず赤ん坊にそう聞いたが、もちろん答えるわけもなく



吐いたわりに翔はケロっとしてむしろご機嫌だった。



「って! こんなに吐いていいのかよ!」



病気???



斯波は早速パニックになってしまった。




さっそく萌香メモを見ると



『ミルクを飲んだ後、吐いても機嫌が良ければ大丈夫。』



さすが社内でも評判の秘書である彼女はそんなことまできちんと書いてあってほっとした。



「びっくりさせんなよ・・」



斯波はため息をついて翔を見ると、ミルクだらけの顔でニーっと笑った。



斯波も力なく笑った。



服も汚れてしまったので風呂に入ることにしたのだが。




え!



こいつをずっと抱っこしたまま入るのか???



基本的なことに気づいた。



翔はまだおすわりもできない。



風呂中はずっと抱っこしていないとダメだ。




服を全部脱がせてから、



しばし考え中・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る