41. 黒翼族の事情
_/_/_/_/_/バオア
「ようこそ。黒翼族の皆さん」
僕はいつも通り、世界樹の枝の前にある広場で新たな移住者たちを出迎えた。
今回いつもと勝手が違うのは、移住者たちが牧畜メインであり、家畜の数の方が多いということ。
世界樹の精霊様にも確認して問題はないと言われているけれど、大丈夫かな?
「おや……? あなたがここの代表の」
「世界樹の森にある集落の代表、バオアです。これからよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。私は黒翼のジャメル、以後よろしくお願いいたします」
「黒翼の……?」
「黒翼族は自分たちの羽の色を名前の前につけるのにゃ。黒翼族と一言でくくっても、灰色の翼や紫色の翼も含まれますからにゃぁ」
「おや、そちらのケットシー様はよくご存じで。あなた様のお名前は」
「おっと、名乗り遅れましたにゃ。吾輩は猫の賢者ホーフーン。いまはバオアの補佐をしているのにゃ」
「そうでしたか。これは失礼を」
「気にしてないからいいのにゃ。それにしても、馬が20頭にヤギが30匹近く、羊はもっといますにゃ。大変だったのではないですかにゃ?」
「苦労はしましたが、この子たちも大事な家族です。見捨てるわけには参りません」
家畜のことをそこまで考えているなんてすごい人たちなんだ。
僕も見倣うようにしよう。
ここから黒翼族の人たちが暮らす予定の場所までは歩きで3時間程かかる。
なので、一休みしてから案内しようとしたが、それには及ばないと言われた。
黒翼族の人たちは体力のない人たちは馬に、それ以外の屈強な男性などはヤギや羊を連れて移動するみたいだ。
正直、ヒト族以外の家畜との共生は初めてなので戸惑いもある。
でも、黒翼族の人たちは家畜の扱いも慣れているようで問題なくヤギや羊を移動させている。
聞くと昼間は牧場で放牧しているが夕方には厩舎へと戻していたそうだ。
犬も混じっているので気になっていたが、犬たちも厩舎へヤギや羊を帰すときに一緒に働いてくれるパートナーらしい。
牧畜のことはなにもわからないから知らないことが満載だ。
黒翼族の居住地予定の場所まで着くとドワーフの親方衆が待ち構えていた。
これから黒翼族のみんなの家などを建ててもらうためだ。
でも、黒翼族から先に作ってほしいといわれたのは厩舎と柵。
家畜たちが自由に出来る範囲とその寝床を先に用意してほしいらしい。
家畜はストレスに弱く、環境が変わると体調を崩すことも多いそうだ。
そういったことを防ぐためにもまずは家畜たちの暮らす環境を整えてほしいみたい。
ドワーフの親方衆も納得して作業を始めたし問題ないかな。
ドワーフたちによって急ごしらえの厩舎と柵が用意されると黒翼族たちはその中へ家畜を放っていった。
どの家畜も元気に柵の中を走り回り、あるいは草を食べてのんびりしている。
この様子なら移住は成功しそうかな?
人以外の移住者がいるってこんなに気を遣うとは思わなかったよ。
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