第17話  殺るか殺られるか

ここまで「リセット」お読み頂き誠にありがとうございます。

 間もなく物語は後半戦へと差し掛かります。


  この先に巻き起こる怒涛の後半戦をお楽しみください。

 



  




「ガシャン!」太い腕で殴りかかってくるゼインに南条は必死に頭を交わすと、そのままゼインの拳は列車のドアへと直撃し壁に穴が開いた、思わず驚いたものの、そんな事を考えている暇もなく再びゼインの拳が飛んできた、列車の揺れで足場が悪い状況の中二人は列車内で激しい猛攻を繰り広げている、そんな時、拳を振り回すゼインに一瞬の隙が空いた瞬間、南条はゼインの頬に一発食らわせた、思わず殴られた頬を手で抑えながら後ろへ少し下がったゼインは、一度立て直すためアドレナリンを上げて南条の顔を睨み付けた、すると突然ゼインはニヤリと不気味な笑みを浮かべた、「It doesn't work at all(全然効かないな)」

そう呟くとすぐに拳を振り上げてきた、しかし次は只のパンチではなく、よく見ると袖のところにナイフの様な尖った凶器がつけられていた、「今度は本気で殺しに来るつもりだな」南条はじっと警戒の姿勢でゼインに構えた、ゼインはゆっくりと首を回すと次の瞬間南条の方へと走り出しナイフが頭に当たるよう拳を振りかざしてきた、「チッ、」南条は必死にパンチを避けるも、微かに南条の頬にはあのナイフによってつけられた切り傷が出来た、南条はナイフによる脅威に恐れていると、突然ゼインによる勢いの乗った蹴りが南条の腹部へと当たり、南条は車両のドアへとおもいっきり倒れ込んだ、「グゥ!」南条は腹を抑えてすぐに立ち上がると、対抗するのを阻止する

かのようにゼインは南条の顔を殴った、「チッ、!」ゼインは痛みでふらついている南条の首元を素早く掴んだ、そして南条の首元を握りながらゼインは壁の方へと体を押し付けて腕を上へと挙げた、その瞬間一気に首が締め付けられ呼吸が出来なくなってしまった、「ハッ!ハッァー!」息が苦しくなった南条は必死に体を動かしてどうにかこの危機的状況を打開しようとした、ゼインは腕に力をかけ続ままけじっと南条の顔を睨み付けた、段々と力が抜けてくる実感が湧いてきた、南条は必死の抵抗を見せる、すると南条は咄嗟の判断で首を締める腕を軸にして、ゼインの首元に両足を乗せて絞め技を掛けた、「お互いが苦しめあう状態に陥り、まさに気力との戦いだった、「ヴゥゥ!ヴヮァァァァ!」我慢に耐えきれなくなったゼインは思わず首を閉めていた手が緩むと、すぐに南条は首から手を離し、握りしめた片方の腕を掴んだまま突如関節技を決めた、もがき苦しむゼインの力を必死に抑え続けながら、南条はおもいっきりゼインの腕を折りにかかった、「グギャーーー!」次の瞬間鈍い音と共にゼインの腕は骨折した、ゼインは腕を抑えて目を瞑りながらうずくまり、必死に叫んでいる姿をお構いなしに南条は立ち上がるとすかさず顔に身に付けていたガスマスク取り外した、すぐにガスマスクを装着しようとその時、何かを感じたかのようにドアの窓から南条は後ろの列車を覗き込んだ、「あいつやけに遅いな」一向に青葉の姿が見えない南条は少し不安を感じていると、突然、さっきまでうずくまっていた筈のゼインが南条の背中へと飛び掛かり無我夢中で南条の首を絞めてきた、「チッ、まだやる気かクソ野郎!」南条はがたいの大きいゼインの重さによって体重が後ろへと持っていかれてしまった、バランスを崩した南条は車両のドアへと倒れて行き、ゼインの背中がドアへと当たった、その瞬間、チャンスだと思い込んだゼインは片手で握り締めているガスマスクを奪いにかかった、「!」南条はその動きに焦りを見せたが、すぐに対抗するかのよう何度も足を一歩踏み出しては後ろへと体重を下ろし、ドアに向けてゼインの体を当て続けた、「バン!バン!バン!」体が打ち付けられる音が鳴り響いていると、車両のドアに付けられているガラスにひびが割れだし始めた、ふと後ろを振り向きドアの状態を確認した南条は、一つの策が浮かび出した、「このままドアを打ち続けて、ガスが充満している部屋からゼインを眠らせれば、この勝負勝った、」そう心の中で囁くと南条はガラスを破壊するようゼインの体を当て続けた、「ガン!ガン!」    「Let's betray quickly!(さっさとくたばれ裏切り野郎!)」激痛に耐えながら鬼の形相を浮かべるゼインは興奮状態で周りに目を向けていなかった、南条は必死にマスクを奪われないよう耐え続けた、「ガン!ガン!」そして次の瞬間、ようやくひびが割れていたドアの窓が壊れた、ガラスが床に散らばらる音と共に後ろから首を締めようとするゼインを乗せ、勢いよくドアに向かって体重を倒した、ゼインはこれまでになかった勢いのせいで南条の首元を覆っていた両腕が離され背中からドアと衝突した、そして南条は倒れた勢いそのままに片手で握り続けていたガスマスクをすぐに装着した、ふとガラスが空いたドアの方を見上げた時、おもいっきり体を打ち付けられたゼインは痛みを抑えながらドアの前へと立ち上がった、「じゃあな、ボディーガード」

