51. ジャガイモ販売

_/_/_/_/_/クーオ


 さて、今日から地中の果実『ジャガイモ』の発売開始ニャ。

 まだ数が少ないのであまり大商いは出来ませんが、いまある分はきちんと売りさばいてみせるニャ!


「ふーん、そのゴツゴツとした石みたいなのが新しい作物ねえ」


 まずは一軒目、ドワーフ領にある大きめの酒場兼宿屋にお邪魔ニャ。

 さて、反応はどうでるのかニャ?


「ふむ、串が刺さったら食べ頃と。ん、これは……」


「いかがですかニャ?」


「なるほど、塩を振りかけただけなのにこれだけ美味しいのか。それにこの味なら酒のつまみにもなりそうだ!」


 酒のつまみ、私の想像していない食べ方ですニャ。

 でも、とりあえず売れるなら売ってしまいますニャ。


「それで、買ってもらえますかニャ?」


「おう、買う買う。どれくらいあるんだ?」


「樽でふたつですが、この作物は光に当たると芽を出し毒になりますニャ。冷たく日差しのあたらない場所で保管する必要がありますニャ」


「ふむ、それならうちの貯蔵庫がよさそうだ。全部買うから売ってくれ!」


 驚きましたニャ。

 初めての作物を二樽分も買ってくれるとは豪快ですニャ。

 売れ行きを確認したかったのもありますが、ここは全部売ってしまいますかニャ。


「わかりましたニャ。いま物を運んできますニャ」


「おう。頼んだぜ」


 ひとまず出だしはうまくいきましたニャ。

 さて、次の販売は一週間後、それまでにどれだけ売れているかが勝負ですニャ。

 ドワーフ領で売れなければほかの領地で売ればいいのですがニャ。



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 さて、一週間経ちバオア様たちからも追加の商品を受け取ってきましたニャ。

 今回は八樽になりましたがどれだけ上手く売りさばけるでしょうかニャ?

 まずは前回ジャガイモを売った食堂からニャ。


「ごめんくださいニャ」


「おお、猫の行商人か! 待っていたぞ!」


「はて、待っていたとはニャ?」


「地中の果実だ! あれを食べた客がどんどん注文するから三日で品切れになっちまったんだよ! 今回もあれはあるんだよな? いくらある?」


 すごいですニャ!

 私の見込み以上に売れているみたいですのニャ!


「今回は八樽ニャ。でも、ほかの場所でも売りたいから四樽しか売れませんニャ」


「ああ、四樽か。残念だが仕方がない。暗い場所で保管しなくちゃいけないと言うことは保管にも注意をする必要があるだろうし、今回はそれで我慢するよ」


「毎度ありニャ」


 こうしてこの店に四樽、別の街に移りほかの店に二樽を二カ所ほど売ってきましたニャ。

 さて、今度はどうなりますかニャ?



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_/_/_/_/_/バオア


「それじゃあ、どこの街に行ってもジャガイモは飛ぶように売れているんだね?」


「はいですニャ。あればあるだけ売れてますニャ」


 僕とホーフーンはクーオからジャガイモの販売状況を聞いた。

 ようやくジャガイモ用の農業機器も使えるようになり、大規模栽培が目前に迫っているところでこれは嬉しい知らせだ。


「このペースで売れ続ければ小麦の高値も収まりますニャ。食糧難も多少はよくなるはずですニャ」


「やっぱり多少か……」


「仕方のないことですニャ。食糧難を解決するには、まず農家の生産力が上がらないことにはどうにもなりませんニャ」


「農家の生産力……ホーフーン、なにかいい策はある?」


「いまのところはまだありませんにゃ。でも、ジャガイモ栽培を続けていけば、転機が訪れるはずにゃ」


「転機?」


「世界樹の精霊様にうかがったのですが、どうやらこの村の作物は世界樹の精霊様によって特別な力を与えられているようですにゃ。その作物を植えた畑の力を活性化させるという力にゃ」


「ホーフーン、それって」


「はいですにゃ。吾輩たちがジャガイモを大量生産して農家にも配布出来るようになり、それを植えてジャガイモを栽培出来るようになれば、食糧難が解決するかもしれませんのにゃ!」


「ほうほう、ジャガイモにはそのような力があったのかニャ。ホーフーン様、それならいまから農家に配布してもいいのではないですかニャ?」


「いまはまだ早いですにゃ。まずは世界各国でジャガイモが食べることができ、それなりに美味しいことを伝えるのが先決にゃ。そのためにも、いまは各地で売るためのジャガイモを量産する段階だにゃ」


「わかりましたニャ。できる限り売る国は増やしていった方がいいのですかニャ?」


「需要が満たせる限り増やし続けてほしいにゃ。吾輩たちも増産し続けますにゃ」


「はいですニャ! これは面白くなってきましたニャ!」


 こうして始まったジャガイモの販売戦略。

 時間はかかったけど、大規模栽培が出来る農業機器のおかげでジャガイモの収穫量も増やし続けることが出来たし、クーオがそれをもって各国を売り歩くことによりジャガイモは作物として知れ渡るようになってきた。

 そして、1年が経ちそろそろ次の段階に入るべきかと考えていた頃、クーオから大至急の呼び出しがかかったんだ。


「バオア様、ホーフーン様! ジャガイモのことでドワーフの皇帝が話したいそうニャ!? どうすればいいニャ!?」

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