ダンジョンモンスター異変編

第20話

「んー、最近ダンジョンの進みが悪い気がする」


いつものようにダンジョンの進捗状況を確認していたが、ここ最近挑戦者たちのダンジョンに上がてくるペースが落ちている気がした。いや、入ってくる人口は着々と伸びているのだが、最近5階層から上に行く挑戦者が明らかに少ないのだ。


「5階層ってそんな難しいギミックは置いていなかったはずなのに」


俺は5階層のマップを確認し原因を確認するとその答えがすぐに見つかった。


「なんだこれは?!」


映像に映し出されたのは武装したゴブリン集団が徘徊している姿だった。ゴブリン自体は珍しくはない。ただ彼らが身に着けている装備はどれも人間たちが身に着けているようなものばかりで、どれも統一感がなかった。


「まさか、倒した冒険者たちが残していった装備を身に着けているのか?」


ゴブリンたちが集団行動しているのは普通なのだが確かあいつらの装備はナイフや弓だったはず。


そしてちょうど50人規模の部隊がやってくるのを確認すると先頭のゴブリンが何か合図をしてすぐさま撤退をしだした。


「あれ?今まではどんなに多くても突撃していたのに逃げるなんて珍しい」


ゴブリンたちが逃げ出すのを見た部隊はすぐさまゴブリンたちを追いかける。なかなか訓練を積まれているのか部隊は乱れることなく固まって行動していた。


「あ、そっちは!」


ゴブリンたちが逃げるルート先を見るとトラップマークが表示されていた。だが部隊はそれに気付かずにトラップゾーンには突入して見事に串刺しトラップにハマり半数以上が脱落した。


そして人数が減った所を先ほどのゴブリンたちがさらに仲間を引き連れて残りを殲滅。おそらく最初の10体のゴブリンたちは囮で本命はこっちなのだろう。


基本的に挑戦者たちが死亡した場合はそのまま入口にまで転送されるが手元から離れた物はダンジョンに残る。ゴブリンたちはその仕様を利用して戦闘中に武器を弾き飛ばしたり防具が外れるように攻撃するなど工夫して戦っていた。


「ゴブリンがダンジョンのトラップを活用して倒しちまったよ。というかいつの間にこんな知恵を身に着けたんだ?」


そしてそんな動きを見せるのはゴブリンだけではなかった。オーガやジャイアントバット、コボルトなんかも明らかに動きが洗練されており、まるで誰かが指揮を執っているように見えた。


「こんな芸当、ゴブリンたちで出来るわけないよな・・・ん?」


ゴブリンたちが挑戦者たちの装備を回収するとすぐにどこかへ向かった。そして、コボルトやオーガ達が向かう先も同じようだ。


「やはり、誰かが指揮を執っているのか?」


ゴブリンたちが向かう先のエリアを表示するとそこには特殊なアイコンが表示されている。


「これって確かレアモンスターのアイコンだよな」


ダンジョンには各フロアに複数のレアモンスターを配置している。大体が通常モンスターの上位種だったりするのだが、中には俺がデザインしたユニークモンスターなんかもいたりする。


映像を表示するとそこには3体の特殊オーガに武具やダンジョンで取れる宝を献上するダンジョンモンスター達が映し出された。


「おいおい、なんか凄いことが起きてるぞ。オーガ侍にレッドオーガとブルーオーガ・・・こいつら確か8階層のレアモンスターだろ?なんで5階層にいるんだ?」


レッドオーガとブルーオーガはオーガ種の上位種だ。エイミィ曰く過去に一体のブルーオーガが一つの集落を壊滅させたとか。レッドオーガも同等の能力である。


そしてオーガ侍。これは俺がデザインしたユニークモンスターで、流浪人のような和服に刀を装備した個体だ。グラムが担当するフロアの中では上位に入るステータスにしてある。


そんなオーガ侍がまるでこの5階層の主のように他のダンジョンモンスター達を従えている光景に俺は一瞬脳内がフリーズした。


「もしかしてあいつら移動用の階段を使って5階層まで降りたのか?というかダンジョンモンスターが階層を移動するとか予想外なんだけど・・・」


ダンジョンに挑む挑戦者たちに目が行き過ぎたせいでダンジョンモンスター達の行動までは把握できていなかったのが失敗だった。


「これってかなりマズイよな・・・「何がマズイのですか?」ってアルラにエイミィ?」


振り向くと緑髪の少女、元女神セフィロトだったアルラが興味深そうに俺のモニターを覗いており、その後ろでエイミィが立っていた。


「いつの間に俺の部屋に?」

「少しダンジョンのモンスターについてエイミィと一緒にお話をしようと思ったのですが、思った通りのことが起きていますね」


どうやらアルラはこの状況を把握しているみたいだ。


「アルラ、いったいダンジョンで何が起きているんだ?」

「簡単に言えば一部のダンジョンモンスター達に自我が芽生えたって所ですね」

「自我って、ダンジョンモンスターたちに魂が宿ったってこと?そんな事が可能なのか?」


ここ数カ月ダンジョンモンスター達の戦闘を見てきたけど全てが挑戦者たちを鉢合わせればすぐ襲うパターンだった。まるで敵が現れたら即戦闘とプログラムされているかのように。だが今回ゴブリンたちは罠を利用したり『戦術』を用いて挑戦者たちを倒していた。


「魔物にも自我を持つのは珍しくありません。ですがそれは動物が魔物化する、あるいはその魔物から生まれるかのパターンのみです。本来であればダンジョンのような魔力によって生み出された魔物は自我が無くただ本能のままに行動するのが理でした。ですがこの五百年私は神核の状態で眠りに入っていました。そのせいで管理していた魂は自動的に転生の采配が行われました」


たしかそのせいでここ数百年は前世の記憶を持った転生者や強力なスキルを引き継いだまま生まれる者とかが現れる事態が起きているのだった。


「つまり自動的に采配した魂がダンジョンモンスターに宿ってしまったという事か?」

「はい、あと私の神核をこのダンジョンに持ち込んだことにも一因かと思います。強い魂はそれに見合った器に転生させていたみたいなので」


なんてこったい。これは想像以上にダンジョンがヤバいことになっているんじゃないか?!

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