第3話「"スキルフル"なラップで、"突き進む"ぜっ」
「はーいっ、ただいまっ」
「二杯目のコーヒーは、キリマンジャロですっ」
「"キリマンジャロ"が"一番じゃろ"?」
「なんつってーっ」
「……あっ、あーっ! その反応……ダジャレかよ! って思ったでしょー?」
「ちっ、ちっ、ちっ、違いますぅ、"キリマン"と"一番"で踏んでますぅ」
「ダジャレじゃないですぅ」
「"理解力"の乏しい君に"刻み込む"、"決まり文句"」
「ライムは、"オシャレな言葉遊び"、私は"お茶目な大人女子"」
「いぇあっ」
「……ふっ、決めちまったぜっ」
「……あっ、てかさ、てかさっ」
「そーれ」
「うん、それ」
「コーヒー」
「私がせっかくおかわり持って来てあげたのにさぁ、飲まないのー?」
「早く飲まないと冷めちゃうよ?」
「ほらほらー、早く飲んで」
「……あ、熱いから気を付けてね」
「…………」
「……どお?」
「美味しい?」
「美味しい? でしょー?」
「ふふふっ、私のコーヒーを"淹れる技術"も上がっているのだよ」
「それと同時に上がって行く、私の"魅せるリズム"、ラップも人生も挑戦の連続、"逃げる理由"はないのさ、"YESリスク上等"、これからも進んで行く、"シルクロード"」
「いぇあっ」
「……ふっ、またまた決めっちまったぜ」
「私はコーヒーもジョークも音楽もブラックだぜ」
「……嘘です、コーヒーはミルクをちょっと入れます」
「あと、普通にアニソンとか、K-POPとか聴きます」
「てへへー、カッコ付けちゃったっ」
「さーてとっ」
「今度はー、左側に座ってお話しちゃおうかなー」
「はーい、ちょっと前通りますよー」
「……あっ、足蹴っちゃった、ごめん、ごめんっ」
「ね、ちょっと狭いよねぇ」
「……よーいしょっと」
「それじゃあ、どうしようかっ?」
「あ、なんかお題をくれたら、それで韻を踏んだりするよ?」
「そっ、何でもいいよー?」
「なんなら、『"何でもいいよ"』で踏む"案でもいいよ"?」
「そう、さっきからちょいちょいやってるけど、単語だけじゃなくて、文章でも踏めるよー」
「ふふふっ、"期待の新人"だからねっ」
「でもまだまだ私は"成長の途中"、と"現状報告"、前進あるのみ、伸ばすぜ"言語能力"、成長スピードは、"超音速"!」
「いぇあっ」
「三度、決めちまったぜっ」
「あー、でもねぇ、フロウは苦手なんだよねぇ」
「……あっ、フロウってのはね、音に乗ることなの」
「ほら、ラップってさ、ビートに合わせてやるでしょ?」
「ぶんぶんちゃ、ぶんぶんちゃ、みたいな?」
「そうそう、で、フロウってのは、音に乗ってラップすることを言うの」
「ビートに乗るとも言うねっ」
「上手にフロウ出来るとさ、カッコいいし、聞き心地もいいんだよねー」
「でもさー、私はさー、韻は得意なんだけどさ、フロウはまだまだで、ダメなんだよねぇ」
「中にはね、韻はあんまり踏まないんだけど、フロウが凄くて有名なラッパーとかもいるんだよっ」
「中には何を言ってるのか聞き取れないけど、カッコいいラップする人とかもいるよっ」
「言葉は聞き取れないし、文法もしっちゃかめっちゃかで、日本語としておかしいのに、カッコいい、みたいな?」
「そ、だから何言ってるか分かんないのに、カッコいいの」
「何て言うのかな……」
「言葉をさ、楽器の一つみたいに使ってる……感じ?」
「あ、ヒューマンビートボックスが近いかも!」
「ぷーつく、ぱーつく、つくつくぱーつく、みたいな!」
