36限目

お待たせしました。ちょっと短い説明回になっちゃいました。


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貧民街スラムなんて……一体どうしてこんな状態になるまで?」


 この状況を許してしまったのか? その疑問が頭の中を駆け巡った。戦争は無く長い間内政に注力できる状況が続いていたはず。各領主達もゆとりを持って領地の開拓を進めていたはずだ。


「私も記録を確認している最中なのですが、このアルダーク領の開拓も順調で開拓村を増やしていました。ですが二十年ほど前から魔物の数が増え始めたようです」


「魔物が?」


 魔物……人とは相成れない異形の生物。動物とは違い意思疎通もできず敵対する存在。遙か昔から存在はしていたが、どういうわけか人同士の戦争が終わり、世界が平和になった後から数が徐々に増え始めたと言われている。


「しばらくは村人達で対応していたのですがその数が年々増えて行き、とうとう魔物に滅ぼされる村も出はじめたようです」


「王国から救援は無かったのですか?」


「戦争が無くなり多大な費用が掛かる常備軍は維持が難しく騎士団も全て縮小されております。戦力を直接送り込む事が難しかったので、冒険者ギルドに働き掛け国が報酬を負担する形で依頼を出したり物資を送ったりなど支援は十分にしていました」


 今までファンタジーの世界の国には騎士団が当たり前のようにあると思っていたのに、現実? はそうでも無かったみたいだ。どんな事にもお金が必要なんて夢も希望も無いよね。


「王国からの援助があったのにどうしてこうなったのですか?」


「同じ状況が世界中で起こっていたからです。当時は『魔物を操る魔王が現れたのでは?』なんて言われていました」


「わたしそんな話聞いた事が無いですよ」


「実際に被害が出たのは王都から離れた辺境で王都に近い領地の者は知らない者も多かったようです」


 わたしが生まれた頃には魔物の大量発生は収まっていたらしく、どうりで聞いた事が無いと思ったよ……もしかしたらお父さんのような商人達なら知っていたのかもしれないけどね。


「それでどうしてアルダーク領に貧民街スラムが?」


「このアルダーク領に永遠の森エターナルフォレストが隣接していたからです」


「そういえばそうでしたね……今でも永遠の森エターナルフォレストからは多くの魔物が現れますからもしや当時は?」


「はい、このアルダーク領に現れた魔物の数は他と比べて相当多かったようです」


 このアルダーク領には多くの冒険者が救援にやって来たもののその多すぎる数、そして魔物自体の強さが他領と比べものにならないものだったようで、沢山あった村は滅ぼされその住民達が難民となりこの領都外縁に身を寄せる事になったようだ。


「アルダーク領は自治領、本来なら王都に頼らず自力で解決すべきだったのだが、亡くなられた先代と違い亡命した現当主はそれが理解出来ないようで万全に支援しなかった王国に反感を持っていたようです」


 そして第二王子まーくんを誘拐するという暴挙にでたんだね。それにしても、永遠の森エターナルフォレストからの魔物には隣国と合同で討伐に当たっていたとの事だけど、亡命させるくらいなんだから仲が良かったんだよね? さて、どのくらい仲が良かったのか……そしてこの国にちょっかいを掛けてくるのがまーくんの誘拐の件だけなのか? 単純に魔物を退治して難民を助けようって単純な話じゃないのかもしれない。




 ……これは色々調べながら動かないといけないみたいだよね?




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