現代最強

 と、いうわけで翌日。俺は探索者協会に試験を受けに来ている。ウェスタとレイナは今回も後方で待機だ。


 ちなみに今回、なぜか俺たちは先に戦うフィールドである立花さんの異空間に通されている。戦いが始まる直前までだれが相手なのかわからないというわけである。


 今回の戦闘フィールドは草原だった。


「うっし、頑張るか」


 俺が気を引き締めていると、目の前の空間が歪んでいく。そして、そこから現れたのは、世界中の誰もが知るあの男だった。


「待たせたな」


「神宮寺さん!?」


 世界最強じゃねぇか!? ちょっと待ってほしい。よほどの人じゃなきゃそこそこ戦えるかなとか思ってはいたけどこの人相手はマジで無理だ。本気で戦えばまず瞬殺される。


「お、俺のこと知っててくれてるのか。ありがとな。どれどれ……」


 神宮寺さんの目に魔法陣が宿る。あれ、それカンニングの奴で、異世界の魔法じゃ……。


「っ! マジかよ……後ろの二人は戦うのか?」


 ウェスタとレイナとの契約についてもばれたのか、俺に神宮寺さんがそうきいてくる。そこにウェスタが近づいてきて、神宮寺さんに声をかけた。


「安心するのじゃ、儂らは今回戦わん」


「マジで安心したぜ。Aクラス試験でぼこぼこにされるのかと思ったわ」


 そういって見せる神宮寺さんは本当にほっとしているようだった。ウェスタとレイナ、やっぱり神宮寺さんの何倍も強いんだな……。


 ウェスタが後ろに戻るその瞬間に念話を飛ばしてきた。


『気を付けるのじゃ、主殿。そやつ、儂の鑑定が効かん。そこそこの強者じゃぞ』


 やっぱり神宮寺さんも神宮寺さんで強いんだなぁ。俺単体でどうやって試験受かろうかなぁ……。神宮寺さんにはおそらくアイテムだよりの戦術なのばれてるだろうしなぁ。


『なんとか頑張るよ』


『ファイトじゃぞ』


 ウェスタに応援してもらったし、全力で頑張るか。


「それじゃあはじめるか」


「はい」


 俺は【怨恨の刀】を装備して神宮寺さんの様子をうかがう。すると、神宮寺さんは何やら呪文のようなものを唱え始める。


「――我が魂よ、運命の先より来たれ」


 ちょっと待った!! 魂装の呪文じゃねぇか!? 魂装がありえないほど強い能力を持っているのは俺も知ってる。絶対に召喚させたらダメだ!


 俺はすぐさま刀をもって突撃し、呪文を止めに入るが、素手で刀を止められた。


「嘘だろ……。ぐぇっ!?」


 呪文を詠唱している最中だというのに見切るのがやっとの速度で神宮寺さんが回し蹴りを決めてくる。俺は反射的に刀でそれを防ぐがかなり遠くにはじき飛ばされた。


 今のよく刀で防いだな俺……。自分で判断するより先に体が動いたぞ。吹っ飛ばされている間も神宮寺さんの詠唱が続く。


「その魂は定められし運命を捻じ曲げん」


 まっずいなぁ3分の2くらい詠唱終わったぞ? とりあえず俺の速度なら詠唱が終わるまでにここから戻ってもう1度攻撃を仕掛けるくらいはできるからそれでキャンセルできないか試してみよう。


 全速力で草原を走り、1秒の内に俺は神宮寺さんの元まで戻ってきた。100mくらいはとばされたなこの感じ。


 俺はさらにギアを上げて加速して、神宮寺さんの背後から刀を振り下ろす。しかしそれは神宮寺さんの後ろにまわした片手によって止められる。神宮寺さんはこちらを一瞥すらしていない。


 格が過ぎるなぁ……。そして、魂装召喚の詠唱が完成した。


「因果を掴む勇者の聖剣よ、今こそ我が元へ! 『因果の聖剣エフェクト・レヴァーテイン』」


 神宮寺さんの目の前に黄金の輝く剣が現れる。神宮寺さんは俺の刀を止めたのとは逆の手でその剣を掴む。そしてその瞬間、その剣は俺に当たっていた。俺は俺でなぜかそれに対応して刀でその攻撃を受けていた。なんで? マジで守ろうという思考が出てくる前に当たってたのになんで守れてんの?


 守ったからといってその衝撃が消せるわけではないので俺はまたぶっ飛ばされた。


「……どうしろってんだこれ」


 ぶっちゃけ俺一人だと詰んでる感あるなぁ。かといってウェスタとレイナを参戦させるわけにもいかないし、元スケルトンズも今はいろいろやってる最中だ。


 とりあえず今できる手はすべて試そう。俺は神宮寺さんの周りに暗雲結界を展開し接近する。


 俺が暗雲結界の中に足を踏み入れた瞬間、神宮寺さんの剣が俺の脇腹に突き刺さる。


 ……えぇ? 何が見えてんだよこの人……。


 俺が絶句しているとすぐさま剣を引き抜かれけり飛ばされる。どうすんだよこんなん。


 俺が蹴り飛ばされて転がった先で暗雲結界の方を見ていると、一筋の光が暗雲の中に見え、その瞬間に暗雲がすべてふきとばされた。


「……無理じゃね?」


 すると、俺の目の前にオーロラのような結界が張られる。そして、ウェスタとレイナが俺の前に立つ。


「え、戦わないんじゃねぇの?」


 いつのまにか近くに来ていた神宮寺さんが焦りながらそういった。


「儂も最初はそのつもりじゃったが……。主殿が傷つくのが見てられなくてな。悪いが儂らも戦わせてもらうのじゃ」


「主様は私たちが守ります」


「oh……俺の負けぇ」


 神宮寺さんがこの世の終わり見たいな顔をしている。まぁこの二人が敵ってなったらそうなるのもわかるけど……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る