完全な擬態

 街に戻ると、重い足取りでギルドに向かう。いくら気分が落ち込んでいても、報告をきちんとするのはプロとして当然だからな。


 受付嬢にクエスト完了報告をして、獲得したブラックウルフの毛皮を提出する。しばらく待っていると、受付嬢が金を渡してくれた。


 クエスト達成報酬と、大量のブラックウルフの毛皮の代金を合わせると、思っていたよりいい金額になった。


「毛皮をこれほど綺麗に処理できるとは、さすがですね」と、受付嬢には褒められてしまったが、単にベネットに素材部位は食べ残すように指示しただけなんだよな。


 それだけで、不要な部分を完全に除去し、必要な部分に全く傷をつけずに正確に残してくれた。かわいい上に良く出来た相棒だ。


 明日はこの金を使って、ベネットに服を買ってやるか。





 食事を終えて宿の部屋に戻ってきた。俺はバタンとベッドに倒れ込む。今日はあの女どものせいで気分は最悪だ。こんな時は、何も考えたくないからさっさと寝るに限る。


「今日は疲れたから、もう寝るよ。その前に俺の血吸うか?」


 ベネットは寝転んでいる俺の横に腰かけ「うん」と、かわいらしく頷くと、俺に覆いかぶさり、唇を合わせた。


 お、おい! 何してんだよ? ベネットは俺の口の中に舌を滑り込ませて、丹念に味わうように絡ませながら、念話で「何って、ウィルの血を吸ってるんだよ」と答える。

 しばらくして、満足したのかゆっくりと口を離す。


「ウィル、すごく美味しかったよ」


「お、おう」


 俺は動揺を悟られないように努めて、冷静に返事をした。ベネットは嬉しそうな顔で俺の目を見つめている。そして俺の下腹部に手を持って行った。


「ねぇ、ウィルのここ、こんなに硬くなってるけど、このままでいいの?」


 ベネットは右手で服の上から俺を撫で、左腕は俺の首に回している。体温と柔らかい感触が俺の脳を揺さぶり、声も出せないでいた。


 落ち着け俺! 見た目は美女でも、こいつはモンスターなんだぞ。

 そうやって俺が必死に抗っていると、追い打ちをかけるようにベネットは甘く囁く。


「私ね、人間の女に完全に擬態できていると思うんだ」


「へぇ、それは……凄いな……」


 ベネットが起き上がり着ている服を緩めると、ポロリと二つのふくらみの先端がこぼれた。


「私の体がきちんと人間に擬態できているか、しっかりと確認してくれない?」


 ベネットは、自らの両手で豊かな膨らみを持ち上げて揺らし、妖しく微笑む。


「ベネットぉぉぉ!!」


 頭の中で何かがパチンと弾けた俺は、ベネットを押し倒して抱きしめた。モンスターとか擬態とか、もうそんなの関係なかった。俺は腕の中にいる美女に、ただ夢中になってしまった。




 * * *




 最高だった。過去に相手をしてくれた、娼館のプロフェッショナルお姉さんの誰よりも良かった。


 俺は今、汗だくになって息を上げている。アラフォーおじさんだというのに5回もしてしまうとは……。こりゃ、明日は立ち上がれないかもしれんな。


 ベネットは、情欲を発散して「くたっ」となった俺のモノを優しく手のひらで包むと、嬉しそうに微笑む。


「あのね、ウィルのここから出てくる体液って血よりも美味しい。生命力みたいなのが上乗せされてるのかな? これからは毎日頂戴ね」


「あぁ……。善処する」


 正直毎日はキツイと思う、とは言えずにそう返したのだった。


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