第3話 石化
するとミリーが俺に声を掛けてくれた。
「待ってクリード、リアーの羽を持って行った方がいいわ。」
リアーの羽というのはこのラストダンジョン専用の脱出用アイテムの事であった。
このラストダンジョンでは脱出魔法が使えないので、このラストダンジョンから脱出するにはこのリアーの羽を使うか一階ずつダンジョンを上っていくしかなかった。
「色々とありがとう、ミリー。」
するとライオスが怒った顔でこちらにやってきたのだった。
「ダメだミリー!!なんでFランクなんかに希少アイテムのリアーの羽を渡さなきゃならんのだ!!」
「だって脱出魔法テザーが無効になっちゃうんだよ。リアーの羽がないと外に出られなくなっちゃうでしょ。」
「そんなのはダメだ。リアーの羽は貴重のアイテムなんだ。それをFランクごときに渡すわけないだろうが。」
「クリードは一人で脱出しなきゃならないんだよ。リアーの羽がないと積んじゃうよ。」
「別にFランクなんざ積んでしまえばいい。Fランクがここから出られなくなるだけなんだからな。」
ガイボルスやブルムットが俺に罵声を浴びせてくる。
「そうだそうだ、Fランクなんざなんざ盛大困ればいいんだ。」
「Fランク、このブルムットの足を引っ張ったテメエなんざ魔物に喰い殺されちまえばいいんだよ。」
ナスタークも怒鳴りつけてくる。
「Fランク、ライオス様から頂いたアイテムがたくさんあるだろう。そのうえリアーの羽まで寄こせとは図々しいにもほどがあるぞ。」
「そうだ、もう追放のFランクはとっとと失せろ!!」
ミリーが申し訳なさそうな顔で俺に言った。
「ごめんね、クリード。」
「いいよありがとう、ミリー。」
リアーの羽を渡してもらうのは無理だと判断して俺は、そのまま勇者パティーを後にした。
俺は魔王クレスタのいた空間を仕切る扉を開けて魔王の間の外に出たのだった。
「魔王クレスタの討伐からまさかパーティーの追放をされてしまうなんてな。どうせ抜けたいなとは思ってたから丁度良かったと言えば良かったけど。」
さてとここで問題になるのはこのラストダンジョンからどうやって脱出するかという事だ。
ミリーが言っていたようにこのラストダンジョンでは脱出魔法テザーを使う事ができないからだ。
とはいえ一応ダメ元で唱えてみるか。
俺はダンジョンからの脱出魔法であるテザーを唱えてみた。
「囚われしこの地よりこの身を飛ばしたまえ!!テザー!!」
だがやはり魔法はかき消されてしまった。
「やっぱりダメか。となると一階層ずつ魔物を倒しながら上がっていくしかないな。」
このラストダンジョンから一瞬で脱出できるアイテムであるリアーの羽を持ってない以上、1階層づつ上がっていくしかない。
このラストダンジョンは全体で地下120階層もある広大な地下ダンジョンになっていた。
最下層である地下120階層には魔物自体は一切出現していなかったが、この階段を上って地下119階層にいけば、強力な魔物がウヨウヨするエリアに飛び込んでいく事になる。
どんな魔物が出てくるかは大体把握しているし、脱出する方法も一つ思いついた手があるにはある。
リアーの羽は宝箱にあったアイテムであり、魔物が落とすドロップアイテムではないから魔物といくら戦ってもリアーの羽は手に入れる事ができない。
だが地下95階層まで上がれれば脱出は可能なはずだ。
ただ俺には脱出できる算段があったからそこまで困惑はしていなかった。
ただ問題はライオス達だ。
俺がライオス達より先に脱出すれば、また色々と絡んでくるに違いない。
正直ライオス達とはもう会いたくもないからライオス達と脱出時間をずらしたいなと考えた。
そしてしばらくここで待機する事にした。
恐らくライオス達は1階層づつ上がっていくなんて事はせずに、リアーの羽で一気に外に脱出するはずだ。
少し時間をずらせば鉢合わせは回避する事ができるだろう。
俺はライオス達をやり過ごそうとしばらくその場で待っていると、後ろから声が聞こえてきたのだった。
「クリード!」
後ろを振り返えるとミリーの姿があった。
「どうしたの、ミリー?」
だがなぜかミリーは焦っている様子で俺にこう言った。
「これを使って一緒に地上に戻りましょう。」
ミリーはそう言うとリアーの羽を俺に手渡したのだった。
「えっ、リアーの羽を俺にくれるの?」
「ええこれでクリードも地上に戻れるわ。」
「えっ、でもこんな事をしたらライオスが激怒するんじゃないか。ミリーの立場も悪くなっちゃうよ。」
だがミリーはかなり焦った様子で俺にこう言ったのだった。
「クリード!!お願い!!今は時間がないの!!事情は地上に戻ったら全部話すから!!今はリアーの羽を使って!!」
ミリーの焦っている様子を感じた俺はすぐにリアーの羽を使う事にした。
「うん、分かった。」
リアーの羽を使う場合は高く放り投げなければならないので、リアーの羽を天井に向けて投げようとした。すると後ろから別の声が響いてきた。
「させるか!!ストーン!!」
俺は突然全身の体を動かす事ができなくなった。
ただこの独特の感覚には覚えがあった。
これは状態異常の一つの石化だ。
俺は石にされようとしている。
後ろからミリーの俺を心配する声が響いてきた。
「クリード!!」
「危ない所だった。ストーン。」
聞き覚えのある声だ。たぶんナスタークの声だ。
さらに別の人物の声が聞こえてきたのだった。
「間に合ったか、ナスターク?」
この声はたぶんライオスの声だ。
「ええ、間一髪でございました。」
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