第三章 『世界樹の村』

39. クーオの行商人紀行

_/_/_/_/_/クーオ


 ダークエルフたちを世界樹の森へ導いてから半年ほどが経ちましたニャ。

 その後も犬族や猫族、狼族、兎族といった獣人族を始め、白翼族、ドワーフ族、エルフ族、小人族などを世界樹の森へ連れて行きましたのニャ。

 移住は概ね成功、最初は種族の違いから来る生活習慣の違いなどで反発していた者たちも、簡単な農作業で日々の食事に困らなくなる幸せな環境には勝てず、総まとめ役であるバオア様とホーフーン様の指示に従って仲良くやっているニャ。


 それにしても、バオア様とホーフーン様の指示もあり始めた世界各地の状況調査、想像以上にまずいことになっていますニャ。

 はっきり言って、食糧不足になっていない国が見つからないほどひどいことになっているニャ。

 牧畜が得意な村でも普段は食糧と引き換えに肉を売っていたそうですがそれも出来なくなっていたそうですニャ。

 バオア様たちの住む世界樹の森では肉類が手に入らないため小麦粉などと交換したら、逆に恐縮されてしまったのニャ。

 それくらい食糧不足が深刻になっていますのニャ。


 特に深刻なのはドワーフ族の国ニャ。

 ドワーフ族ももちろんパンを食べるので小麦を育てていたようですが、かなりダメージを受けているようですニャ。

 元々雨が多く湿度の高い地域が多いことが災いしていますニャ。

 国土の多くが小麦の生産には適していませんのニャ。

 それでも飢える民が少ないのはドワーフ族の皇帝の采配が素晴らしいからニャ。

 質素な生活を心がけ、少しでも多くの食糧を民に分け与えているらしいのニャ。

 それでも限度があるので苦しいのは変わらないのですが、小麦以外の野菜の収穫や野生の鳥獣の狩猟などで生計を立てていますのニャ。

 本当に立派ニャ。


 それに引き換え、人間族国家は愚かニャ。

 食糧を求め周辺国に侵略戦争を仕掛けましたのニャ。

 ですが、最初から戦争が起こりそうな気配をただよわせていたため周辺国も準備万端で迎え撃ち、国境線を越えさせることはなかったと聞きましたニャ。

 その結果、ただでさえ少ない食糧を浪費し、戦争の兵士として徴兵した男手まで失ってしまい、今年の麦の収穫は去年以上に少なくなる見込みだという噂ですニャ。

 私も人間族の国家に行ったとき食糧を奪い取られそうになったため、もう行っていませんニャ。

 大きな街でも小さな村でも同じ目にあったので国に近づくことさえしませんニャ。

 バオア様もホーフーン様もそれを咎めないということは、人間族国家を救えなくても仕方がないという考えを持っているということでしょうニャ。

 私たちもすべての者を救えるほど手が広くないニャ。

 協調できない相手は救わないニャ。


 さて、今日訪れる場所は黒翼族の国にある田舎の村ニャ。

 昔は栄えていた村らしいのですが、食糧危機に見舞われるようになってからはどこからも支援を受けられず孤立してしまっているようなのですニャ。

 話の通じる相手だといいのですがニャ。

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