ビビり

個体差はありますが、オカメインコは基本的には温和な気性です。

メスは特に穏やかだといわれます。


怒って噛んでも、殆ど甘噛みです。

固いシードの殻を突き通す尖った嘴は、飼い主を齧る時はその威力を落とします。

皮膚に跡が付くようなことは、滅多にありません。

……なんてかわいい。


そして、ちょっと…いや、すごく臆病です。

何かの拍子に驚いてパニックになることも。


“オカメパニック”とまで呼ばれるその現象は、初めて見る方は相当驚くのではないでしょうか。

よく観察していれば分かることもありますが、大体はこちらには分からない理由で、突然パニックになって飛び回ります。

放鳥中だと、部屋中を飛び回ってガラス窓にぶつかる、なんて子も。

環境に慣れていれば、激突!なんてことはなくなりますが、飼い始めは充分な注意が必要です。




うちのオカメさんも、ご多分に漏れず、とてもおっとりした鳥さんです。

そしてもちろん臆病。

めちゃくちゃビビり。

オカメパニックは、日常茶飯事です。


机の上でごきげんにオヤツを食べている時、小蝿が側を横切ろうものなら、ビョンと跳び上がります。

大好きな爪楊枝を咥えて遊んでいる時、へっくしゅんと側でクシャミをしようものなら、即座に爪楊枝を落としてバビュンと飛び去ります。

そして、身体中の羽根をぺったんこにして、ほそーい身体でビクビクしながら戻って来るのです。

いつものほんわかフォルムはどこへ行った? と二度見したいほどの別人別鳥です。



そんなうちのオカメさん。

必ずといっていい程、毎日同じタイミングでビビって飛び回る時があります。


それは、私が雪平鍋を持ち上げる時。

フライパンでも、圧力鍋でもいけません。

雪平鍋です。


夕食後、食器を洗って片付ける時、汁物に使った雪平鍋を布巾で拭きます。


バビューンッ!!


今日もオカメさんは、台所と居間を三周ほど飛び回って帰ってきます。

そして痩せ痩せの身体で、抗議の目を向けてきます。

『ちょっと!びっくりしたじゃないの!』

その目はそう言っています。


いやいや、毎日同じことしてるからね?

そろそろ慣れたら?

と思いつつ、面白くて毎夕雪平鍋を拭くおバカ飼い主なのです。

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