第5話 ラストダンジョン

一つ確認しなければならない事があった。


「ミリー、ちょっと魔法時計を見ても構わないか?」


「もちろんいいよ。」


俺はマジックアイテムの魔法時計をアイテムボックスから取り出したのだった。


魔法時計の表示を確認した。


「それ魔法時計だね。」


ミリーが横から魔法時計の表示をのぞき込んできた。


「アーリア月の7日目の正午って表示されているね。てことは石にされてから3日経ってるって事だね。」


「うーん、やっぱりそうか。そうなると一刻も早くここから出ないとまずいな。」


「どうしたのクリード?」


「ミリー、王都の時刻表示を見てみて。」


俺は魔法時計に表示されているこことは別の場所の時計を指さした。


「リフィル月の7日目!!なんでリフィル月って表示されているの!!それにすごい速さで時計が進んでる。」


「うん、そしてそれはそこだけじゃない。この場所以外の時間表示がとてつもない速さで進んでいるんだ。」


「どういう事?」


「魔法時計はどんな場所でも正確に時間を表示できる。この事から分かる事はラストダンジョン内の時間の流れはかなりゆっくりになっているって事だ。たぶんこのラストダンジョン内は時間の流れは外に比べて30分の1の流れになってると思う。このラストダンジョンの外ではすでに僕達が石になってから2か月の月日が流れているみたいだ。」


「ええ二か月も。」


「あまりここに長居するのはまずいね。」


「うんそうだね。」


「ミリー、リアーの羽はあるかい?」


「ちょっと待って。」


ミリーはすぐに自分のアイテムボックスを確認した。


そして申し訳なさそうに顔を横に振ったのだった。


「ごめんクリード、どこにもないわ。」


「ライオス達がミリーの持っていたリアーの羽を持っていたみたいだな。」


「どうしようクリード?」


「そうなると普通に1階層ずつ上がっていくしかないね。ミリー装備を確認しようか。」


「うん。」


俺は装備を確認したのだった。


こうやって戦闘に参加するのはいつぶりだろうか。


なにせライオスの勇者パーティーに入ってというものずっと雑用しかしていなかったからだ。


だが俺の本来のジョブは魔法剣士である。


魔法剣士は魔法攻撃や補助魔法や前衛での攻撃も行える万能職でもあり、一方でうまく立ち回る事ができなければ器用貧乏の役立たずとなってしまう職業でもある。


魔法剣士は立ち回りが難しいジョブなのだ。


一方のミリーは大聖女と言われており、勇者パーティーでの担当はヒーラー(回復役)で回復のエキスパートでもあった。


俺が装備を確認していると、ミリーが微笑んでくれた。


「やっぱり魔法剣士姿のクリードはかっこいいね。」


「ミリーどうかしたの?」


するとミリーは笑顔でこう言ってくれた。


「ううん、大した事じゃないの。ただ私ね今クリードがいてくれて本当に良かったって思ってるの。私と同じ事を考えてくれたのはクリードだけだった。ライオスもナスタークもバグムットもガイボルスも私と正反対の考えだったから。だからクリードが私と同じ考えを持っててくれた事が本当に嬉しいんだ。」


「ありがとうミリー、それじゃあ一度俺達の置かれている状況を確認しよう。」


「うん。」


俺はミリーと現在の状況を確認しあったのだった。


「まず俺達は一刻も早くこのラストダンジョンから脱出しなければならない。そしてここでは脱出魔法のテザーを使用する事ができないから脱出する方法は二つに限られる。一つはリアーの羽を手に入れるか、最深部の120階層から出入り口のある最上階まで一階層づつ上って行くかのどちらかしかない。だからこのラストダンジョンから脱出する為にはこのどちらかの方法を取るしかない。そしてリアーの羽は魔物を倒して得られるドロップアイテムではなく宝箱のみで手に入るアイテムだ。」


「その上で私達が上から攻略してきた時に宝箱は全部開けて回収してるから、空けてない宝箱はないんだよね?」


「うん宝箱の取り漏らしは一切ないよ。各階層の宝箱の位置は全部把握してるからね。」


俺はこのラストダンジョンの構造は完璧に把握しており、全ての宝箱の位置も完璧に把握していた。


ミリーが残念そうに答えた。


「まさか宝箱の完全回収が裏目に出ちゃうなんてね。こんな事になるんだったら宝箱の回収なんかしなければよかったね。」


「いやそうとも言い切れないよ。先に宝箱を全部開けているおかげでショートカットができるかもしれない。」


「えっ、ショートカット?」


「うんそれなりに短縮はできると思うよ。とりあえず地下95階層まで登っていこう。そうすれば多分なんとかできるはずだから。」


「クリードには何か考えがあるんだね。分かった。クリードに任せるよ。」


するとミリーが俺に手を差し出してきた。


「そうと決まればクリード、この階段を登る前に私をあなたのパーティーに入れてくれないかしら?」


「ええミリー、俺とパーティーを組んでくれるの?」


「うん、一緒に脱出しなければならないし、是非クリードのパーティに入りたいんだけど、ダメかな?」


一緒にこのラストダンジョンから脱出するためにパーティーを組もうというのは当然の判断ではあるんだけど。


「別に俺は構わないけど、ミリーはいいのかい?仮にも君は聖女なわけだし。」


「聖女とかそんなの気にしないでクリード。もう私もあなたと同じような立場よ。ライオスとは仲違いしてしまったから。何よりも私がクリードあなたのパーティーに加わりたいの、クリードはとっても頼もしいし。あなたを心から信頼しているわ。だからどうしてもあなたのパーティーに入れて欲しいのよ。」


「分かった。そこまで言ってくれるなら歓迎するよ。ミリー、是非俺のパーティーに入ってくれ。」


「うん、ありがとうクリード。」


そして俺はミリーをパーティーメンバーに加えたのだった。


「それじゃあミリー、改めてよろしくね。」


「うんよろしくね、クリード。」


「それじゃあ上の地下119階層に行きましょうか?」


「ちょっと待ってミリー、進む前にやっておきたい事があるんだ。」


俺達はある事をすましたあとで、地下119階層へ上がる階段前に進んだのだった。


「ミリー、地下120階層では魔物が出なかったけど、階段を登った地下119階層からは強力な魔物がウヨウヨ出てくる。準備はいいかい。」


「うん。大丈夫よ。」


「よしそれじゃあ行こうか。」


俺達は119階層へと続く階段を上がっていった。

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