第20話 リセット開始

一時間前、ジェット機でTIMEの拠点へと向かう最中の時であった、「どうせこのまま俺は死ぬんだ、」   「お前をまだ死なせる訳にはいかない」担架で横になる佐竹はこれまでに見せなかった弱音を三人は前で吐き出していた、青葉は既に諦めかけていたが横を振り向くと、南条はまだ諦めた様子を見せていなかった、「近くの病院まではあとどのくらいで着く?」南条は一度座席から立ち上がり、操縦士に問いかけた、「まだ一時間はかかると思います」その返答に周りの空気は重く暗くなった、「グゥフゥゥ!」すると突然佐竹が口から血を吐き出した、その弱りきっている佐竹の様子にその場にいた皆が冷静ではいられなくなっている、「南条さん、このまま病院まで連れていけば確実に間に合わなくなりますよ、」

焦る青葉の言葉に耳を傾けながら南条は必死に模索した、すると次の瞬間、「フッ、どうせ死ぬなら黒幕を教えてやる、」佐竹は弱りきった口調で南条にそう囁きだした、突然吐き出したその発言に三人は驚きを見せ、佐竹の近くへと寄りだした、「頼む、雇った人物はTIMEの誰なんだ?」

すると佐竹は南条を視界から反らしジェット機の天井を見上げた、「元TIMEの工作員、そして今は司令塔の立場にいる」

「まさか、」三人の表情は突然青ざめだした、

「俺を雇ったのは斎藤だ」そう佐竹は言葉にした、思わず誰も口を開ける事が出来なかった、南条は何かよくわからない怒りが段々と込み上げてきた、「畜生、一体どうなってる!」青葉は悔しさを露にし、畠山は頭を悩ませた、「じゃー始めから俺達はただの駒だったと言う事ですか?」

すると佐竹は目を瞑って静かに頷いた、「斎藤が手に入れたいのはこのUSBだ、奴に渡すわけにはいかない」   「ならいっそのこと破壊しましょう」青葉は唐突に提案を持ち掛けた、しかし南条は険しい顔で提案を否定した、「どうして斎藤がこんなにも設計図が欲しかったのか理由を知りたい、それに今ここで破壊すると、任務は失敗に終わり、俺達は死ぬことになる」

「ならどうしたら良いんですか!」青葉はつい怒りを露にするかのような強い口調で南条に問いかけてきた、「作戦は一つだけある、」南条はふと顔を見上げ真っ直ぐな目で窓の外を見つめながらそう応えた、「俺達にしか出来ない方法でな、」。







次の瞬間、司令室の扉からTIMEの特殊部隊達が一斉に部屋へと突入し始めてきた、沢山の足音が突如として司令室へと鳴り響き、いつの間にか二人は大勢の隊員達に囲まれてしまった、「もう諦めろ、この状況で君達が勝つことは不可能だ」斎藤はニヤリと笑みを浮かべながら諦めるよう促してきた、「さっさと武器を下ろせ!」二人にライフルを向ける一人の隊員が警告をかけてきた、「ちっ、これじゃあしょうがないな、今からUSBを渡すよ」南条は疲れたような口調で突然斎藤に話しかけた、そして南条は懐からUSBを取り出した、斎藤は冷静そうに、こちらから手を差しのべた、するとお互いにゆっくりと歩きながら近づき始めた、一歩一歩歩く度に妙な緊張感が漂っている、やがて南条は斎藤の目の前に辿り着いた、「さぁ、早く!」 南条はゆっくりと斎藤の手のひらへと動かした、後は南条が手を離せば全てが終わる、斎藤は深く息を呑んだ、次の瞬間、南条はUSBを握り締めていた手を開いた、しかし思わぬミスで斎藤の手のひらから少し離れた位置でUSBが落ちてしまった、ふと南条が落ちたUSBを拾うと背を低くしたその瞬間、南条の背後で銃を構えた青葉の姿が見えた、「バァーーン!」どでかい銃声と共に青葉の引いた引き金は、しゃがみこむ南条の上を通過し弾は勢いよく斎藤の膝元へと直撃した、「バキッ!」弾によって斎藤の片足に装着していた義足が破壊されてしまい、思わず斎藤はその場で倒れてしまった、そんな斎藤を気にすることなく南条は素早くUSBを手に取った、「お前達なにしやかったんだ!」遅れて状況に気がついた隊員達は焦りながらそう威嚇した、「射撃用意!」隊長の一人が突如そう言い放った、「青葉!リセットしろ」次の瞬間、二人はすぐにその場で腕に埋め込まれたチップを押しにかかった、「射てぇぇぇぇ!」幾つもの弾丸が迫ってくる、南条はチップを押すと思わず目を瞑った。