次の瞬間、部屋中に蔓延していた睡眠ガスが窓ガラスの割られた穴から流れ込み、気がついた時にはもう遅くゼインはガスを吸い込んだ、「ガタガタガタ!」不審に聞こえてくる壁が揺れる音と微かに流れてくる隙間風に違和感を感じた南条は瞬時に周囲を振り向くと、先程ゼインが拳で開けた壁の穴が知らないうちに、列車の走る風によって壁が段々と剥がれていき、穴が大きく広がっていることに気がつき思わず驚いてしまった、南条の頭の中には何か不吉な予感が浮かび上がってきた、南条は咄嗟に横で眠りにつこうとしているゼインの姿を見た、「よせ!起きろぉぉぉぉぉ!」南条は慌ててゼインを呼び起こそうとするも、睡眠ガスによって起きることが出来ずゼインは揺れ動く列車の廊下内で眠りに落ちた、すると南条の予感は的中したかのようにゼインの体は大きく穴が開いた状態の壁へと倒れ込み、巨体なその体格に耐えきれる事が出来ず、ゼインは剥がれた列車の壁と共に落下してっいった。


「はぁ…はぁ…」ゼインの落下後、予想だにしなかった死者に南条はしばらく言葉を失い、その場で黙って座り込んでいた。




「ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン」猛スピード走り抜けるパナマ運河鉄道はまもなく脱出地点の中間点であるガトゥン湖の上を通過していた、「このままじゃ任務は失敗になってしまう、どうにかしないと」南条の死闘が繰り広げらているなか、その頃青葉は二人を憑けていた厄介な敵である佐竹と対峙していた、「どこで俺達を憑けてきた?佐竹、」青葉は銃口を向けて警戒しながら佐竹に問いかけた、「お前らが狙っているUSBが本当は何の目的で作られたか知っているか?お前らはあのUSBを手にする事がどれ程責任が重いことか、知っているのか?」

「一瞬にして広島に落とされた原爆のような恐ろしい兵器である事さえ知っている!」すると佐竹はニヤリと笑みを浮かべながら首を横に振った、「我々が目的としているのは兵器ではない、祖国の防衛だ」佐竹はそう呟いた、青葉は佐竹の言葉に理解が出来なかった、「悪いがここで話している時間は無いようだ、」すると佐竹は青葉に向けていた拳銃を横の座席で眠りについてる一家族の方へと向けた、「お前何する気だ?」

「俺は安心して進みたいんだ」そう応えると佐竹は突然銃口を向けている家族の娘であろう少女を持ち上げて、少女の頭に拳銃を突き付けた、「いいか、この子の生死はお前にかかっているからな、ククゥクゥクゥクゥクゥ!」佐竹は少女を人質にして青葉からの攻撃を避けようと考えていたのだ、「畜生!なんて奴だ」佐竹はゆっくりと少女を抱えながら2号車の扉を開けた、互いに睨みあうその場は緊張感が漂っている、やがて佐竹は廊下内へと入り、再び扉が閉まろうとした次の瞬間、「バァーーーーーーーーーン!!!」青葉は丁度少女がドアの壁に隠れた事に気付き佐竹の僅かな隙をついて引き金を引いた、発砲したその先には、逆に遠くからこちらに銃口を向ける南条の姿が見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る