episode04 sideクロ
そんな平和でのんびりとした君との生活。
一人で生きてきた頃に比べて、時間が過ぎるのはあっという間。
気付けば君と僕が出会って百年が経過していた。
百年のうちに森の側に小さな町が興った。
たまに君と一緒に町へと出掛けているうちに、薬屋の店主と親しくなって、風邪薬や傷薬、軟膏なんかを店に卸すようになった。
君の作る薬の効果は市販薬とは比べものにはならなくて、瞬く間に人気商品になった。
この町の人間は君が魔女だと明かしても、態度を変えることなく差別することもなく、みんな平等に接してくれる。金銭的には豊かな町ではないけれど、この町に住む人間はみんな心が豊かだった。
人間との交流が増えた君はどこか楽しそうで、僕も君が楽しいと楽しくて、今の平和な毎日がずっと続くといいな~なんて。柄にもなく思ってしまったよね。
ある日、紙袋を抱えた君の隣をしゃなりしゃなりと歩いていると。
「ああ、魔女様。今日はどちらへ?」
「魔女さん! この間いただいた薬のおかげですっかり痛みが引いちまったよ! ありがとさん」
「おや、お出かけかい? 今朝畑で採れた芋があるからちょっと待っておくれ」
色んな人に声をかけられ、その度に君は照れくさそうに鼻の頭を掻いている。
知ってるよ? 君は照れるとそうする癖がある。
この町のみんなは君が大好きらしいね。必ずと言っていいほど町を歩いていると声をかけられる。
ふふん、まあね、君は優しくてすごい魔女だからね。当たり前なんだけどね。くふふ。君が褒められると僕も嬉しくなっちゃうんだ。なんだか誇らしい気分だよ。
どうだい? うちの子はすごいだろう? と僕も胸を張って道を行く。
「魔女様……!」
両手いっぱいに買い物袋と贈り物を抱えた君に、小さな子供が声をかけてきた。うるうる目を潤ませて、どこか必死な形相だ。なにかあったのかな?
君と僕は顔を見合わせて、少女に案内されるままに町外れの小さなお家に向かった。
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