「……え、出来てないじゃんって……いやいや、私は"ラップ専門"、ボイパの才能は"かくれんぼ"、やりたいけども、"悪戦苦闘"、舌が短いのが"弱点苦悩"!」
「ほら、え––––––––っ、みひはいれひょ?」
「みひはいはらへ、ふちほふはっへ、ほとほはふほは、ふふはしいほ」
「って、これじゃあ、何言ってるか分からないよー!」
「と、とにかくっ」
「私は舌が短いので、ボイパが上手く出来ませんっ」
「そりゃあ、関係ないって言う人もいるけど––––絶対関係あるよ!」
「だって、出来ないもん!」
「えー? 舌が短いのを出来ない理由にしてないかってー?」
「いいえー、してませんー、舌が短いから出来ないんですぅ」
「とっ、とにかく出来ないんです」
「あれ? 何を言おうとしてたんだっけ……」
「……あっ、そうそうっ、何言ってるか分かんないけどね、言葉をね、楽器みたい使ってやる感じなの」
「うぅ、なんか上手く説明出来てる自信ない……」
「あっ! 英語の歌詞が分かりやすいかも!」
「ほら、海外の曲とかさ、言葉が分からなくても楽しめるでしょ?」
「英語の歌詞とかでも、普通に乗れたりするでしょ?」
「そんな感じっ」
「ふぅ、上手に説明出来たね、これはっ」
「でもさ、でもさっ」
「そういうのってさ、言語を超えた繋がり––––みたいで素敵だよねー」
「言葉が分からなくてもさ、音楽で通じ合って、一緒に楽しめるんだよ?」
「いーじゃんー、素敵じゃんー」
「なんかさ、そーゆー、誰でもというかさー」
「どんな国の人でも楽しめるものってよくないっ?」
「……えー? 例えばー?」
「んー、あっ、動物の動画とか!」
「私はね、面白系の動画が好きです!」
「猫さんがジャンプをしようとしたけど、"勢い"と飛距離"が足りなくて、落ちちゃったりー」
「わんちゃんが、鏡に映る自分に向かって、ワンッ、ワンッて吠えてるやつとか」
「あとは、おしゃべりするインコとか––––あっ!」
「あー! ね、ねねねっ、ねっ、ラップするインコってどう?」
「絶対面白い思わない!?」
「"インコラップ"で、まずは"リードジャブ"、このライムならば"一晩中"、"ヒートアップ"!」
「"
「"ピーチクパーチク"、"シンキングターイム"も無しで"言い切るサービス"しちまったぜっ」
「あ、でもさ、でもさっ」
「インコにさ、沢山言葉教えたらさ、インコとラップバトルとか出来たりして!」
「ねっ、出来たら楽しそうだよねっ」
「そう、私は"お一人ラッパー"、これまで一人で"のびのびやっかー"で、来たけども」
「これからは、インコとラッパーでコンビを組むのも悪くないかもねっ」
「ほら、インコって名前に『韻』を含んでるし、なんか運命感じない?」
「韻を"内包"した鳥と考えたら、"才能"あるし、"最強"だと思わない?」
「こう……、肩にインコを乗せてさ、交互にラップするのとか……どう?」
「……え、何その顔……いやいや、絶対ウケるって!」
「可愛い私が、可愛いインコを肩に乗せて、"スキルフル"なラップで、"突き進む"んだよ?」
「絶対にウケるね、間違いないよ!」
「いやいや、コイツなにバカなこと言ってんだよ、ありえねーよ、みたいな顔してますけどもっ」
「私は"精神異常"じゃない、"前人未到"のインコラッパーで"人気もん"! そして建てる、"金字塔"! そのためにまずは、"エンジン始動"!」
「ふっ……」
「ふふふっ、どお? 何か言い返す? ほらほらっ、ラップで言い返せないんだったら、私の勝ちですよ?」
「……はいっ、君のまけー!」
「次回の来店時は、肩にインコを乗せてお待ちしております」
