6. スキルを鍛えるための作業

 小型草刈り機を使っての草刈りは意外とハードだった。

 最初は軽いと感じていた小型草刈り機も、長い間肩にかけていればずっしり重く感じてくる。

 それに、草を刈るため棹を左右に振る必要があり、これにも結構体力を使う。

 そのうえ、円盤部分から微妙な振動が伝わってきて手がだんだん痺れてくるんだ。

 僕は体力的にも恵まれていないから小型草刈り機に振り回されてしまうんだろうけど、体格がよくなれば大丈夫になるんだろうか?


 そんなことを考えながら着実に草を刈り続け、かなり広い面積の草を刈ることが出来た。

 でも、草を刈るだけのスキルに何の意味があるんだろう?

 農業をするなら畑を耕す必要があるはずなんだけど。


 一旦手を止め考え込んでいると、小屋の方から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。

 どうやらホーフーンが戻ってきたらしい。

 日もすっかり高くなっているし、お昼の時間のようだ。


「ご苦労様ですにゃ。だいぶスキルに慣れてきましたかにゃ?」


「どうだろう? 草はたくさん刈れたけど」


「スキルレベルの方は上がりましたかにゃ?」


「ちょっと待って……ううん、上がっていないみたいだ」


「やはりそんな簡単には上がりませんかにゃ」


 ちょっとだけ期待していたんだけど、やっぱりスキルレベルというものはそんな簡単に上がったりはしないみたいだ。

 午後も僕はスキルレベルを上げるために草刈りを続ける。

 ホーフーンは食料採取と周囲の環境調査に向かった。

 そして、日が落ちる頃まで草刈りを続け、戻ってきたホーフーンとスキルレベルを確認してみるが、まだレベル1のまま。

 一日で上がるほど甘くはないらしい。

 この日は夕食を食べるとすぐに眠ってしまった。

 一日中草刈りを続けるのはかなりしんどい。


 翌日からも草刈りを続け、十日ほど経ったところで念願のレベルアップが訪れた。

 確認してみると小型草刈り機の後ろに『2』と表示されている。

 これはどういう意味だろう?


「ホーフーン、これってなんだと思う?」


「わかりませんにゃ。とりあえず触ってみてくださいにゃ」


「わかった。……小型草刈り機の後ろに『A』と『B』って表示されるようになった。『A』の方は色が黒くなってるね」


「ふむ。まず、そちらを触れてくださいにゃ」


「うん。……『小型草刈り機を収納しますか? YES/NO』って出たけどどうしよう?」


「とりあえず、YESでお願いしますにゃ」


「了解。うわっ!」


 僕が『YES』の文字に触れた途端、足元に置いてあった小型草刈り機が光って消えてしまった。

 それと同時に小型草刈り機の後ろにあった『A』の文字も白くなったけど、どういう意味だろう?


「なるほど。どうやら、農業機器はバオアの意思で出し入れ可能だったようですにゃ」


「そうみたいだね。『A』の部分に触れればまた出てくるのかな?」


「多分そうですにゃ。やってくださいにゃ」


 ホーフーンの指示通り『A』の文字に触れると小型草刈り機が出てきた。

 やっぱり自由に出し入れ出来るようだ。

 そうなると、『B』の方も気になる。

 それをホーフーンに聞いたら、『B』でも小型草刈り機が出てくるだろうと予想しているみたいだ。

 試しに『B』を触ったら、本当に小型草刈り機がもう1台出てきた。

 スキルがレベルアップしたことで小型草刈り機を2台まで出せるようになったらしい。


「それで、2台出せるようになったけど、これからどうしよう?」


「おそらく、もっと大量に草刈りをしろという意味ですにゃ。これからは食料を採りに行く時以外、吾輩も小型草刈り機で草刈りをしますにゃ」


「よろしくね、ホーフーン」


 これで草を刈る速度は大体2倍になる。

 レベルアップももっと早いといいんだけど。

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