53限目
礼拝堂からアーリャが去って行ったのを女神像の目に開けられた覗き穴から確認した。
予想外に早くここまで辿り着いたのは驚いたけれど、私を止められる理由を思いつけなくて逃げ帰っていったようね。ふん、いい気味だわ。
……とはいえ相変わらず頭の回る女だわ、私も慎重に動かないとまたいつ重箱の隅をつつくようなネチっこい追求を受けるかも知れないもの。
さて、今日はここで終わりにしておこうかしら? 最近は複数の『相棒』を使えるようになった反面、能力を使うために必要な
「やっぱりアーリャを排除してからマクシスを『相棒』にした方が良さそうね」
せっかく侯爵の養女という立場を手に入れたのにアーリャの妨害が酷い。何故かマクシスに能力の効きが悪いのもずっと変わらずだ。こんなんじゃマクシスのハートを手に入れる事も難しいだろう。
「せっかくアーリャよりも高い地位の身分を手に入れたのに……皮肉な事に学院という場所がその身分を活かせない原因なんてね」
今の地位を手に入れて調べたけどアーリャが王命で学院に来た事もマクシスの記憶を取り戻す協力をしている事も事実だと分かった。学院長の力を使って追い出す事が出来なかったのは本当だった。
侯爵家の権力を使おうにも学院では難しい。なんとか学院外からアーリャの家を潰してやりたいと思ったけれど、王国はアルダーク領をアーリャが治める事に対して何かしらの意図があるようで、さすがにちょっかいを掛けると侯爵家とはいえまずいと言われている。
せっかくの侯爵家の身分なのにこれじゃあ学院長を『相棒』にしていた時と変わらないじゃない……なんて腹立たしい!
「とにかく学院のルール内でアーリャを陥れる方法を考えないと」
幸せな未来を手に入れるために私は作戦を練るべく帰る事にした……って、あら?
「え? なんでドアノブが動かないの?」
ドアノブが動かないどころか扉もピクリとも動かない。まるで壁に扉の形のオブジェがあるように……まるで扉が壁その物のように動かなかった。
「ちょっと、どういう事よ!! 誰か!! ここを開けなさい!!」
扉を一生懸命叩いたけれど手が痛くなっただけで誰も気付いてくれない。教会裏の扉に誰も立ち寄らないように雇った護衛を見張らせているはずなのに!!
「はやくここを開けなさい!! なんで気付かないの!!」
しばらく扉と格闘しているとようやく外の護衛が気付いたようで扉を開けようとしたのだが……
「お嬢様、扉が全く動きません……道具を用意してきます」
「は、早くしなさい!!」
……いったい何だって言うの!? なんで扉が開かないの……それに1ミリも動かないなんて異常だ。扉が壁になった何てあり得ない。
それから護衛が何やら四苦八苦して扉を開けようとしたけれど一向に解決出来なかった。既に1時間以上扉をハンマーか何かで殴りつける音が鳴り響いて頭がおかしくなりそうだ。
一体何時までかかるのだろう? このままじゃご飯だって食べられないじゃない……それよりも先にもっとまずい事に気付いてしまった。
「お手洗いに行きたい……いやだ、このままだったらまずいわ。ちょっと!! 早く開けなさい!! 早くしないと全員解雇するわよ!!」
私の切実な叫びも扉を叩く衝撃音にかき消されて伝わっていないようだ。本当になんでこんな事になったの!? まさか……これはアーリャの仕業なの!? あのこのギフトジョブでこんな事が出来るの?
ううっ、早くしないとまずいわ!! 早くここから出して!!! 誰か助けて!!!! ああああ、はやく~~!!
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「お嬢、朝早くからオーレスさんから報告がありました。これを確認して下さい」
「あら、なにかしら?」
朝、朝食を済ませて学院へ向かう前の一時、マリナからオーレスさんから受けた報告の内容が書かれたメモを確認する。
「あら大変、キャレルさんたら教会の壁を壊してしまったみたい。運悪く多数の教員に目撃されて教会の使用禁止を言い渡されたみたいね」
「運悪くではなくお嬢が教師陣へ『教会に不審者がいる』という目撃情報を教えたからでは無いのですか?」
「さぁ、どうでしょう?」
わたしはキャレルさんが『相棒』を使って嫌がらせをしている事を実証出来なかったので、代わりに木造で出来た教会の建物を『強化』して扉を『加工』して壁と一体化させてきました……するとあら不思議、キャレルさんは教会を使う事が出来なくなりました。
「これに懲りて悪い事をすると女神様から罰を当てられると反省してくれると良いんですけどね……まぁ、期待は出来ないかな?」
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