「私がいらっしゃいませーって、言ったらね
、インコがさ」
「イラッシャイ、イラッシャイッ」
「って、言うの!」
「どお?」
「可愛くない!?」
「……ねぇ、なんで『ここで自分が止めないとヤバい……』みたいな顔してるのー?」
「えー、そんなにおかしいかなぁ……」
「……んー、ま、まぁ、冷静に考えてみると、ずっと肩に乗せてるのは難しそうかも……」
「アレ、もしかして、思ってたより、難易度高い……?」
「うー、いやぁ、あー、そのぉ……」
「この話は一旦持ち帰らせてもらいます」
「いやぁ? 自分ではいいとは思ってますけど、ブラッシングが足りない? みたいな?」
「…………」
「……え?」
「それを言うなら、ブランディング?」
「…………」
「…………」
「……そ、そーとも言う!」
「……え、言い間違いでしょ? って?」
「……うっ」
「うぅっ」
「そっ、そーですよ! 言い間違いですけど何か?」
「で、でもっ、そーやって、"揚げ足"取った、"ダメ出し"は、"ダメだし"!」
「あ、今のはダジャレです」
「ふふっ、でも"揚げ足"と"ダメ出し"で、踏んでますよ」
「"揚げ足取り"をされても、"なけなしの韻"で"ささやかな抵抗"ですっ」
「まったくもー、まったくもーですっ」
「こうなっては、仕方ありませんね……インコの件は一旦諦めます」
「ですが、完全に諦めてないのをお忘れなくっ」
「でも、ペットとか、動物っていいよねー」
「あっ、パンダの尻尾って何色か知ってますか?」
「……ふふっ、黒だと思いました?」
「実は白なんですよっ」
「ねっ、絶対に黒だーって思うのに、白なんですっ」
「ぬいぐるみとか、パンダモチーフのキャラクターなんかは、黒い尻尾だったりもするんですけど、本物は白なんですよっ」
「目の周りと、耳と、腕と脚が黒いんだから、尻尾も黒でしょ! って思うよねっ」
「しかもさっ」
「パンダって、漢字でどう書くかしってるー?」
「あのね、『
「ねー、"くまねこ"でパンダって読ませてるのは"無茶でしょ"」
「"嘘でしょ"〜って感じだよね」
「なんか、漢字ってさ、そーゆー感じなの多いよねー」
「"難読漢字"、覚える"満足暗記"、脳みその容量デカ過ぎ、"マンモス団地"!」
「……むっ、なんか今のライムちょっとイマイチじゃなかった?」
「……んー、なんかさー、文法って言うかさ、日本語的になんか、ちょっと……みたいな?」
「いやぁ、今までも多少おかしいとこは合ったかもだけど、今のはちょっと無理矢理感強かったかも……」
「あ、そうだ! いい事思い付いた!」
「ここからは、もう単語だけで踏みます!」
「ほら、さっきさ、"韻踏みタイマー"の時にやったみたいな感じでさ、"韻踏みたいなー"って」
「そっ、会話とか雑談の中で韻踏むんじゃなくて、ひたすら単語だけで踏んでいくの」
「どお? 面白そうでしょっ」
「でしょー?」
「ふふっ、じゃあ、行くねっ」
「"韻踏みたい"、"キングみたい"」
「"緊急事態"、"疾風迅雷"、"実習心配"」
「"自由自在"、"自分次第"」
「"二十一歳"、"気分次第"」
「"自由時間"、"金融機関"」
「"親友知らん"、"事務次官"」
「"医務いかん"、"
「"純資産"、"終始一貫"、"きゅうり持参"、"急に帰還"」
「"急激化"、"スルメイカ"、"ニューメディア"、"フレデリカ"」
「"グレネイダ"、"スペーシア"、"有名人だ"、"幽霊神社"––––」
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