初見、ラーメンと服

 この辺にあるラーメン屋をスマホで調べ、そこへ向かった。俺は塩ラーメン、ウェスタは味噌ラーメンを頼んで待っている。


「いい香りがするのう。これがラーメンの香りなのか?」


「ああ、そうだぞ。とりあえず待ちかな?」


 そこそこ人気の店で他の席にも人がいっぱいいる。他の席の皆はウェスタの髪色が珍しいのか、ちらちらと内の席への視線を感じる。


 髪色以外にもその容姿も人の視線を集める要素だな。かわいいもんな、うちのウェスタ。


 当の本人はそんなことは気にせず、ラーメンに期待を寄せて足をぶらぶらと揺らしている。


 ガチの幼女かな?


「まだなんじゃな?」


「人多いからなぁ。もう少し待つかもしれないな」


「むぅ……」


 待つことを聞かされたウェスタは頬を膨らませる。拗ねてんなぁ。


「こんでると作る量が多くて大変なんだよ。わかってやってくれ」


「それは、そうじゃろうが……」


 どうにも不満といった感じだな。早く食べてみたいんだろう。


「まぁもうちょっと待てよ。きっともうすぐくるから」


「わかったのじゃ」


 もう少し話ながら待っていると、ようやくラーメンがやってきた。


「どうだ? 美味そうだろ?」


「美味そうじゃが……どうやって食べればよいのじゃ?」


 ……あっ。箸の使い方教えてないじゃん。どうやって食べるんだよ。


「あー箸っていうものがあってだな? それを使って食べるんだよ。こうやってな」


 目の前で割りばしを割って、そしてそのままラーメンをすする。


「うん、美味いな」


「なるほど、やってみるのじゃ」


「おう」


 ぎこちないながらもウェスタがラーメンを食べ始めたので、俺も自分のラーメンを食べ始める。


「こんなに美味い食べ物があるんじゃな!」


 一口ラーメンを口にしたウェスタは目を輝かせている。


「美味いだろ?」


「信じられないほどうまいのじゃ。他にもこんな食べ物があるというのは本当にすごいと思うのじゃ」


「おう、これからも期待しとけよ!」


「うむ!」


 とりあえず俺はラーメンをもくもくを食べ、早いうちに食べ終わったが、箸の使い方に慣れてないからか、ウェスタはいまだに半分も食べ終わっていなかった。


 伸びてしまうともったいないしな。


「食べきれそうか? 無理はするなよ?」


「食べきれるのじゃが……どうも箸というのが慣れなくてのう。主殿、食べさせて欲しいのじゃ」


 確かに箸の使い方は本当に慣れてなさそうだな。周りの目線が痛いが仕方ない。というかラーメンを食べさせるのって難しくないか?


「ほら、あーん」


 掴んだ麺をウェスタの口に近付ける。ウェスタはその麺を一気にすする。


「うむ! 美味いのじゃ!」


 ウェスタがうれしそうだしかわいいからよいが、絵面が完全に犯罪だぞ。俺見た目ほぼ成人だしな。


 その後も言われるままにウェスタの口に麺を運ぶ。


「美味しかったのじゃ!」


 ようやくウェスタも食べ終わった。


「そしたら、服、買いに行くか?」


「そうじゃな。どこに買いに行くのじゃ?」


 幼児服ってわけでもないしなぁ。どこで買えばいいんだ? 小学生女子の服をどこで買うかだな。


「スマホで調べるから、ちょっと待っててくれよ?」


「ん、了解なのじゃ」


 そういうわけで近所の服屋を少し調べてみたところ、なかなかいい感じのが見つかった。


 カジュアルとかポップだとか、よくわからんがとりあえずはこの中からウェスタに似合うものを探せばいい。


 ビスチェ風ペプラムチュニック、ねぇ? こんなのいいんじゃないか?


「これ、どうだ?」


 スマホで見つけた写真をウェスタに見せる。


「いい感じじゃな! かわいい服だから人気もでそうじゃ!」


 そういうわけで、買い物には行かず、こういう感じの服をいくつかお取り寄せすることにした。


「よし、そしたら今日の目玉だ! カメラを買いに行こうか!」


 まぁその前に換金が必要なんだがな。


「楽しみじゃな! 配信!」


◆◆◆


 電車に乗って自分の家がある街に戻り、探索者協会支部に換金に向かう。


 すると、協会支部がなにやら騒がしくしていた。


 とりあえずは受付の所まで行って、受付さんに何があったのか聞いてみる。


「何かあったんですか?」


「あ、夜見さんじゃないですか。実はですね、新しくなったFクラスダンジョンの調査に向かった支部長が戻ってこないんですよ」


「久蔵支部長がですか!?」


 ウェスタがかなり強いと言っていたはずの人だ。あのダンジョンから帰ってきてないとはいったいどういうことだ?


「救助にはすでに神宮司様が向かいましたので、私たちにできることはもう何もないんですけどね。それと、換金ならお受けしますよ!」


「こんな大変な時に換金しちゃって大丈夫なんですか?」


 いつもスケルトンの魔石を換金してくれている人だからか、俺が換金目当てできたことが分かっていたようだ。


 支部長がいないのに大丈夫なんだろうか。


「ええ、支部長が『僕に何かあった時のために』って緊急時の対応とかを事前に考えていてくれたので、滞りなく支部は運営できてますよ」


 なるほど、まだ若いのにそんなことも考えているのか。すごいな、彼は。


 ということで、魔石の換金・査定を受付嬢さんにお願いしたところ、今までのようなスケルトンの魔石じゃなかったことに大変驚かれた。


 うちのウェスタのおかげですとはいってみたが信じてもらえなかった。

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