森の魔法とおばあちゃんの愛

O.K

第1話:おばあちゃんとの時間

少年の名前は健太。彼は小さいころから、大きな森の中に佇む小さな家でおばあちゃんと二人暮らしをしていました。その家は周囲からは離れていて、夜になると森の奥深くから聞こえる不気味な音がこだましていることもありましたが、健太はおばあちゃんとのほんわかした生活に満足していました。


おばあちゃんは、どこかで見たことがあるような面影を持っていて、いつもやさしく微笑みながら、心温まる話をしてくれました。けれども、健太が成長するにつれ、なぜか家の中には足音が響くことが増えていきました。夜になると、奇妙な影が壁を這い回るように見えることもあるのです。


ある日、健太は幼い頃の写真を見つけました。写真には彼とおばあちゃんが幸せそうに微笑んで写っていましたが、健太の目を引いたのは背後に写る不気味な影でした。その影は、まるで人の形をしているように見えるのですが、よく見ると特徴のはっきりしない輪郭が不気味な雰囲気を醸し出していました。


興味津々でおばあちゃんにその写真を見せると、おばあちゃんは驚きの表情を浮かべました。そして、しばらく考え込んだ後に語り始めました。


「健太、実は私はあなたの本当のおばあちゃんではないのよ。」


健太は言葉を失い、おばあちゃんを見つめます。


「私は何十年も前にこの家に住んでいた人間の魂が宿っている存在なの。その人は森の神秘的な力に魅了され、自分の命と引き換えにその力を手に入れたの。私はその人が亡くなった後、彼の魂が宿ることになったのよ。」


健太は混乱し、恐怖に心を蝕んでいきます。


「でも、あなたは本当のおばあちゃんみたいに思えるし、いつも私を大切にしてくれたじゃないですか。」


おばあちゃんは微笑みながら言います。


「ええ、それは本当よ。私はあなたのおばあちゃんとしての役目を果たすことができたの。でも、私の存在はもともとはなかったことになるの。あなたの本当のおばあちゃんは、私の魂がこの世から消えた後、天国であなたを見守っていることでしょう。」


健太は複雑な思いで心を揺れ動かされました。おばあちゃんの存在は心の支えであり、幸せな日々を過ごしてきたのに、それが虚構であったと知ることは辛い現実でした。


その後も、健太はおばあちゃんと過ごす日々を続けましたが、心の奥底には常に不安な気持ちがありました。森の中で聞こえる奇妙な音や、見えるはずのない影に恐怖を感じながらも、彼はおばあちゃんとの時間を大切にしました。


人々は、小さな家に住むおばあちゃんと少年の姿を森の中で見かけることがあります。その様子は幸せそうに見えるのですが、実は健太の心の中では、不気味な真実がずっと引き裂かれるように存在していました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る