「ザァー、ザァー」どこまで深く暗いトンネルの中で何故か異様な匂いに包まれている、時々潮が口の中に入り込み喉に渇きが湧いてきた、どうにかこのトンネルを抜けようとするも出口がどこにも見つからない、ひたすら私は走り続け出口を探し続けた、「…!…!…!」すると奥から誰かがこちらを呼ぶ声が微かに聞こえてきた、その声は段々とでかくなってくる、声のする方へと無我夢中で走ると気がつけば奥の方に光の差す出口が見えた。

「はぁ!」突然目を覚ました南条は、深い夢から目を覚まし、自分がどこかわからない砂浜の上で寝ていたことに気がついた、「ブハァ、」顔には海によって砂が付けられ、海水を飲み込んだことで思わず咳き込んだ、「南条さん!」ふと声のする方を振り向くと、自分と同じように海でびちょびちょになっていた青葉の姿が見えた、南条は砂浜で足がもたれそうになるなか無我夢中で青葉のもとへと走った、「ここはどこなんだ?」 

「自分も目覚めたばかりでハッキリとわからないですが、恐らく、ガトゥン湖一帯の砂浜だと思います。」波の音が鳴り響くなか二人はすぐに砂浜から港へと歩き始めた。




「もうすぐ来ます!」青葉は部屋の窓を覗き込みながら突然南条にそう叫んだ、南条はすぐに椅子から立ち上がり青葉が見ている窓の外を覗き込んだ、「確かあの時チャグレス川で俺達は戻ってきたんだったな、」南条は表情を変えることなく一言呟いた、南条と青葉が見つめる先には、ボートを運転する畠山の姿が見えていた、ボートの後ろでは船上の上で横になる自分達の姿も見つけた、「早いうちに急ごう!」南条はそう言い放つとすぐに荷物を持って部屋から飛び出していった、「ちょっと、待ってください南条さん!」青葉も慌てて引き出しから発信器を取り出して部屋から出ていった、五分後、南条と青葉は数分の間でボートが止まった場所へと移動した、南条は前の時間にいた自分達に姿が張れないよう近くの森林に隠れながら、どうにか畠山に近づこうと模索していた、「畜生、どうやって自分達を離れさせれる」深く眉間に皺を寄せながらその場で南条は頭を悩ませた、「だから待ってくださいと言ったのに、」すると後ろから青葉が四角い機械の様なものを持ちながら南条の方へと近付いてきた、「これは発信器です、畠山がもう一人の俺達がここに入るという事に気づいてくれれば、」再び砂浜の方を振り向くと、そこでは佐竹が南条の銃を抜き取って三人に構えている場面になっていた、「早くこっちに気づいてくれ!」南条は必死に心の中でそう訴えた、しばらく様子をみたがこちらに畠山が気づく気配がない、南条はこのままでは行けないと判断した、「まさか、待ってください南条さん!」次の瞬間、南条は森林の中から飛び出してしまった。


「おい!しっかりしろ!」慌てて三人は突然倒れ込んだ佐竹のもとへ駆け込んだ、「馬鹿が、こんな体で無茶しやがって、」青葉は呆れた表情を浮かべながらも佐竹の応急処置をし始めた、「まだこいつを死なせるな!聞きたい事は山程あるんだ」南条は必死の表情で二人にそう言い放った、畠山は慌てて応急処置を手伝おうとしたその瞬間、遠くの方で見覚えのある人物の姿が見えたように見えた、「どうした!?お前を雇っていた人間は誰なんだ?」弱りきった佐竹に南条は必死に訴えかけている、畠山は何故か理由がわからないのに混乱し始めた、ふと畠山は携帯を取り出し三人の位置情報を調べると、畠山は思わず驚愕した、。

「何してるんだ?畠山、」青葉が話しかけると畠山は驚いた様子でこちらに反応した、「ビッ、ビッ、ビックリした!、一体な、なんですか?」青葉は不審な様子の畠山を一先ず気にすることなく話し続けた、「これからUSBを本部に届けに行く、応援武体を呼んでくれ」。

数分後、ジェット機が来るまでの間に畠山は二人の隙をついて、位置情報を差していた森林の方へと駆け寄ってきた、不審に思いながらも姿が見えた森林の中を覗くと、次の瞬間別の南条と青葉が森の中から姿を現した。

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