テオプア 外交編

第55話

「コウキ君、そこはこのコード使った方がいいよ」

「そうなのか?だがそうなるとここが動かなくなるんじゃないか?」

「そこはこれを入れれば効率が上がるでしょ」

「なるほどな・・・助かるぞシオ」


亜人や精霊達がダンジョンで暮らし始めて数日。俺がやる事は変わらずダンジョンの運営と新コンテンツの作成・・・だが環境は変わった。


精霊帝であるシオがダンジョン運営に協力してくれたおかげでこれまで以上に魔力の供給が効率的になった。しかもプログラムコードも分かるらしく作成したコードなどを見て理解してくれる。


「それじゃここに精霊達が通過できる空洞を作っておくか」

「そうね安全性も考えてそれが良いかも」


そんなこんなで魔力吸収だけでなく仕事のペースも効率的になった。


そして俺とシオが仕事をしているのをエイミィはジーと睨むように見ていた。


「エイミィ・・・なんか不機嫌そうだが何かあったのか?」

「べっつに~ただ随分とシオと仲がいいわね・・・というかシオはエドワードの事はいいの?」

「あら?あたしはここの住民として働いているだけよ。それにコウキ君の役に立てばエド様も喜ぶし・・・さっきだって・・・えへへ」


エイミィの不機嫌そうな問いにシオは淡々と答えるが数時間前の事を想いだしたのかすぐにとろけた顔になる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


宴の日から翌日、俺はエイミィとフロアボス達を会議室に集め、俺はエド達との体験を他のフロアボス達に伝えた。


「・・・というわけで今回の件で邪神が関わっていたんだ」

「なるほど邪神ですか・・・ですがそれはエドワードが葬ったのですよね?」

「ああ・・・だが奴は自分の事を残滓と言っていた・・・そしてその残滓はまだ多く存在しているらしい」


ミーシャの質問にエドが答えるが少し歯切れが悪い。


「エド・・・何か思うところがあるのか?」

「・・・奴は神核を探していると言っていました。それが何なのかは分かりませんがそれが邪神の手に渡った時大きな災いを持ち込むと言っていました」

「そう言えばエドワード達は知らなかったわね」


エイミィは思い出すようにつぶやくとフロアボス達に神核や邪神について説明した。

そしてその邪神達は女神セフィロトの力によって封印されているのだと。


「そんな事があったのですか・・・それでその封印はどうなったのですか?」

「封印は今も健在で邪神達を封じています・・・このダンジョンの中で」


はぁ?!ちょっと待てそんな情報俺聞いたことないんだけど!

そう言えばセフィロトが封印したって話は聞いたがどこに封じたかまでは知らなかった。


「このダンジョンというよりも封印をこのダンジョンの一部として組み込んでいます・・・このダンジョンは私を守る要塞であるのと同時に邪神を封じ込めた建物でもあるのです」


