記念閑話『日本二番の魂装使い』
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◆◆◆
俺の名前は佐倉 良太。どこにでもいるAクラス探索者だ。いや、まぁAクラス探索者ってだけでめちゃめちゃすごいんだけどさ。今俺はとある配信をみて絶賛心折られ中なのだ。
目の前でおそらく俺以上に強いであろうアンデッドを大量に召喚する俺の推し。うん、Aクラス探索者としての自信とかは全部吹き飛んだ。
Aクラスってものがちっぽけに見えてくる。俺がどれだけ努力しようとあそこまで強くはなれなさそうだしな。
さて、まぁ自己紹介はおいておいて、配信の続きを見ていこうか。
俺の推しが亀の魔物……ブラストタートルをぶん殴った。すると、ブラストタートルの硬い装甲がウソのように砂のようになって消えてしまった。
マジかよ、あの魔物物理聞きづらいし遠距離攻撃持ちでめっちゃ厄介なのに。そんな簡単に倒すか~。
俺でも厄介だと思うのにワンパンかぁ。
『今のは格下相手にしか使えないちょっとしたズル技ですね。ウェスタさんには全く通じませんよ。爪の一部すら風化させられません。まぁ今の主様には通じますけど』
俺の推しが今やったことについて少し話す。格下相手にしか使えない、か。明確にブラストタートルを格下と言ってのけるのはさすがだな。
主も格下なのか。普通魔物を従えるときって主の方が強いもんじゃねぇのか? というか魔物使いって魔物格下じゃないと使役できないよな? もしかして主って……召喚士か? 召喚士は日本に二人しか居ないはず。そのうち一人は日向 亜紀。そしてもう一人は……。
いや、やめよう。個人情報を特定して喜ぶタイプの人間じゃないからな俺は。あと普通に何かあってこの配信をやめられてしまっては困る。俺はレイナ様を推すって決めたんだ!
『――我が魂よ、冥府より来たれ。その魂は暗く、より暗く。何者にも見通せぬ深淵の顕現。いでよ! 『
推しがなにやら呪文を詠唱して目の前に鎌を顕現させた。かっけぇ……。俺もあんなことしてみてぇなぁ。
その後、なんやかんやあってもう一人の推しが配信に出てきた。それで今の何かを顕現させる能力について話あってる。そしてこういった。
『なぜ二つ同時に展開できるのじゃ!? 魂装は一人一つじゃろ!?』
この言葉を聞いて俺は思いついた。今の技は魂装というらしいと。そして魂装とやらは一人一つ。俺にもできるんじゃないかと。
そう思っていろいろ考えていると急にビビッときた。なんていえばいいかわからないけど、とにかくこう、電流が流れたような感じ? それと同時に俺の頭の中に呪文が浮かびあがってくる。
「――我が魂よ、この地に顕現せよ。その魂は荒々しく、豪快に。すべての一撃に最大限を、人間の可能性を! 今こそ目覚めよ! 『
俺の目の前に機械的な見た目をした剣が現れた。その剣を持った瞬間、能力を理解した。
どうやらこの剣、その攻撃が所持者の人生の成長限界で出すことができるダメージと同じダメージを出せるらしい。つまりこの剣があれば人生で一番の火力で戦えるということだ。まぁいろいろ問題ありの能力ではあるな。
まず人生の成長限界にたどり着いてしまえば必要ないし、使っているときも自身の速さ、防御力、状況判断力が上がるわけではない。
いわば未来の自分の攻撃力の前借りでしかない。緊急時用の保険的な能力だな。普段使いにしていては多分俺自身が成長できない。
とりあえず棚ぼたで緊急回避アイテムが手に入ったみたいな感じか?
あとで性能を試しておこう。自分の力を理解しようとしないのは罪だしな。
『次はちゃんと時間を止めずに戦いますからしっかり見ててくださいね?』
配信を見に戻ると、普段は凄くお堅い感じの推しが上目遣いでしゃべっていた。
……あ、鼻血出てきた。
◇◇◇
後日。俺は今Aクラスダンジョンに来ている。自分の力の実験のためだ。仲間は連れてきてるのかって? 言わせんなよ。俺はソロだ。
とりあえず魂装を顕現させよう。今回はその実験で来てるからな。
「――我が魂よ、この地に顕現せよ。その魂は荒々しく、豪快に。すべての一撃に最大限を、人間の可能性を! 今こそ目覚めよ! 『
あの剣が俺の前に現れる。それを握ってダンジョンの先を目指す。
少し進んだ所でAクラスの魔物であるデスマンティスが出てきた。よし、実験台はこいつだな。俺の最大火力、食らってもらおうじゃないか。
とりあえず初手は飛ぶ斬撃。俺の十八番ともいえるな。
「はぁ!」
軽く剣をふるって斬撃を飛ばす。能力がマジならこれが人生で最高の火力となるはずなんだが。
飛んだ斬撃はデスマンティスを軽く両断し、ダンジョンの壁に大きな裂傷を付けた。
……ダンジョンの壁って破壊不可能じゃねぇの? というかやばすぎだろ!? 俺の成長限界こんななの!?
俄然やる気が出てきたな。よし、これから探索者、頑張ろう。
◆◆◆
リン「たまにいるんですよね。魂装に目覚めるのがやたら早くてやたら強い能力を持っている天才が。まぁ天才だからなんだって話ではありますけども」
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