ようこそ、韻踏み喫茶へ! ラッパー少女があなたの耳元で韻を踏みまくります!

赤眼鏡の小説家先生

第1話「"お客さん"が、"もー沢山"って言っちゃうくらい韻踏んじゃうから!」

「はーい、"韻踏み喫茶"、"ミンスキ六花"へようこそ!」


「あ、その顔、初めましての人でしょ?」


「ふふふっ、この喫茶店ではね、なんと軽食と、美味しいコーヒーと、軽快なラップを楽しめちゃいますっ」


「沢山、韻踏んじゃいますよっ」


「分かる? 韻! ライムって行ったりもするんだけどね、母音を合わせるの、あいうえおで!」


「……あ、その顔、もしかして……分かってない?」


「んー、例えば、あっ、アイスだったらさっ、母音が『あいう』になるから、同じ母音の言葉を探してねっ、"座椅子"、"マイク"、"タイム"、"財布"、"ライム"、みたいな感じに踏んで行くの」


「ねっ? 何だか聞き心地が良くない?」


「……え、いまいち分からない?」


「じゃ、じゃあ、私が今から超絶ライムをかまして、あなたを分からせちゃいます!」


「……って、何その微妙な顔ー! その反応は私にとっちゃ"不名誉"! 意味"不明よ"っ、私だって韻を"踏めんよ"っ!」


「……ふっ」


「ふふふ、どーよ、この韻踏みテクニック!」


「分かったしょー! この私の魅力が!」


「どお? 椅子に座ってまったりとしながら、私が耳元で韻を踏んであげる」


「この"韻踏み喫茶""ミンスキ六花"では、軽食と、ド"リンク"と、ライ"ミング"を提供しちゃいます!」


「韻ってね、さっきも言ったけどさ、"聴き心地"がいいの。"耳元で"、"いいこと"囁いて、"君のこ"と、"イチコロ"にしてあげる」


「どお?」


「ほら、私って自分で言うのもアレだけどぉ、可愛いしぃ、おっぱいも大きいしぃ、いい匂いもするしぃ、そんな私が隣に座って、耳元で韻を踏むんだよ?」


「どお? 気持ちよくならない?」


「あ、もしかして……お金の心配してる?」


「それなら、大丈夫、大丈夫! 私、ほら、新人で実は今日が初出勤なの」


「"研修中"だから、ちょっと安いの。だから、気にせずに"全集中"で聞けるよ?」


「しかもぉ」


「君が初めての"お客さん"」


「"もー沢山"って言っちゃうくらい、踏んじゃうよっ」


「……はーいっ、ありがとうございまーす! 一名様ごあんなーい!」


「さあ、どうぞどうぞっ」


「お席まで、ご案内しまーすっ」


「こっち、こっちー」


「この廊下を進みまーすっ」


「……ふふっ、廊下を挟んで左右に扉があってさ、なんか漫画喫茶みたいだよねっ」


「元々は、漫画喫茶だった所を立て替えたらしいよー」


「そっ、だから席は個室なの」


「韻をちゃーんと聞き取れるように、個室なの」


「あ、怪しいお店じゃないから! "勘違い"しないよーに! ここでは"段違い"な"パンチライン"しか出ませんから!」


「……って、パンチラじゃありません! パンチラインです! このスケベ!」


「もー"卑猥な言葉"だけ拾って勘違いする人は、"イヤイヤ愚か"で、"嫌いな大人!"」


「ふんっ、エッチな人はディスっちゃいますからねっ」


「反省してくださいっ」


「……反省できましたか?」


「出来てない人は、油性マジックのキャップを外してから、投げますよ?」


「真っ黒になっちゃえ、ブラックマジック! 君にダイレクトアタックですっ」


「……ふふっ」


「……なーんて、うそうそっ」


「でも、ちょっと嫌でしょ?」


「掴んでも手が黒くなるし、掴まないと服に付いちゃうし」


「どーやっても出るね、"二次被害"、どーするかは、"君次第"!」


「"気にしない"? そりゃ、"聞きちがい"? "右左みぎひだり"から投げて、"一進一退"、そのうちするね、"キャッチ失敗"!」


「いぇあっ」


「……って、いぇあっ、じゃない、ラップしてたら、部屋通り過ぎちゃったよ」


「はい、戻って、戻ってっ」


「……あっ、ここ、ここっ、ここね。足元段差あるから、気をつけてね」


「……あ、待って」


「あ、ううん、段差じゃなくてさ」


「"足元段差"と"橋本環奈"で韻踏めるよ!」


「ヤバくない!?」


「ヤバいよねっ!」


「えー、急にテンション高くないかってー?」


「そりゃあ、高くもなるよー! 新しい韻みっけちゃったらさー!」


「あ、これ、ラッパーあるあるです」


「ラッパーは、『うわ、この言葉で韻踏めるじゃん!』ってなると、テンションが上がっちゃう単純な生き物なんですっ」


「ふふ、じゃあ、新しい韻をマイ"広辞苑"に登録して、"ごー機嫌"な私が、お部屋にご案内しますね」


「扉を開けてってと……はーい、どーぞ」


「ふふっ、結構広くない? ちょっといいカラオケの個室って感じしない? ソファーとかね、めっちゃフカフカだよ、ほらっ」


「ほーら君も座って、座ってっ、この"オレンジのソファー"に! "オメェんちのソファー"よりも座り心地がいいからよぉ」


「おらおらっ、おらおらぁ! 座れおらぁー!」


「……え、何キャラって……。ほら、ラップって荒っぽい雰囲気ない? だから、ちょっとそんな感じで行ってみようかなって」


「……別にいい? えー、そう? じゃあ、普通にやるけど」


「……あ、早く座ってねっ」


「ほら、時間がもったいないよっ」


「はい、着席っ」


「飲み物は何にしますか? ワンドリンク無料です」


「オススメ? オススメかー。オススメは、うーん、無難にコーヒーかな!」


「結構豆にこだわっててね、美味しいよっ」


「……はーい、コーヒーですね。少々お待ちください」


「じゃあ、ちょっと入れてくるから待っててねっ」

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