14限目

 ホームルームで先生から授業を行う講堂の変更があった。


 事前に確認しておいた情報では次の授業はまーくんと同じ教室になる予定だった。生憎、発表されたのはこのクラスの生徒が何処の講堂で授業を受けるかだけしか分からず、他彼のクラスの生徒がどこなのかまでは分からなかった。


 やがてホームルームが終わり、生徒達が自分の授業が行われる講堂へ向かうために教室から出て行く。わたし達は教材を持って教室を出た。


「先程のアーリャさん勇ましくて素敵でしたわ」


「セーラー様をやり込めてしまうなんて」


「はしたないところを見せてしまって恥ずかしいです」


 いきなりの悪役令嬢ムーブでドン引きされるどころか二人とも感激されちゃったよ。まぁ、そっちの方が良いけどね。貴族のお嬢様は刺激的なことが好きなのかも?


 やがて目的地に到着するとわたしは講堂内を見渡たした……まーくんはどこかな?



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 授業が終わりわたし達は次の授業の為に移動を開始する。


「アーリャさん、今日の授業で使われた『教科書』という本は素晴らしかったですわ」


「この前のノートに引き続きよく考えられています」


「今まで以上に勉学に励むことが出来そうだ」


 一緒のクラスの二人以外にも教科書に関心を持った人達が自然と一緒に会話に参加していてちょっとした集団になっているようで周りから目立っている気がする。


 すると廊下の向こうから小走りの少女が現れる。彼女がこちらを確認すると驚きの表情を浮かべた……キャレルさんだ。


「な、なんであなたがここにいるの?」


「あらキャレルさんご機嫌よう……何でと言われてもわたしの授業はここでしたから。そうですよね?」


「あぁ、アーリャの用意した教科書……これがあれば我が国の学力が大いに上がるだろう。今回は試験的にだが、本格的に全員が持つことが出来れば素晴らしい結果になることは間違いない」


「はい、今回は貸し出しでしたが沢山作って貴族学部の方達だけでは無く騎士学部や経済学部の方達も手に入れられるようにするよていです」


「「「「素晴らしい!!」」」」


 わたしとまーくんとの会話を聞いた周りのみんなもその事を賞賛する。えへへ、人のためになることだから素直に喜んで良いよね。


「だって、今日は授業の場所が変わったはずなのに……」


「はいそうですよ。わたしが試験的に用意した『教科書』を使った授業のために授業の場所が変わったのです」


「キャレル、教科書というのは予め授業内容について詳しく書かれた本のことだ」


 教科書の意味を知らないだろうと捕捉をしてくれる優しいまーくん……すてき。まぁ、転生者のキャレルさんは当然知っているんだけど余計なことを言う必要は無い。


「そ、そうだったんですか……あ、私は次の授業がありますから失礼致します」


 予想していた状況と違う事を察したキャレルさんはすかさずこの場を去って行った。ふふん、たぶんキャレルさんも授業の事について何かやったみたいだけど、わたしの方が一枚上手だったみたいだね。おそらくだけどわたしとまーくんの授業を別々にでもしたんじゃないかな?

 でも結果はわたしの根回しの方が優先されたみたい。でも、昨日の時点で急いで動いていなかったらこうはいかなかっただろうから、やっぱり油断は出来ない相手だって再認識したよ。油断禁物!!


 このアーリャに油断も隙も無いんだよ!!


「あ、あの、アーリャさん、何か落ちましたよ……これって、お菓子ですか?」


「あ、あらやだわたしったらオホホホホホ……実家で展開している新しいスィーツです。よろしければ皆様もあとでいかがでしょうか?」


 しまった、授業中お腹が減らないように持ってきてたんだった。成り行きでお裾分けになっちゃったけど、授業中お腹空かないと良いな……万が一にでもまーくんにお腹の音を聞かれたら秒で死ねる。




 ……と言う事で緒戦はわたしの勝利と言える結果になったと思う。でもわたしの戦いはまだ始まったばかりだよ!!




______________________________________


時間が掛かってすみません。この話を書くのに1週間……というよりは、お仕事が忙しくて帰ってから執筆する気力がありませんでした。

去年はリモートだったので楽でしたが今年は仕事のある平日は全く書けない感じです。


お仕事しながら平行して5000字以上を毎日更新する人とか尊敬に値しますね。



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