第61話 王女の護衛

次の日俺達は王宮へとやってきていた。


「それじゃあ、あなた達を事を私の新しい護衛役として紹介するから。」


「ああ分かった。」


「なんでクリードが護衛役なの?」


「ルーテシアの護衛としてなら、王国内を自由に動き回れるからだって説明しただろう。」


「うーん、それは分かってるんだけど、なんというか複雑な気持ちなんだよ。」


「ルーテシア、国王様に会うのは構わないんだが俺の事は。」


「分かってるって、お父様には黙ってるから安心して。」


「ルーテシア様、どうぞこちらへ。」


俺達は国王が待つ謁見の間へと入っていった。


壮麗な造りの部屋に玉座がありそこに国王が座っていた。


「国王様、ルーテシア様が来られました。」


「お父様、ただいま戻りました。」


「おお戻ったか、ルーテシア。無事に戻ってくれて嬉しいぞ。」


「大丈夫よ、お父様。私の冒険者としての実力は知っているでしょう。」


「それは分かっているが、バニル門の襲撃事件もあったからな。心配もする。王国内の警戒レベルも上げているからな。」


「ところでルーテシア、そちらの方々は?」


国王は俺の方を見てきたのだった。


「ルーテシア様の護衛をする事になりましたクリードです。」


「お父様、今日から私の護衛をして頂く方達よ。クリードは優秀な冒険者だから護衛をお願いする事にしたの。」


「ほうそちもクリードと言うのか。」


「はい、俺もクリードと言います。」


「私も驚いちゃったんだけど、全く別の方よ。」


「分かっておる、クリード殿は本当に良き御仁であった。気配りができて人格者のうえに能力も申し分なかった。本当に惜しい御仁を無くしたものだ。」


「クリード殿が帰還した暁にはルーテシアをもらってもらう予定だったのにな、残念極まりない。」


ルーテシアが慌てたのだった。


「お父様!!今はそんな話をしなくてもいいから!!」


「ルーテシア、別によいではないか。何を顔を赤くしておるのだ。お主がクリード殿と婚約できないならこの王宮から出て行くと言い出したからであろうが。」


「だからお父様、今はそんな話しなくてもいいの!!」


「ルーテシア、なにをそんなにムキになっておるのだ。」


俺はなんだか恥ずかしくなった。


「ではクリード殿、娘ルーテシアの事よろしく頼むぞ。」


「はっ、お任せください。」


「それじゃあ行きましょうか」


俺達は謁見の間を後にした。


ルーテシアが赤い顔をして迫ってきた。


「クリード、さっきの話は忘れて。」


「えっ。」


「お父様の話。」


ルーテシアは恥ずかしそうに下をむいていた。


「ああ、分かった。」


すると前方から声が聞こえてきた。


「おやルーテシア様、お戻りでしたか。」


ルーテシアがすぐに声を返した。


「あらダルカン、あなたもお父様の所に?」


「ええ、国王様より命じられていたマジックポーションの錬成が完了したので、国王様に報告しにいくところでございます。」


「そう。」


「では失礼。」


その魔術師は謁見の間の方へ歩いていった。


「ルーテシア、あいつは?」


「宮廷魔術師のダルカンよ。」


「そうか。」


俺達はルーテシアの寝室へとやってきた。


「それじゃあ俺は外で待ってるから。」


「ええいいよ別に部屋の中にいてくれても。これから私着替えるから。」


「よけいにいたらまずいだろう。」


「クリードだったら別にいいよ、好きなだけ私の着替えるところ見せてあげるけど。クリード何なら裸になってあげようか。」


「そんな事しなくていいから、ルーテシア、着替えが終わったら呼んでくれ。」


「はーい。」


俺は部屋の外に出た。しばらくしてルーテシアの声が聞こえてきた。


「いいよクリード。」


俺は再び部屋の中に入った。


「頼むから冗談はよしてくれ。ルーテシア。」


「冗談のつもりは全然ないんだけどね。」


ルーテシアが残念そうな顔をしているように見えた。


「そういえばクリード、どうしてお父様にライオス達の事を伝えてはいけなかったの?」


「今の現状だと難しい。ライオスの息のかかった連中が王国内に入り込みすぎているからな。」


「でもお父様ならたぶんクリードの言う事を信じてくれるわよ。」


「この王宮内にも恐らくライオス派が入り込んでいるはずだ。ライオス軍の連中を追求しても、しらばっくれるのが関の山だ。逆に俺達の事を魔王軍の手先だとか言い出すに決まっている。そうすれば王国が余計に混乱するだけだ、そんな事はルーテシアも国王様も望まないだろう。」


「うん、もちろんだよ。」


「ライオス軍が悪事を働こうとしている決定的な証拠をつきつける必要がある。言い逃れができない決定的なものを。」


「それじゃあこれからその証拠を探しに行くの。」


「そうしたいところだけど、まず先にやるべき事がある。」


「クリード、先にやるべき事ってなに?」


「ゴードの奴だ。」


「ライオス軍の軍団長であるゴードの事?」


「ああ。」


「それは私も気にしてたんだよね。ライオス軍の連中ときたら色々とやってるもんね。でもそれだったらお父様がゴードを呼び出して問い質すって言ってたよ。」


「いや国王様に悪いが、それは無駄になってしまうと思う。」


「どういう事?」


「もっと大きい事を企んでいるって事だ、恐らく王都を揺るがすほどの大騒動を起こそうとしているはずだ。ライオス軍の軍団長であるゴードがこの先何か仕掛けてくるのは明白だ。バニル門のケルベルス襲撃もたぶんゴードが裏で手を回していた可能性が高いだろうしな。」


「つまりゴードのその企みを阻止しようって事だね。」


「そういう事だ。」


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