60. 戦地復興

 世界樹の森周辺を治めていたドワーフたちはやはりドワーフ皇帝の話を受け入れなかった。

 それどころか、先祖代々の土地を奪いに来る大罪人として皇帝を討ち取ろうとまでする始末だ。

 だが、そんな武力蜂起も一般民衆までは伝わらない。

 皇帝直属の騎士がこの土地の貴族を調べると言っているのにそれに対して抵抗するのはおかしいと考えるのは当たり前だ。

 それでも武力で物ごとを解決したい貴族たちは強制的に街や村の民を徴兵しようとしたが、その時には既にドワーフ帝国の軍勢が守りについていた。

 普通ならこれで万事休すといったところなんだけど、貴族たちはそれでも諦めない。

 各私兵のみで一斉に反乱し武力行使を行い始める。

 無論、そんなものが通じる帝国軍ではなく、各地で拠点となっている街すら出ることが敵わず鎮圧されたのだった。

 以上、この一カ月間の出来事である。


「にゃー。この地の貴族どもは頭の回らない連中ばかりでしたにゃー」


「それとも、取り調べを受けたら確実に処刑されるかニャ。どちらにしても愚かニャ」


「ホーフーンもクーオもそれくらいで……」


 いま僕たちは世界樹の森がある地方の領都とも呼べる大きな街に来ている。

 今日、ここで捕まった貴族たちの罪状が言い渡され処刑が執り行われるのだ。

 それ自体に興味はないんだけど、問題はここから先。

 皇帝陛下と共に壇に上がり、各地の畑を耕す責任者として紹介を受けなければならない。

 正直緊張するしあまりやりたくはないんだけど、引き受けないことには始まらないので引き受けることにした。

 大勢の前に立つことになれていないんだよね。

 ちなみに皇帝陛下は断罪を行う台よりも高い位置にどっしりと腰掛け、断罪される者たちをにらみつけている。

 それだけでも迫力満点だ。


「次! タシュム家、ミザール! カショク! クイダ! ウゲキ!」


 どうやら僕の元家族の番がやってきたようだ。

 この一カ月のどの時点で捕まったのかは知らないが、必死に処刑人たちから逃れようとしている。

 ある意味、滑稽だ。


「罪状! 民から預かった税の横領、着服! 民への暴力! 不要な兵力の私有! 皇帝陛下への反逆! 間違いはないな!?」


「間違いだらけだ! 私は皇帝陛下の……」


「黙れ! お前の家から納税があった記録はこの数百年間一度たりともない! それを除いても、皇帝陛下からの武装解除命令に従わなかった時点で極刑は確定だ!」


「おのれ……誰が裏で糸を引いている! 私は無罪だ!」


「そうよ! 私たちは貴族なのよ! 貴族に逆らうとどうなるかわかっているの!?」


「俺は役に立つ! だから見逃してくれ!」


「兄貴なんかより俺の方が!」


「お前ら程度などいくらでも代わりがいる。むしろ害悪な思想に染まっている以上、更生の余地はない」


「そんな……」


「言い残すことはもうないな? 刑を執行する!」


 首を大斧で切り落とされる4人。

 最期まで自己弁護に終始し悔いる言葉は出なかった。

 あれが僕の元家族か……。


「気にすることはありませんにゃ。バオアは立派に務めを果たしているにゃ」


「そうですニャ。バオア様がいなければ餓死した民はいままでの比じゃないニャ」


「……ありがとう、ホーフーン、クーオ」


 僕と家族との問題も決着がついた。

 ここからは僕が過去の呪縛に囚われず進む番だ。


 すべての刑を執行し終えたあと、皇帝陛下はこの地方の復興計画と復興した後どうするのかを発表になられた。

 広い地域の復興を実質僕ひとりで行うことに疑問の声があがったが、皇帝陛下の取りなしで「まずは見てみろ」となる。

 それから、その復興が終わればここはエルフ女王国領になるわけだが、移住者はほとんど出そうにない。

 元々エルフ系の住民が多いし住み慣れた土地を離れることには抵抗があるようだ。

 僕に与えられた使命はこの土地の復興。

 いままで通りの仕事だけど、いつもより気合いを入れてすすめなくちゃ!

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