ゲームのつもりで作っていたダンジョンがまさかそんなものまで組み込まれていたとは・・・


「では邪神達はいずれこのダンジョンを狙ってくるのでは?」

「邪神がダンジョンの秘密について知っているかは分からいませんが・・・いずれは気付くと思います」


エイミィが深刻な表情でフロアボス達に話すが彼らは真剣な顔をしつつも気を張っている様子は無かった。


「ならば儂らがすることは変わらずこのダンジョンを守護する事ですな」

「そうですね・・・実際残滓は勝てない敵というわけではなさそうですし」

「サクから戦闘データは貰っとるからワイはその分析をするで」

「グンナル達も『このままではいられない』って言ってたし修行の手伝いするのもアリね」


邪神という脅威を聞かされてもなお全員はやる気を出しており、その光景にエイミィはポカンとした顔をしていた。そして彼女の隣でメリアスはクスクスと笑っている。


「ふふふ、皆さんやる気ですね」

「本当に頼もしいかぎりだわ・・・」


自分を守ってくれる存在・・・その存在がいるだけこれほどに安心できることにエイミィは彼らに感謝した。


「へぇ、邪神と戦おうとか随分と頼もしいわね」


そんな風に盛り上がっていると突如エイミィ達の目の前に精霊帝のシオが現れた。


「シオ!あなた何故ここに?というかどうやって?」

「精霊帝の力を甘く見ない事ね・・・あたしが本気出せばエイミィの居場所くらいすぐに分かるんだから・・・ノバをダンジョンに送ったのもあたしだし」


そう言えばノバは当たり前のようにダンジョンの中に現れたがシオが手を貸していたのか。


「あなた勝手に盗み聞ぎしていたの」

「いいじゃない・・・結構重要な話だったし、あたしもこの住民となったからには協力は惜しまないわ」

「それでシオ・・・協力というが何をしてくれるのだ?」


俺が質問するとシオは待ってましたと言いたげな顔で俺を見た。


「精霊を使えばいいのよ、邪神の魔力ってかなり特殊でね邪神の影響下になったヒトの感知とかも可能よ」


邪神だけでなく邪神に操られている人も特定できるのは便利だな。


「つまりダンジョンに精霊を解き放って探ればいいって訳か?」

「そういう事。ついでにダンジョン内の魔力の流れをコントロールできれば魔力吸収の効率も上がって一石二鳥」


シオの提案はかなり有効的な気がする。実際肉眼では判別できないし、モニター越しじゃ邪神かどうか分からない。


「その案は採用だな・・・だが邪神の魔力なんて分かるのか?」

「そこは抜かりなく・・・実はルヌプの精霊使いが操られていてね、そいつがジョーに魔力を流し込んだのよ・・・まあそこはエド様のおかげで助かったんだけどね」


正確にはエドが協力して、が魔力を流し込んでジョーに入っていた精霊使いの魔力を吐き出させた・・・っとエドが付け加える。


「っで、コレがその魔力」


シオはそう言って取り出したのは水の膜で覆われた黒い渦っぽい何か。


「これには邪神の魔力が混ざっていたので、精霊達にはこの魔力の波長や質を覚えてもらったわ・・・外でも邪神の残滓がいるわけだしもし感じたらすぐ逃げるように伝えておいたの」


まるで探知犬だな・・・だが対応は間違えていない。


「それじゃ俺はダンジョンの改装をしないとな・・・いずれ皆も邪神と戦う時が来るかもしれない。気を引き締めてくれ」


俺がそう言って締めくくり会議は解散となった。


「シオ・・・その魔力我も興味があるから後で我の所に来てくれないか?」

「まぁ、後でじゃなくて今すぐご一緒します!」


相変わらずエドに対してのアプローチが凄いな・・・シオは自然な流れでエドの腕にしがみつくと彼と一緒に地下33階層へ行ってしまった。


「随分とエドワードの事を気に入っているのね・・・あんな顔今まで見たことも無いわ」

「ノバさん達も結構困惑しているみたいだよ・・・なのに指示ややる事は的確だから凄い」


そんな感想を述べながら俺達も作業部屋へと向かったのだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さて、ついたか」

「ここがエド様が守護される階層なのですね・・・ッハ!いうなればここはエド様の部屋?っきゃ!あたしまだこころの準備が!・・・ぐべ!」


テンション爆上がり中のシオにエドワードは冷たい視線をしつつ彼女の頭にチョップを食らわす。


「ま、魔力を帯びた手で叩かないでください・・・エド様の力は常識外れなんですから」

「お前がくだらないことを妄想しているからだ・・・とりあえずまずは本題からだ。邪神の魔力を見せてくれ」


シオはエドワードの言う通りに邪神の魔力を見せるとじっくりと観察し、そのエドワードをシオが眺めている。


「・・・やりにくいんだが」

「気にしないでください・・・それで何か分かりました?」

「この状態では分からないが、こうすれば分かりやすくなるだろう」


そう言ってエドワードが手を振るうとシオが持っていた魔力の渦が赤と黒の二色に分離すると綺麗な球体へと変わり、エドワードの手の平に落ちる。


「黒い方が邪神ですか?随分と大きいですが」


右手に置かれた黒い球体はテニスボールくらいの大きさとなるが、赤い球体はビー玉くらいの大きさだった。


「いや、黒はルヌプ兵のだ、ザズムフはルヌプ兵の欲を刺激して操っていたのだろう」


禍々しい色をした黒の球体はルヌプ兵の歪んだ心を表すかのように酷く濁った色をしている。その一方で赤い球体は質素ながらも美しさを感じさせていた。


「奴は最後、我に『抗えってみせよ』と言っていた・・・その言葉に敵意や悪意は無かった」

「そうなのですか?ですがジョーの報告では禍々しい魔力を出していたと」

「おそらく残滓がヒトに憑りつくことで感情が不安定になるのだろう・・・人の欲や負の感情に刺激されて」


実際エドワードは戦っている時のザズムフと最後のザズムフが同一人物と感じられていなかった。この綺麗な魔力がザズムフを表現しているのなら消える間際の彼が本心なのだろうか・・・エドワードはそんな風に考えていた。


「しかしこちらの魔力が邪神のモノだとしたら精霊達にまた教え込まないといけないわね・・・少し先走りすぎたかも」

「いや、邪神とヒトの魔力が混ざった状態なら覚えさせたもので十分だ」


そう言ってエドワードは二つの魔力を一つに戻しシオに返した。


「ではあたしはコウキ君の所に行ってダンジョンの改造の手伝いをしてくるね」

「ああ、色々と助かった・・・それとこれを渡しておく」


エドワードは一つのペンダントをシオに渡すとフィンガースナップをして彼女を纏っていた結界を消した。


「え?魔力が溢れてこない?」

「結界の中では色々と不便だろう・・・これは我が作った魔力の放出を抑え込む効果がある。かなり強力なのを込めているから無茶をしなければ壊れる事はないだろう」


エドワードが少し照れくさそうな顔をするとシオは今までに感じたこともない胸の高鳴りを覚えた。


「え?エド様があたしにプレゼント?」

「シオのおかげで邪神対策が出来る・・・ありがとう」


エドワードの感謝の言葉がとどめを刺したのか、シオは幸せな気持ちを胸にエドワードに抱き着いたのだった。


「きゃあああ!エド様!絶対あたしと契約してもらうから!」


シオの幸せの叫びはフロア中に響いたのであった。

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