第14話 葛藤
「チッ、畜生が!俺はこんなとこで死にたくないんだ!」大型トラックに引かれた加藤は遠くの道路へと吹き飛ばされ、無惨にも下半身は失なっていた、「出血は止まることなく、加藤の目からは涙が溢れてきた」
「ブロオオオォォ!」その頃、敵の大型トラックは残りの南条と青葉を襲っていた、「バン!バン!」必死に応戦するもトラックの勢いは止まることなく襲い続けてくる、そんな時、敵大型トラックに突如大型バスが突っ込んできた、凄まじい衝撃音と共に大型トラックは勢いよく横転してようやく停止した、「随分遅かったじゃないか、」青葉は疲れた顔を浮かべながら一言呟いた、すると大型トラックに乗っていたブラックの部下達が頭をおさえながら外へと出てきた、「Suppress all your enemies(敵を全て制圧しろ)」突然そう言い放ったのは、バスから降りてきたスティールだった、やがてすぐに大型トラックに乗っていた敵兵士は全て応援部隊によって制圧された、「I'm glad I managed to be safe(なんとか無事で良かったです)」スティールは落ち着いた表情で近くにいた青葉に話しかけてきた、青葉は青ざめた顔を見せていた、「何が良かっただこの野郎、どこが良かったんだ言ってみろ」 「よせ!南条、」青葉は怒りを露にする南条を必死に押さえつけた、しかしスティールは一切表情を変えなかった、「Our movement was read by the enemy, what's going on!(敵に我々の動きが読まれてた、一体どうなってる!)」南条はスティールを睨み付けながらこれまでになかった怒りの口調で問い詰めていった、「お陰で加藤は助からなかった、」ふと横を見ると、道路の上で眠りにつく加藤の姿があった、南条はその姿をグッと噛み締めながら再びスティールの顔を睨み付けた、「Sacrifice is an integral part of the battle(戦いに犠牲はつきものだ)」突然南条に声をかけてきたのは、バスの近くで立っていた体格のでかい男であった、よく見るとその男は何処か見覚えのある顔をしている、その数分後に南条は男の顔を思い出した、「Where is the USB with the blueprints?(設計図が入っているUSBは何処にある?)」体格のでかい男は、あの日ブラックの居場所を聞き出す為に接触したロバートとのすぐ側で警護していたボディーガードのゼインであった、南条はどうしてこんなところにいるのか疑問を浮かべた、「Why did you come here?(どうしてあんたはここに来た?)」そう問いかけるとゼインは面倒臭そうな態度を見せた、「The boss's instructions, where is the USB?(ボスの指示だ、USBは何処にある?)」端的にゼインは応え鋭い目付きでUSBの居場所を問いかけてきた、しかし、南条の僅かな疑問が簡単に教えようとはしなかった、南条はしばらく黙り込み、じっとゼインの顔を見つめた、ゼインは何かに焦っているのか、動揺を隠しきれていなかった、すると、「ジャキ、」突如としてゼインは懐から拳銃を取り出し南条に銃口を突き付けてきた、「おい!?何してるんだ、」青葉は慌ててその場へと駆け寄ってきた、「Please lower your weapon here(ここは武器を下ろしてください)」
ゼインの隣にいたスティールは焦った様子でゼインに言いかけた、南条はじっと黙り込みゼインの顔を見続けた、「Check his pocket now(今のうちにあいつのポケットを調べろ)」ゼインは拳銃を向けたままそう話すと、隊員達は死体となった加藤の服を調べ始めた、「もう銃は下ろしていいだろう」青葉が一言そう呟くと、ゼインは躊躇しながらもゆっくりと拳銃を下ろした、武器を下ろしたことによりその場の緊張感が抜けると思わず青葉やスティールは深く息をはいた、「I found USB!(USB発見しました!)」すると突然遠くから隊員の叫ぶ声が聞こえてきた、「南条さん、このままじゃUSBが奪われてしまいますよ!」青葉は焦った顔で問いかけてきた、南条は打開策が浮かぶことも出来ず、命をかけて手に入れたUSBが隊員達によって回収されていく姿を眺めていた、「チッ、加藤が犠牲になったのに、また振り出しに戻っちまう」悔しさを滲ませていると突然後ろにいたゼインが南条の名前を呼んだ、すぐに後ろを振り向くとゼインは通話が音になった状態の携帯を持ってこちらに差し出していた、「From the boss(ボスからだ、)
南条は困惑しながらもゆっくりと携帯を受け取り電話に出た、「南条です」 「ソノラではご苦労だったな、お前のお陰で設計図を取り返すことができた」電話相手のロバートは淡々とした口調で話し続けた、「お前の条件を呑んでやった次は、私の条件を呑んでもらうときだ、三日後の午前にパナマ運河鉄道に乗車しろ」
「どうして鉄道に?」 「フッ、その日に新しい試作品が送られてくる、詳しいことはまたその時に」 「ちょっと待ってくれ、まだどういうことか!」通話の途中でロバートからの連絡が切れてしまった、電話が終わるとすぐにゼインは携帯を奪いそのままバスへと乗り込んでいった、「南条さん、何を話していたんですか?」青葉が問いかけるも南条は応えることなく、しばらくその場で考え込んでいた。
「そうか、ご苦労だったな南条」加藤の救出作戦を終えてソノラ州からアメリカのとあるホテルへと宿泊していた南条は、部屋の一室で斎藤に報告をしていた、「残念ながら、任務の途中で加藤は敵に殺され、救出に失敗しました」
その頃、司令室にいた斎藤は重い表情で南条の電話に耳を傾けていた、デスクで仕事をしている早乙女はその斎藤の様子がどうしても気になり、ふとパソコンからの手を止めて、斎藤の方を振り向いた、「設計図は今恐らく、武器商人のロバートが持っていると思われます、運良くもう一度接触できる機会があるので、そこでどうにか手に入れようと思います。」
斎藤との報告が終わると南条は部屋から出てきた、リビングには疲れた顔を見せる青葉が椅子に座っていた、「明日の朝から俺はパナマに直行する、お前はどうするんだ?」南条は疲れた顔を見せず、冷静な口調で話し始めた、「少し待ってください、今は考える余力もありませんよ」青葉は深く背中にもたれて頭を抑えながらそう応えた、南条はその青葉の様子を見て、静かに寝室へと入っていった、時刻は深夜を越えるなか、南条はベッドの上で眠りながら何かに魘されていた、額からは汗が溢れ落ち、シャツが汗で湿っている、やがて苦しんでいた悪夢から南条は突如として目が覚めた、「はぁ…はぁ…」南条は焦った様子ですぐにベットから上体を起こし、ベッド横に設置されていたスタンドライトの台から携帯を取り出し、時間を確認した、携帯に表示されている時刻は深夜の二時になっていた、またすぐに眠りにつくことも出来ず、南条は眠ることを止めてベッドから立ち上がった、深夜に寝室を出た南条は暗闇の部屋の中を歩きながら洗面台へと向かった、洗面台の前へと着きゆっくりと電気をつけた南条は、青ざめた自分の顔に驚きを隠せなかった、すぐに蛇口を捻り、顔を水で何度も洗うと落ち着きを取り戻したかのように、心が軽くなった、「落ち着け、どうしてこんなに怯えているんだ」南条は自分に言い聞かせるかのようにその場で呟いた、やはりあの時、目の前で加藤が死んだ光景をまの当たりにして、精神的に大きく南条の心は脅かされてしまったのだ、「落ち着くんだ、」南条は深く息を吐き鏡の前の自分を覗いた、その時、微かに一瞬だけ洗面台の鏡に亡くなっている妻の顔が見えたように見えた、しかし鏡をよくみるとやはり自分の顔が映っている、南条はまだ気が動転しているのだと感じ、再び水で顔を洗い出した、その数分後、寝室へと戻ると南条はハンガーに掛けていたスーツのポケットから妻と娘の顔が映った写真を取り出した、そしてその写真を陽が昇るまでじっと南条は見つめていた、「必ず俺は生きて帰る、」南条は心にそう誓い続けた。
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